表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
TOKYO DEEP  作者: @is-osio
RECORDED_DEATH.214
9/11

8

異音と共に、細い影が瓦礫の隙間から這い出した。異様に細く、ねじれた影。


一見、人体に近い形状を持つが、動作は明らかに異常だ。皮膚に見える合成素材は裂け、関節部からケーブルと酸化した支持フレームが露出していた。


「なにあれ……人じゃないよな?」


「Dクラス個体……ヒト型フレームベース。いわゆる “グール”です」


脚の動きが断続的で、まるで再生途中の映像のように、前進と静止を繰り返しながら、ぎくしゃくと床を擦る。


「グール」

「人間に見えるだけの機械体です」


ランカはすでにスタンバトンを構えていた。

彼女の動きは無駄がなく、まるで訓練されたそれだった。


『ッァ゛……あ゛ァイア』


耳障りな声が、空間に反響する。

動作とともに、呼びかけるような音声が混じっていた。それは近づくほどに生々しく響き、思わず背筋が粟立つ。


「いや、でも……なんか言ってない?」


「躊躇させるためかもしれません。人間っぽくすれば、攻撃をためらうかもって」


言葉を終えると同時に、彼女はグリップをスライドさせた。伸縮式の先端が空気を切って伸びる。


「ダンジョンに巣食う(エネミー)です。

でも、Dクラスなら弱点はだいたい決まってます!」


「ちょっ、おいっ!」


「下がっててくださいね!」


指示と同時に彼女は跳躍した。

目の前のシルエットが、加速したかのように視界を横切る。


踏み込みと同時に繰り出された一撃が、右腕を肘ごと破壊。


続けざまに脚部関節を叩き折った。


甲高い衝撃音と、散る火花。

思わず一歩後退する。

 

「おらあぁっ!」


最後の一撃は、露出した頸部フレームの隙間へ正確に差し込まれた。


スタンバトンの放電が局所を貫き、内部機構が焼ける音が間近で響く。


視界が一瞬白く弾け、グールと呼ばれた機械体は、ノイズのような呻き声残しながら崩れ落ちた。


「えっ……」


静寂。

数秒間、耳鳴りだけが残った。


《ENEMY STATUS: INACTIVE》

(敵状態:無力化)


ランカは数秒だけ敵影を見つめ、一拍置いてから、スタンバトンをホルスターへ戻した。


「いや、えっ、早すぎ?」


呆けたような声が漏れ、その場に立ち尽くす。


「弱点、分かってたので。ここ、この部分、繋ぎ目があります」


「その、結構……容赦ねえな」

「迷わないのが、大事です」


それは、教訓のように、どこか自分に言い聞かせるように響いた。


彼女は小さく息を吐き、手をそっと胸元で握りしめる。


「せっかくです。もう少し見ていきましょう?」


光源の揺らぎが、彼女の輪郭を静かに照らし出す。


意外と頼れるやつだ。


そう思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ