14.穏やかな時間
優弥が仕事に行き、朝の家事がひと段落すると、百合はリビングの一か所にシートを引いて椅子を設置した。
「あ……あの……?」
百合が何をしようとしているのか分からなくて、莉愛が戸惑いながら声を発する。
「その髪、綺麗にカットしてあげるわ」
百合が髪をカットする用のハサミを手に笑顔でそう言葉を綴る。
「…………え?」
その言葉に百合が呆然としたような声を出す。
「私、こう見えて元美容師をしていたのよ。だから、安心して。莉愛ちゃんの髪、綺麗にしてあげるわね」
百合が微笑みながらそう言葉を綴り、莉愛に椅子に座るように促す。
莉愛は促されるまま椅子に腰かける。
そして、百合に乱雑になっている髪を切ってもらう。
――――シャキッ……シャキッ………シャキッ…………。
百合が丁寧に鋏を動かしながら、莉愛の髪を綺麗に整えていく。
心地良いハサミの音が莉愛の耳に優しく響く。
「…………はい、完成」
百合がハサミを置いて、莉愛の顔の前に鏡を持って、綺麗にカットした髪を鏡越しに見て貰う。
「わぁ…………」
莉愛が鏡で自分の髪を見て感嘆の声を出す。
髪は綺麗にカットされて、髪型で行くとショートボブのような髪型だった。
「うん♪可愛いわよ♪」
百合が満足そうに莉愛にそう声を掛ける。
「ありがとうございます、百合さん」
莉愛が笑顔で百合にお礼の言葉を述べる。
その時だった。
「はい!チーズ!」
――――パシャッ!
百合が自分のスマートフォンを使って、莉愛の可愛くなった顔の写真を撮る。
「うん♪いい感じ♪」
百合が写真を見て満足そうに声を出す。
「あ……あの……」
突然写真を撮られたことに、莉愛が呆然と声を出す。
「別に何かに使うわけじゃないから安心して♪カットが上手くいった時はこうやっていつも写真を撮っているだけだから♪」
百合がそう笑顔で言葉を綴り、莉愛の他にも自分がカットした人の写真を見せて貰う。
(び……びっくりした……)
どうやら、百合の言っている言葉は本当らしく、写真には優弥の髪をカットしたときの写真も収められていた。
「それじゃあ、準備して出掛けるわよ!」
「…………へ?」
カットが終わり、シートを片付けながら百合がそう口を開く。
その言葉に莉愛は呆気にとられて変な声が出てしまったのだった。
***
「………絶対に連れ戻してやる」




