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TOKYO DEEP  作者: @is-osio
RECORDED_DEATH.214
8/11

7

《LIVE AREA - #NAKANO_2F》

[STREAMER: YUU | CLASS: ——]

[DEVICE: UNLICENSED /

CONNECTED: “AkatsukiOS Ver 3.5”]

[STREAM: LOCAL]


視界に複数のインターフェースが展開される。


投影されたレイヤー上に、周辺環境、物資タグ、温湿度、地磁気ノイズ、すべての情報が縦横に交差していた。


ライトの届く範囲、周囲には折り重なる瓦礫、破損した看板。そして、埃をかぶった棚やディスプレイの断片。


かつての商業ブロックの名残と思われる空間には、ガラス張りの通路跡と、店舗ごとに仕切られた小規模区画が並んでいた。


「ここは……商店街?」


自転車専門店、24H薬局、ホビー館──

それぞれ看板が、かろうじて読める程度に残っている。


「みたいですけど、もうお店も陳列棚も全部潰れちゃってます。あっ!」


同行者のランカは、崩れた棚の隙間から何かを引き抜いた。


薄いビニールパックに入った古びた冊子。


表紙は色褪せていたが、印刷されたタイトルは辛うじて読めた。


「再販版かな。表紙にAR加工ないの、逆に人気なんです」

「漫画だ」


「です。メモリチップに保存されてる物より、こういう紙のやつは熱狂的なコレクターがいます。アナログ主義の人たちですね」


「ダンジョン内で発掘されたって付加価値もつきますし……あっ、こっちも!」


そう言いながら、ランカは小さな缶を拾い上げた。それは、かつて販売されていたらしい合金製カプセルトイ。


「これ中身、綺麗だったらレアですよ……開けます?」

「いや、任せる……」


からっ、と音を立てて蓋を開けた瞬間、中から出てきた派手な塗装のロボットパーツに、目を輝かせた。


「うわっ、当たりです!これ、バトルカスタムモデル……!」

「よかったな?」


喜ぶ姿は微笑ましいが、正直その価値はよく分かってない。苦笑しながら隣接する棚の奥を覗き込む。


倒壊した什器の下に、アンドロイド残骸が半ば埋もれていた。腐食と風化が進んでいるが、胸部にシリアルプレートがかすかに残っていた。


プレート部分の砂埃を払いながら、ランカに呼びかける。


「なぁおい、工具あったよな?」

「工具……ですか?」


彼女は隣にしゃがみ込み、腰のツールポーチから簡易ドライバを取り出す。


「メンテ系のバイト、前にやってたんだ」


装甲パネルを外し、メインボードの接続部を切り離す。外観では分かりづらいが、駆動制御用の小型チップが内蔵されていた。


量産品ではあるが、まだ需要がある部品だ。


「すごい……それ、使えるんですか?」

「ジャンク屋に持ち込めば、千円は超える。こっちは……ダメ、風化してる」


「せんっ!?あの、それ……私、知らなくてずっと放置してました……」

「ほかのは外装ごとイカれてそうだな……隣、見てみるか?」


「は、はいっ!」


ランカは目を丸くしながらも、うれしそうに頷いた。


しばらくして、薄暗い店内から、瓦礫の間を抜け再び通路へと戻る。


照明の残響すら届かない、かすかに煤けた静寂。


「あっちの列も一応、見ておきましょうか」


彼女はそう言って、ふわりと前髪を揺らしながら立ち上がった。


拾い上げたパーツや古書を、リュックに丁寧に収めると、どこか満足そうな表情だ。


「結構、残ってるもんだな」


いつの間にか膨らんでいたリュック。

その側面を、横目にちらりと見る。


「そうですね……ダンジョン内は基本配信してるし、こんなの拾ったりしないですから」

「へぇ、なんで?」


「たぶん、写りとか、スポンサーへの配慮とか……?」

「まぁ、たしかにコソ泥感あるもんなぁ」


「い、言わないでくだ——」


言葉の途中で、通路奥から音がした。

金属が床をかするような、乾いた反響。

 

ふたりの足が、同時に止まる。


「今のなに?」

「来ますね」


彼女はほんの僅かに息を呑んだ。


「来る……」


その瞬間、視界のHUDが反応し、スキャンモードが自動で作動する。


《SCAN TRIGGERED: ENTITY DETECTED》

(スキャン起動:対象を検知)


[TYPE: HUMANOID_RELICT / CLASS: D]

(種別:ヒト型残存体 / クラス:D)


[APPROACH VECTOR: 015° /

DISTANCE: 14.8m]

(接近方向:015° / 距離:14.8メートル)


通路奥、瓦礫の隙間に浮かび上がる赤いタグ。

乾いた、金属を引きずるような音。


暗闇から正体不明の気配が迫っていた。

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