表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
絶対に叶わないと思っていたプロポーズをしてくれたのは中年冒険者さんでした  作者: 9bumi


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
12/23

第12話 使者との接触

 ロットがイーナを連れて戻った翌日。


 無事にエメリーヌとロットはBランクの迷宮を第五層まで攻略し、ディアール挑戦まで残すは、ロットによるAランクの迷宮での鍛錬だけとなった。


「それじゃ、行ってくる」

「はい、行ってらっしゃいませ」

「行ってらっしゃ~い」

「……」


 部屋の玄関の前で、ロットは立ち止まり表情を歪める。


「……何、どうしたの?」

「どうして、イーナ――お前がいる?」


 これからAランクの迷宮へと赴こうという中、エメリーヌの隣にいるイーナへと、厳しい視線を向ける。


「どうしてって……」

「あの、ロットさん。これは私から頼んだことなんです」

「何……?」


 それからエメリーヌは、自分の実力をより高めるために、イーナに修行をつけてもらいたいと頼んだことを伝えられた。


「いつの間に……」

「すみません。ロットさんが席を外している間に……」

「おい、イーナ」

「心配しなくても、手を出したりなんかしないよ」

「本当か?」

「本当だって……そもそも、ロットの方こそリーヌを一人にしておいていいの?」


 前のように、元パーティメンバーが再度接触を取ろうとしてきても不思議ではない。

 そうなったとき、イーナが近くにいれば、エメリーヌの身は確実に守られる。


「安心して鍛錬したいでしょ?」

「――っ」


 エメリーヌに催眠魔法を使った前科について、完全に許しているといえば嘘になる。

 だが、今までの付き合いのの中で、イーナがロットへ嘘をついたことは一度もない。

 だからこそ、今のイーナの言葉を疑うことはできなかった。


「――わかった」

「ありがとうございます。ロットさん」

「ただし、くれぐれもリーヌに危険が及ぶことだけはするなよ」

「わかってるって」

「……」


 理解しているとわかっていながらも、顔に微妙な力を加えつつ、ロットは宿を後にした。


(まったく……)


 昨日の探索で、特段リーヌが焦りを覚えるような瞬間はなかったはず。

 それなのに、イーナにわざわざ指示を仰ぐというのはどういうことだろうか。


 適当な雰囲気を醸し出しているイーナだが、かつてロット共に戦ったパーティメンバーの一人であり、等級は金。

 等級自体は自分より下だが、実力自体に差は殆どないとロットは考えている。

 一冒険者として、イーナの教えを乞いたいと思うのは、不思議なことではない。


(それとも、俺の実力不足だろうか――)


 まだまだ、自分の実力だけではリーヌに安心感を与えることができていない。

 だから、ロットに迷惑をかけないよう、エメリーヌは自分の実力を引き上げたいと考えているのかもしれない。


(考えるのは止めだ)


 いずれにしても、ロット自身が最盛期の実力に近づく――否、それを越えさえすればいいだけの話である。


 街を出て、南へ進んだところに小さな森を挟んで岩山が見えた。ところどころに苔むしたように小さな木々が生え、傾斜は急で表面は荒い。

 その岩山の壁面に深さの浅い洞窟があり、その中にロットがこれから挑む迷宮のポータルは存在している。


 森へ足を踏み入れ十数分ほど歩いたところ、もうじき視界が開けるといったところで、ロットは足を止めた。


「誰だ――」


 自分より先に足を踏み入れていたのか、岩山と森の中間あたりで、ロットは誰かから視線を向けられるようになった。

 エメリーヌのために使うようになった長剣は、森の中での戦闘には不向きということもあり、周囲が開けるタイミングまで待っていた。

 

「流石ですね」


 ロットの声に反応するようにして、後ろの木々の一つから、一人の女性が姿を現した。

 忍を連想させる黒装束に身を包み、薄い黒のヴェールから見える顔立ちと声の張りから年齢はエメリーヌにより一回りは若いと思われる。

 そして、黒装束の上からでもわかる引き締まった身体は、間違いなく戦闘技能――それも対人に特化したものを身に着けていることを、ロットに直感させた。


 ロットはさらに一歩下がり、得物の柄に手を掛ける。


「お前は何者だ――?」

「私はエリー。ラルドア家の使いです」

「ラルドア家――」


 黒装束の女――エリーが語った家名に、ロットは警戒心を強める。


 ラルドア家はラビリア王国の貴族であり、侯爵の爵位を与えられた国内最有力といっても過言ではない力を保持している。


 そんな貴族の家の使いが、一冒険者に過ぎないロットに対して、何の用があるというのだろうか――否。


「用件は、リーヌのことか?」

「左様です」


 直感的にこれしかないだろうと口にした言葉を、エリーは短く肯定した。

 その瞬間、ロットは得物の柄にかけていた手をゆっくりと離した。


「信じていただけたようですね」

「それで、本題は?」

「ロット様が仰られたように、エメリーヌ・ラルドア様の件についてです」

「――」


 エリーの酷く落ち着いた声音は、これから自分に何か重たい覚悟を強いようとしているのではと、ロットに感じさせる。


(仕方ないか……)


 恐らくエリーの話を聞けば、もう後戻りはできない。


 それでも、エメリーヌを幸せにしようと決めた時点で、始めてから覚悟はできている。


「聞かせてもらおうか」


 ロットは重たい声色で、エリーへ話をするよう促した。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ