6.繋がれた鎖
「…………え?」
智己が莉愛の右手に手錠をかけた。
突然の出来事に莉愛の頭は付いていけなくて、何が起こったのかが理解できない。
呆然としている莉愛を智己は抱きかかえると、そのまま莉愛の部屋に向って歩きだす。
「ごめんんさい!ごめんなさい!次はちゃんと連絡を入れるから!!」
ようやく自分の身に何が起こっているのかを理解した莉愛が叫びながらそう言葉を綴る。
しかし、智己の耳には届いていないのか、莉愛の部屋に着き、莉愛をベッドの上に降ろすと、もう片方の手錠をベッドの柱の部分に固定する。その部分は上も下もベッドを支える柱で覆われていて、外すことは不可能な部分だった。
「………お兄ちゃんに心配をかけたらダメだろう?何かあったらどうするんだ?でも、もう心配ないからね……。お兄ちゃんがずっと傍にいるからね……」
智己が不気味な黒い笑みを称えながら、どこか優しいようにも聞こえる声で、莉愛の頭を撫でながらそう言葉を綴る。
「あ……あ……」
莉愛はあまりの恐怖に声が上手く紡げない。
いつもの優しい兄は何処に行ったのか……?
目の前にいるのは本当にあの優しい兄なのだろうか……?
それとも、自分は悪い夢を見ているのだろうか……?
自分に起こっている状況が受け入れられない莉愛はガクガクと震えながら、智己の変貌を見つめていた……。
***
「……ほのか、食事の時間だよ」
莉愛が部屋に監禁されて数日が経った。
莉愛が着せられている服もヒラヒラのお姫様のような服を着せられている。
そして、監禁されてすぐに智己は莉愛の事を「ほのか」と呼ぶようになった。
莉愛を通して智己は違う誰かを見ているようだった。
「ほのか」と言う人が誰なのかも分からない。
食事の時はこうして智己が部屋に食事を持って来て、智己の手から食事を摂る。
最初の内は莉愛はとにかく智己に許してもらえるように必死で謝った。
だが、智己はその言葉にこう答えた。
『何を言っているだい?外は危険がいっぱいなんだ。これはほのかを守るために必要な事なんだよ?』
智己の言葉の意味が莉愛には分からなかった。
智己は何を言っているのだろうか……?
そして、莉愛を誰と間違えているのだろうか……。
それと同時に莉愛の今の環境が謝って許される話では無いことが伺える……。
「ほら、あーんして」
智己がスープの中に入っているジャガイモをスプーンですくい、莉愛の口に運ぶ。
そして、莉愛は反発もせずにその行動を受け入れるように口を開く。
莉愛の心は蝕まれて正常な判断が出来なくなっていた。
助けを誰かに求めることも出来ずに……、
智己の言われるがまま……、
心が人形のように感情が無くなっていった……。
「……可愛いよ、ほのか……」
食事が終わり、智己が莉愛の髪を櫛で優しく梳く。
「やっぱり、ほのかは長い髪が似合うね……」
智己が莉愛の髪に愛おしそうにキスをしながら、優しい声でそう言葉を綴る。
「ずっと、ずっと、一緒だよ……。ほのか……僕のほのか……」
智己の優しく嬉しそうな声……。
莉愛を愛でる優しい手……。
でも、それは歪んだ『愛』の形……。
智己が莉愛の頭を優しく撫で続ける……。
閉じ込められた檻の中……。
歪んだ日々……。
壊された平常心……。
何が正しいのか……。
何が間違っているのか……。
莉愛の思考が奪われていく……。
***
「……お父さん!お母さん!どうだった?!」




