5.不穏な影
莉愛が智己が与えてくれたスマートフォンの時間を確認して家に急ぎ足で帰る。
夏休みという事もあり、仲良くなった友達とカラオケに行っていたらフリータイムにしてしまったので、帰りが遅くなってしまったのだった。
スマートフォンの時間を確認すると時間は夜の八時半を過ぎている。
莉愛がマンションに着いて、慌ててエレベーターに乗り込み、息を切らしながら部屋の玄関を開ける。
「た……ただいま~……」
莉愛が慌てたせいか少しヘロヘロになりながら玄関のドアを開けてそう声を発する。
――――ギョッ……!!!
莉愛が目の前にある光景に目が飛び出しそうになるくらい驚く。
玄関には腕を組み怒り顔で仁王立ちしている智己の姿があった。
「………遅かったな」
智己が莉愛を威圧するように低い声でそう声を発する。
「ご……ごめんなさい……。友達とカラオケに行っていて……」
莉愛が恐縮しながら頭を下げてそう言葉を綴る。
「遅くなるなら連絡しろ!どれだけ心配したと思っているんだ!!」
智己が声を荒げながら莉愛に叱咤する。
「ごめんんさい!本当にごめんなさい!!」
莉愛が必死で謝る。
その時だった。
智己が莉愛を優しく抱き締める。
「無事でよかった……。何かあったんだじゃないかと心配してたんだ……」
智己が莉愛を優しく抱き締めたまま、少し震えながらそう言葉を綴る。
莉愛はその様子を見て本当に申し訳ないと感じた。
連絡も入れず、遅くに帰ってきたのでこれだけ怒られるのは当然の反応だ。
(次からはちゃんと連絡を入れよう……)
莉愛が申し訳ない気持ちで一杯になりながら、心でそう呟く。
ここまで心配して大事に想っている兄に、自分は甘え切っていた。
ここまで怒る智己の姿を見て、それと同時に、本当に大切にしてくれているんだという想いを感じ、莉愛は心の奥底から智己の存在に感謝した。
「本当にごめんね……。次からはちゃんと連絡を入れるね……」
莉愛が智己に抱き締められたまま、申し訳ない気持ちで一杯になりながら、そう言葉を綴る。
「………その必要は無いよ」
智己が小さな声でそう呟くように言葉を綴る。
次の瞬間――――。
――――ガシャンッ……!!!




