↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
絶対に叶わないと思っていたプロポーズをしてくれたのは中年冒険者さんでした  作者: 9bumi


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
2/23

第2話 夢は叶うようです

「まったく、元気なお嬢さんだ」


 目覚めて早々、防御幕プロテクションで距離を取ったエメリーヌに、男は微笑を浮かべながらロットと名乗った。


「それでロットさん。どうして私をこんなところに?」


 とりあえず食事にしようと、部屋に運ばれてきた久しぶりの上質な肉料理を口に運びながら、エメリーヌは尋ねる。


「あのまま君を放っておくわけにはいかないだろ?」


 意識が途絶えた後のことを聞くと、たちまちエメリーヌは頬を赤くした。

 どうやらあのまま、酒場で爆睡をかましてしまったらしい。


「す、すみません……私ったら」

「いや、俺としてもちょうど良いと思ったからな」


 おぼろげだが、似たようなニュアンスのことを言っていたような。


 気になるので、尋ねてみる。


「あの、それはどういう意味ですか?」

「それを話す前に、君に尋ねたいことがある」

「な、何でしょうか……?」


 身構えるエメリーヌに、ロットは小さく咳払いをしてから口を開く。


「酒場で『ディアールに連れて行って欲しい』と何度も言っていたが、あれはどういう意味だ?」

「わ、私、そんなに言ってましたか?」

「喉から手が出そうなほどに渇望していたな」


 自分の痴態について尋ねられ、さらに頬の温度が上がる。


 夢見がちなことであるし、会ってまだ少しの人に言えるような内容ではない。

 ただ、ここまでしてもらって答えないわけにもいかなかった。


「その……笑いませんか?」

「ああ。大体の内容は察しがついている」

「では、その……伝説の冒険者の話のですね」

「知っている。女性なら誰しも一度は夢を見るものだからな。聞きたいのは、どういう形で君がそれを叶えたいかだ」

「あっ、えっと……」


 エメリーヌは、包み隠さず自分の望みをすべて語った。


「なるほど。ディアールに連れて行ってくれた者から求婚され、そのままその者と結ばれたいと」

「は、はい……」

「ちなみにそれは、俺のような中年冒険者でも構わないか? ちなみに来年で四十になるのだが」

「は、はい……?」


 息をするようにされた問いに、思考が追い付かない。


「あ、あの……」

「やはり、俺のような者ではダメか?」

「いえ、そういうわけではなくて……」


 何とか言葉を絞り出すように、エメリーヌは答える。


「本当に、連れて行ってもらえるのですか?」


 エメリーヌに期待させるようなことを言ってきた輩は、今まで何人もいた。

 それは彼女の美しさのあまり引き出されてしまった虚言であり、彼女はそれに何度となく傷つけられてきた。

 そのため、そもそも連れて行ってくれる人がいるという現実自体が、受け入れられない。


「――なるほど、まずはそこからか」


 ロットは納得したようにうなずくと、白金でできた冒険者証をエメリーヌの前に出す。


「こ、これは……っ」

「見ての通りだ」


 冒険者には、その功績に応じて等級が設けられており、白金は最上位の等級だった。

 そしてその割合は、世界の冒険者全体の一割にも遠く及ばない。


「Sランクの迷宮の探索経験も当然ある。ディアールはAランクだからな。君を一人護衛しながらでも、目的の場所にはたどり着けるだろう」

「――」


 約十年間、色々な街を渡り歩いてくる中で、幾度も無理だと言われてきたことを、ロットは淡々と口にした。


 エメリーヌは、完全に言葉を失った。


 確かに、初対面のときの身なりからして、上位の冒険者だとは思っていた。それでも、これほどの傑物とは思いもしなかった。


「――っ、おい、どうした……っ」

「い、いえ。これは……」


 自然と、エメリーヌの青い瞳から涙が零れていた。


「その……本当に、信じてもいいんですよね?」

「さっきからそう言っているつもりだが……付け加えるなら、今なお君が奇跡を使えているというのがその証拠だろう」

「――確かに、そうですね」


 この人なら、本当に信用できる。


 心の中にあった不安が、ようやく掻き消えた。


「それで、私の問いへの答えはどうだ?」


 高難易度の迷宮攻略ではなく、年齢に差があることに問題があると感じているところが、非常におかしく思える。


 目元に涙を浮かべたまま、クスっとエメリーヌは笑う。


「笑っていないで、答えてくれないか?」

「もちろん、大丈夫です!」


 歳の差が開いての結婚など、決して不思議な話ではない。


 それに、行き遅れているという自覚があるエメリーヌからすれば、相手の年齢で選り好みするなどあり得ない(無論、老齢とみなされる年齢なら考えざるをえないが)。


「というか、ロットさんの方こそ、私みたいな年増でいいんですか?」


 恐るおそる尋ねると、ロットはふっと軽く息を吐く。


「質問の答えにもなるが、俺としてもそろそろ伴侶を見つけなければと思っていたのだ」

「それで、ちょうど良いと?」

「君のような美人なら誰も文句は言うまい。それに、年増というなら俺はどうなる?」


 優しい笑みを浮かべるロットに、頬が熱くなる。歳をとっていても、無精ひげがあっても、元が良いので普通に心臓の鼓動が早くなる。


「それより、まだ君の名前を聞いていなかったな」


 疑問を遮るようにされたロットの指摘に、はっとしてエメリーヌは姿勢を正す。


「失礼しました。エメリーヌと申します。リーヌと呼んでももらえればと思います」

「そうか。ではリーヌ、早速ディアールへ向かうための準備を始めようか」

「はい! ロットさん!」


 落ち着いてながら、力強さと安心感のあるロットの言葉に、エメリーヌは突然舞い降りた幸せを、かみしめるように頷いた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。