20.フェスティバル
やがて、開催場に到着してそのフェスティバルの入場チケットを買うために列に並ぼうとする。
その時、また百合が口を押えたので、莉愛は百合に水筒を手渡す。
「……莉愛ちゃん、申し訳ないんだけど私はそこのベンチで座って待っているから、莉愛ちゃんだけでも行ってきてくれる?」
「で……でも……」
百合の言葉に莉愛がそう声を発する。
確かに、莉愛はこのフェスティバルを楽しみにしていたのは本当だった。このイベントはこの日しか開催されない貴重なフェスティバルなのも知っている。
しかし、だからと言って体調が良くない百合を一人にして良いのだろうかという頭もよぎる。
「私は休んでいれば大丈夫だから……。折角だし莉愛ちゃんだけでも行ってきて。ね?」
百合の言葉、百合の気遣いに、莉愛はどう返事をしていいかが分からない。
「本当に休んでいれば大丈夫よ。ほら、行ってらっしゃい」
百合が莉愛の背中を押しながら、そう言葉を綴る。
その百合の気遣いに莉愛は申し訳なさを感じつつ、フェスティバルの開催場に向って歩きだした。
***
「……決定的だな」
優弥がある映像を引き延ばして確認すると、そこにはある映像が流れていた。
「……これでピースが全部当てはまったな」
優弥が神妙な顔で小さく言葉を綴る。
そして、次は智己が何処に住んでいるのかを調べるために、智己の現在の住所を調べ始める。それと同時に、ある事も調べ始めた。
優弥は何を見つけたのか……?
事故の全貌が明かされていく……。
莉愛を監禁した理由……。
その全容が幕を開けようとしていた……。
そして、優弥はある「真実」を見つけることになる……。
***
「……絶対にここにいるはずだ……」
智己がフェスティバルの開催場に足を踏み入れると、誰にも聞こえないような声でそう声を発する。
そして、怪しまれないように一人の来場者を装いながら、莉愛の姿を探し始めた。
***
(……これも綺麗……)
莉愛が小型のカメラを片手に花の写真を次から次に収めていく。
本当は百合とこのフェスティバルを周るのを楽しみにしていたが、百合の事を考えると無理に動かすわけにはいかない。
(百合さん……大丈夫かな……)
このフェスティバルを楽しみたいと思う反面、百合の体調も気になる。
しかし、百合からはこの事に関しては心配は全くいらない事だからと言われたのだった。
(体調が良くないのに心配は全くいらないって……病気か何かではないってことなのかな……?)
莉愛が頭の中で百合の体調の悪さが何処からきているのか考えるが、何も思いつかない。
(とりあえず、このフェスティバルを楽しもう……。百合さんがわざわざお金出してくれたんだし……)
莉愛が頭を横に振りながら、今はこの時間を楽しむことを考える。
なぜなら、楽しむことが出来なかったら、せっかくお金を払ってくれた百合に申し訳ないと感じたからだった。
(わぁ~……、これも素敵……)
莉愛がパステルカラーのような花を見つけて、目を輝かせながら写真を撮る。
開催場は毎年の如く、沢山の人で賑わっていた。そして、毎年お馴染みの同時開催のイベントである『ワールド・フード』のお店も沢山出展されていた。
その一つのお店で売られている「ビスコッティ」という名前のお菓子を見つけて、お土産用に一つ買っていく。
その時、店員さんから、あるサービスをしているという話を聞き、莉愛は「よろしくお願いします」と言ってそれを受け取ると、何かをして、店員に手渡した。それを店員は受け取り、丁寧にビスコッティの袋に取り付けた。
莉愛は店員にお礼を言ってその袋を受け取ると、開催場を出るために「退場口」に向って歩きだした。
その時だった。
「ここにいたんだね、ほのか……」




