13.動き出す狼
朝になり、ソファーからぼんやりと起き上がった智己が莉愛を呼ぶが返事がない。
「………ほのか?何処にいるの?ほのか……」
智己が部屋中を歩き回り、莉愛が何処にいるかを確認しようとする。
しかし、どこにも莉愛の姿がない。
「嘘だ……嘘だ……」
智己は莉愛が居ないことにその場に項垂れて、悲痛の声を出す。
「ほのか……ほのか……」
智己が何度もその名前を呼び続ける。
だが、その言葉に返事は無い。
「ほのか……」
智己の瞳に黒く鈍い暗闇が宿る……。
そして、怒りに体を震わせながら智己はリビングを出て行った。
***
「…………んん…………」
朝の陽ざしで莉愛がうっすらと目を覚ます。
一瞬、ここが何処か分からなかったが、すぐに昨日のことを思い出した。
そして、客間を出てリビングの方に向って歩きだす。
「………あら、起きたのね。おはよう」
リビングから出てきた百合が莉愛に気付いて微笑みながら声を掛ける。
「お……おはようございます……」
莉愛がお辞儀をしながらそう声を発する。
「お腹は空いている?朝ごはんにしましょうか」
――――グゥゥゥ…………。
百合のその言葉に莉愛のお腹が反応したのか、盛大な腹ペコ虫が鳴り響く。
その様子に莉愛は顔を真っ赤にしており、百合はクスクスと微笑むと、莉愛をキッチンに案内した。
キッチンのテーブルには、白米と味噌汁、焼き鮭が並んでおり、美味しそうな匂いが莉愛の鼻をくすぐる。
「さっ、どうぞ」
百合に促されて、キッチンの椅子に座り、莉愛は朝食を頂いた。
こんな温かな気持ちになれるご飯は久しぶりだったので、また涙が溢れそうになる。
その涙を堪えながら、莉愛は朝食を食べていった。
そして、朝食が食べ終わり、百合が用意してくれたお茶を飲んでいる時だった。
「はぁ~……。腹減った~……」
優弥がキッチンにやって来てそう声を発する。
突然の祐也の登場に莉愛は驚いてしまうが、百合から夫がいることは聞いていたので、この人がそうなんだという事が分かり、ホッと安堵の息を吐く。
百合は手際よく優弥の朝食を準備して、優弥の前に料理を並べる。優弥の前には莉愛が頂いた朝食に加えて、目玉焼きが三つ付けられていた。
「目玉焼き……三つ……??」
莉愛がその目玉焼きを見て、驚いたような声を出す。
「ん?あぁ……、仕事の関係上、朝からこれくらいたんぱく質を摂らないと身体が持たないんでね」
優弥がそう言葉を綴り、朝から豪快に目玉焼きを齧り付く。
「あの……仕事って……」
莉愛がそう声を発する。
百合からは、優弥が何の仕事をしているかを聞いていなかったので、優弥の仕事が何なのかが見当が付かない。
「あー……。俺は刑事だよ」
「け………刑事さん?!!」
優弥の口から出てきた言葉に莉愛は驚いたように声を発する。
「あ………朝から大声を出さないでくれ……」
優弥がうんざりした顔をしながら、莉愛にそう声を掛ける。
「ご……ごめんなさい……」
莉愛がシューンとなりながら縮こまってしまう。
「昨日の事に関しては百合から話は聞いたよ。俺は優弥。まぁ、「優弥さん」とでも呼んでくれればいい。君の話したことに関しては、仕事の合間に調べてみる。確認が取れるまでは、この家にいてくれても構わない。今の君の状況で追い出したら百合が悲しむだろうしな」
優弥が早口でそう言葉を綴り、ため息を吐く。
「その実の兄を名乗っている人の事も調べてみる。時間は掛かるかもしれないけどな」
優弥が朝食を食べ終わり、席を立ちながら莉愛にそう声を掛ける。
そして、優弥は仕事に行くために家を出て行った。
「………さて、莉愛ちゃん。ここに座ってくれる?」




