表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二木さんは今日も日記を書く  作者: ニキニキ製作委員会


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/5

第4話「同じクラスで初授業」

2026/04/09 木曜日 ☀


 昨日の余韻が抜けきらないまま気づけば朝になっちゃった。

明日からも二木(ふたき)さんと同じクラスだと思ったら緊張と喜びで興奮しちゃって中々眠れないし、それに寝て起きたら全部が夢だった、なんてことになってしまうんじゃないのかな、とか考えていたら朝になってしまっていた。


 でも、これからの二木さんとの日常を想像している時間は眠れない不快感を吹き飛ばしてくれて、不思議と気分の悪さもなくてむしろ高揚しているような感覚になった。眠れてはいなかったけど、朝から調子がいいとすら思っちゃう。


 今日からは昨日の反省を生かして行動しないとって朝からいろいろと考えていた。昨日はただただテンパってたし、二木さんのことを見すぎちゃってた。でも今日は違う。自然に、そしてバレずに見るための方法をいくつか考えていたから、授業中は「二木さん観察作戦」の実行がメインの1日になってた。


 まず今日は家を出る時間を調整した。同じクラスだからギリギリまで二木さんのことを見つめていられると思うと足取りが軽かった。


 二木さんが登下校のときに通る道と時間帯はある程度把握できている。

同じ道、同じ時間、あの無駄がなく可憐な歩き方。

ほんとは家の前から後を追いかけたいけど、さすがにバレるのがこわかったから学校の最寄り駅から学校までの間で我慢してる。

駅の出口から少し離れた位置でタイミングを合わせるように待つ。数分後、予想通りそのご尊顔が見えた。見つめすぎると違和感を覚えられるだろうし、ここはぐっと堪えるのが鉄則。


 背筋を伸ばして前だけを見て歩くその様子は、無駄がなくてついつい見とれてしまいそうになるけど、その少し後ろを一定の距離を保ちながらついていく。


 近づきすぎず離れすぎず、二木さんの一挙手一投足に目を向けつつ、バレないように気づかれないように注意する。二木さんの通るルートがわかっているからこそ、焦ることなく後ろをついていくことができた。もし見られたとしても二木さんは私に興味ないだろうし、同じ学校に通っているんだから偶然だと思ってくれると信じてる。


 教室のドアを開けると、すでに二木さんは席についていた。

歩く姿は見慣れていたけど、教室で座る姿は今までなかなか見れなかったからより強い感動を覚えた。

そういえば教室に入ってくる二木さんも見ておきたいし、登校中に見つめるのはほどほどにしないと。

軽く周りに挨拶しながら自分の席に向かうが、意識は完全に二木さんに向いている。二木さんに挨拶をするべきか、でもちゃんと声が出るかな。

なんて考えていたら挨拶をするタイミングをなくしちゃった。

こういう気軽な挨拶から会話の練習をしていかないと、目標達成までだいぶ長くなりそう。


 1時間目が始まる前、まずは基本の動きとしてノートや教科書を取り出すふりをしながら肩の角度をほんの少しだけ変えて、伏し目になって視界の端で後ろの様子を見た。これなら疑われずに見ることができるはずだったけど、思ったよりも二木さんの姿がよく見えない!

なんとなく動いているのがぼんやりとわかる程度で、完璧な方法とはいえない。

それに授業中に何度もノートや教科書を出すことはできないから、その後の授業でほかの方法も試していった。


 2時間目はペンを落としながら後ろを振り向く作戦!

あくまで不注意で落としたように右側にペンを落とす。一度椅子から離れてペンを拾い、その動作の流れで軽く振り向く。

この作戦なら二木さんの授業中の姿をしっかり見ることができた!

振り向いた時の短い時間で二木さんの頭からつま先まで、これでもかと視界に収めることができた。これなら疑われずに見ることができそう。


 この作戦で3時間目も二木さんを見つめてた。1回の授業で7回くらいペンやプリントを落としていたけど、さすがに目立ってた気もした。あまり調子に乗らないようにしないと、また二木さんに変な人だと思われちゃう。他にもいろいろ作戦を用意したんだから、これはほどほどにしておかないと。


 4時間目は私が考えたとっておきの作戦を試してみた。

ペンケースに忍ばせておいた小さな手鏡を机の上に置き、角度を微調整する。鏡を見るふりをして、後ろの席を覗き見る。手元のノートや指の動き、時折わずかに映る横顔。振り向いたりしないで二木さんの姿を鮮明に確認できるなんて、このままじゃ興奮してろくに授業を受けられなさそう。

ただ何度か鏡越しに目が合ったような気がしたけど、多分大丈夫だと思う。

ペン落とし作戦と一緒に使っていけばバレないはず。


 4時間目が終われば待ちに待ったお昼休憩!

二木さんの食事シーンは別クラスだったこともあって、なかなか見る機会がなかったから本当に楽しみにしてた。


 お昼休みは友達が私の席の近くに来て、机を移動させて一緒に食事をすることになってた。机を横向きに移動させて、ちゃっかり横目で二木さんを見れる位置で食事ができた。友達としゃべりながらも横目でちらちらと二木さんを見る。

二木さんのお弁当の中身を確認しながらの食事は、一緒に食事をしているような気分になれた。


 二木さんはおかずの中でも卵焼きを最後に食べるみたい。好きなものは最後に食べるタイプだったりするのかな?なんて考えていたら私も卵焼きを最後に食べることになってた。二木さんは確かお蕎麦が好きなはずだけど、お弁当のおかずだと何か好きなものはあるのかな?

これからはお弁当もよく見ておかないと。


 5時間目の保健体育は身体測定だった。身体測定の項目は、身長、体重、視力、聴力の4つ。今年は一緒に身体測定を受けられるから、二木さんの測定結果を手に入れるのは簡単だった。


 二木さんが提出するのは私のすぐ後だから、自分の結果を提出した後

少し後ろで友達としゃべりながら、ちらっと見ることができた。

前年分を手に入れるのはとっても大変だったから、それと比べるととっても楽。

去年のことは、、、あまり思い出したくない。


 今年の二木さんの測定結果は、身長は154.3㎝で前年より0.4cm高くなってるみたい。体重は42.2kg、前年より0.3㎏増えてた。視力は両目ともに1.5で去年と変わらなかった。聴力も去年と同じで問題ないみたい。去年の身体測定の結果とそこまで差がないみたいだから健康状態なんかは問題なさそう。それに体重と身長からでもスタイルの良さがわかるし、BMIは17.72、モデルさんみたいな数値で憧れちゃう。


 6時間目は2年生から始まる芸術の授業で、1回目の授業では美術・音楽・書道、それぞれの説明を受けて選択する時間だった。ここは今日の授業の中でも1番大事なところ、二木さんと同じ授業を選ぶためにも集中しないといけなかった。


 今日の授業中にやってた、後ろを見る方法なんかはこの時のためでもあった。

先生から3教科分の授業内容に関する軽い説明があった後、選択授業を書く提出用紙が配られた。友達から私は何にするのかとしゃべりかけられたけど、「なににしようか迷ってるんだ」なんて言って誤魔化してた。


 その後でちらっと手鏡越しに二木さんの席を見てみると、二木さんはもう記入が終わったみたいで提出用紙を裏返してた。二木さんの選択授業が見れなかったから、このときはほんとにテンパっちゃってたけど、いろいろと考えた結果、名案が浮かんだ。


 まずは提出用紙を少し破って、「消しゴムで消してたら破れちゃって」と言って先生から予備の用紙をもらう。あとは「用紙は私が捨てておきます」と言って捨てるふりをすることで用紙を2枚手に入れることができた。そして3つの選択肢から2つを用紙に書いて、後ろの席から用紙が回ってきたときに二木さんと同じ教科を書いた用紙を提出する。


 二木さんの性格からして書道か美術を選ぶと思ってその2つを用紙に書いておいたけど、もし二木さんが音楽を選んでいたらと考えて心臓が飛び出しそうだった。

提出の時間になり、後ろから順に用紙を集めていく。

後ろの二木さんから用紙が回ってきて、そこを見ると美術と書かれていた。

私は急いで美術と書いた紙のほうをまとめて前に渡して、残った用紙は机の中にしまった。


 どうにか誰からもバレずにこの作戦をやり遂げることができた。

一時はどうなるかと思ったけど、これで二木さんと同じ芸術科目を受けられると思うと、さっきまで飛び出そうだった心臓が、今は踊っているような気がした。


 放課後は昨日と同じ道を、同じ距離を保った状態で後ろからついていった。

気のせいかもしれないけど距離が同じでも、なぜか昨日より二木さんと近い気がした。今日はいろいろあったから心の距離が縮まったのかも、なんて思った。


 夜はいつもの場所から部屋の明かりを確認する。机に向かう影からパジャマ姿が想像できる。もし今日のことが日記に書かれているとしたら、自分はどんな風に映ってたかな。変な行動をしてなかったかな、違和感を持たれてないかな、そんな不安ばっかり頭の中に浮かんでくる。


 それでも昨日よりは確実に進歩している。二木さんを見れた回数も、自然さも、すべてが少しずつ改善できている...と思いたい。明日はもっと自然に、もっと違和感なく、そしてできれば観察だけじゃなくて軽い挨拶くらいできればいいな。


―――姫野あのんは今日も日記?を書く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ