15.迫りくる黒い影
智己が薄暗い部屋で黒い瞳を宿しながら低い声でそう呟く。
ブツブツと何かを呟きながら、出掛ける準備を行う。
「アレを持っていかないと……」
智己がクローゼットに隠すように入れていた薬品を手に取ると、それをそっとポケットに忍ばせる。
その薬品は、智己が通う大学から盗んできた薬品だった。
そして、玄関を出て車に乗り込み、莉愛が行きそうな場所を考えながら車を走らせていった。
***
「お……おっきい……」
莉愛が大型のショッピングセンターを見上げながら、そう声を出す。
百合が出掛けようと言って莉愛を連れ出した場所はこの場所だった。
しばらく家にいるので、着替えは百合とそんなに身長が変わらないためなんとかなるものの、下着類に関しては不便だろうという事で、気分転換も兼ねて、莉愛に必要な生活用品を買いに来たのだった。
今日はとても綺麗な青空が広がっており、季節の割に、そんなに暑すぎなかった。
「なんだか妹が出来たみたいで嬉しいわ♪私、一人っ子だったから妹っていう存在に憧れていたのよね♪」
百合が莉愛の下着を選びながら、嬉しそうな顔でそう言葉を綴る。
「あっ!これなんかどう?」
莉愛に似合いそうな靴下を手に取り、百合がその靴下を莉愛に見せる。
その靴下は淡い青色の花柄が刺繡されているシースルータイプの靴下だった。
「花……綺麗……」
莉愛がその靴下を見てそう小さく声を発する。
「お花、好きなの?」
百合が微笑みながら莉愛に尋ねる。
「はい……。母が花が好きで家の庭で花を育てていたんです。毎年季節ごとに違う花をいろいろと見ることが出来たので、庭が花畑のようでその庭で母が庭いじりをしているのをよく手伝っていました」
莉愛が遠い目をしながら、その頃の事をどこか懐かしむようにそう言葉を綴る。
庭に咲いていた色とりどりの花……。
母が欠かさずに手入れをしていた花畑のような庭……。
今ではもう見ることのできない庭……。
「そうなのね……」
莉愛の綴る言葉に百合が少し寂しそうな表情をしながら言葉を発する。
莉愛の表情はどこか寂し気で、今にも泣きそうな、そんな切ない表情が見て取れる。
(急に両親をいっぺんに失ったんだものね……。辛くなって当然よね……)
百合が莉愛の気持ちを考えると切なくなり、どこか辛そうな表情をしながら心の中でそう呟く。
「………ちょっと、休憩がてらカフェに行きましょうか。美味しいスィーツが食べられるカフェがあるのよ」
百合が微笑みながら莉愛の手を取り、そのカフェに連れて行く。
(ありがとうございます、百合さん……)
百合の優しい心遣いに莉愛は心に温かさを感じて、心の中でそっとお礼の言葉を呟く。
莉愛と百合はカフェに入ると、百合がお勧めのスィーツがあるという事で二人ともそのスィーツと紅茶のセットを注文した。
しばらくして、注文したスィーツと紅茶が運ばれてきて、ワイワイとお喋りしながらそのスィーツを頬張っていく。
百合のおススメのスィーツは今の時期にぴったりの淡く透き通った水色が特徴で上にはバニラアイスが添えられている「青空ゼリー」と言う名前のスィーツだった。
「ん~♪本当に美味しいです~♪」
莉愛がそのゼリーを頬張りながら、満面の笑顔でそう言葉を綴る。
「でしょ?この時期にはやっぱりここで食べるなら絶対これって決めているのよ♪」
百合も美味しそうにそのゼリーを頬張りながら笑顔でそう言葉を綴る。
そして、その後はまたショッピングを楽しみ、夕方に差し掛かってきたので二人は家に帰ってきた。
家に帰ると、百合はすぐに夕飯の準備に取り掛かったので、莉愛はその手伝いをすることにした。
一緒にキッチンで夕飯の料理を作っていると、莉愛が母とたまに一緒に料理をしていたことを思い出して、涙が溢れてきた。
その溢れてきた涙を見て百合は察したのか、莉愛の頭を優しく撫でてくれる。
その百合の仕草が莉愛にとっては暖かくて、嬉しさを感じていた。
***
「…………ん?」




