第2話「最高の始業式」
2026/04/08 水曜日 ☀
今日は一生忘れることのできない、本当にうれしい始業式だった。
今年は本当にお願いって何度も思いながら張り出されているクラス表を見に行った。
その瞬間、言葉が出ないぐらい驚いちゃったし、一瞬本当に現実なのかわからなくなった。
二木さんと同じクラスになれるなんて。
感激でクラス表の前で膝から崩れそうになるのをどうにかこらえてた。
去年は別クラだったから近くで見る機会がなかなかなかったけど、今年は同じクラスって距離近すぎる。
授業中も同じ空気吸えるなんて、マジでヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい。
嬉しいはずなのにどうしていいかわからなくなる。
それに二木さんの席なんだけど、名前順だから私の後ろの席だった。近い、普通に近すぎる。
こんなに近くにいるのに振り返らないと見えない距離って逆に意識しちゃうし、後ろにいるっていう事実だけでずっと気になっちゃう。
二木さんの視線や吐息を背中で感じることができるのかと思うと、明日からちゃんと普通に過ごせる自信がない。
こんな状況が続くと考えただけで心臓がいくつあっても足りないくらい緊張する。
ただ欠点として距離は近いのに二木さんのことが視界に入らない。
それが本当に悔しい。
こんなに近いのに見続けられないなんて、意味わかんない、
むしろ見えない分だけ気になって余計に緊張する気がする。
今まで見ることができなかった授業中の様子を見たかったのに、それがなかなか難しそうで、どうにかして自然に振り向く方法を考えておかないといけないと。
始業式の間はほとんど上の空で、校長先生の話もほとんど頭に入ってこなかった。
話をほとんど聞いていなかったから、周りの行動にとりあえず合わせてただけだった。
ずっとどうやったら授業中に自然に後ろを見られるか、そればっかり考えていた気がする。
まだ答えは出てないけど、これはかなり重要な問題だと思うし、できるだけ早く解決しないといけない。
出席確認も兼ねた自己紹介があった。私の次が二木さんの番だと考えると、自然とテンションが上がっちゃって、思った以上の声量がでちゃった。
ちょっと大きすぎたかも。
やっちゃったかもしれない。
二木さんに変に思われてないかな。
本当に不安だな。
でもそのあと。
二木さんの自己紹介は最高だった。
まずこの距離で声を聴けただけで、マジでヤバい。
二木さんの声は落ち着いてて、やわらかくて、思ってたよりも少し低くて。
静かな感じなのに、よく通る声で、私が本当に好きな声。
あれはずるい。
いつも聞いていたい。
この自己紹介を録音しておけばと後悔する。
同じクラスだとわかっていれば準備もしていたのに、
今後は録音できる機会も多いだろうし何か録音できる機械を買っておかないと。
盗聴器ってネットショッピングで買えるかな。
さくらモールの電化製品売り場には流石にないよね。
休み時間は、周りに友達が来てくれていたけど、正直あんまり覚えてない。
後ろに二木さんがいるっていう状況だけで頭がいっぱいになってしまってた。
緊張しっぱなしで会話に全く集中できなかった。
ちゃんと会話できてたのか、今になってすごく心配になってきた。
みんなに対して変な返しとかしてないといいけど。
その後も何度も振り向いちゃったけど、キモがられてないかな。
自分でもちょっとやりすぎた気がする。
なんなら何度か目が合っちゃって、マジでテンパっちゃった。
あの瞬間、絶対顔に出てたと思う。
これが明日からも続くと考えると、ちょっと怖い。
でもやめられる気もしない。
一日中、後ろの気配に集中していたら、二木さんが消しゴムを落とした瞬間にすぐ反応して拾っちゃってた。
反射だったと思う。
消しゴムを渡すとき、顔が近すぎてめっちゃ緊張した。
近くで見ると、本当にきれいだった。
さらさらな黒髪に長いまつげ、白くて透明感のある肌、細くてきれいな指、すらりとした首。
化粧もほとんどしていないのにこの整い方は神。
二木さんと同じ化粧品を使おうと調べたこともあったけど、私じゃあれだけじゃ足りない気がしてやめちゃった。
そんなことを思いながら見つめていたんだけど、このままじゃキモがられると思って必死になって目を離した。
そのときに手元の消しゴムに目が行っちゃった。
この消しゴムはたしか、去年の夏休み終わりにショッピングモールの「さくらモール」の中にある
文房具屋さんの「さくら文具店」で、2学期の文房具を買い足すときに買っていたやつだった。
ノートにシャーペン、修正テープ、3色ボールペンと一緒に買ってたの、ちゃんと覚えてる。
それを思い出して、つい
「その消しゴムまだなくなってなかったんだねー」
って言っちゃった。
今思うと普通におかしい。
不思議な顔をしながら
「ありがとう」
ってきれいな声が聞こえた。
やっぱり声がいい。
でも絶対ちょっと変に思われた気がする。
これは本当にやっちゃったかもしれない。
今日一日だけじゃまだ、二木さんとのこの距離感に慣れることができなかった。
むしろ全然無理。
振り返るとちょっとやりすぎたかもしれないとも思う。
意識しすぎて変な行動が増えている気がする。
これからの学校生活で、友達とは言わないから、せめて嫌われたり、キモがられないように。
緊張のし過ぎで変な言動をしないようにできるだけ自然に振る舞えるようにしないと。
あと二木さんから何度か視線を感じた気がする。
気のせいかもしれないけど。
私が何度も振り返ってたから、キモがられてるのかな。
そうじゃないといいな。
二木さんからの視線は気のせいだと思いたい。
二木さんは学校が終わった後はいつも通りの道で家に帰っていた。
付いていっているだけだけど、同じクラスになったからか、いつもと違って二木さんと帰っている気分になれた。
いつか横並びで帰れるといいな。
二木さんの日課の日記もいつものように夜の9時ごろに書いていたみたい。
窓の外から二木さんの部屋の窓近くの机に座っている影が見えた。
もしかしたら私のことが日記に書かれているかもと思うと、うれしいような、恥ずかしいような。
でも悪く書かれていないといいなって思う。
とりあえず明日からは、もっと落ち着いて行動できるようにしたいし、自然に振り向いて二木さんを見つめる方法を考えないと。
絶対に不自然だと思われちゃいけない。
あとは、できれば少しだけでもいいから二木さんとお話をしたい。
一言でもいいから普通に話せるようになりたいと思う。
今月、いや今学期中には自然な会話ができるようになりたい。
この目標を達成する方法を、ちゃんと考えていかないと。
まだ始まったばかり。
チャンスはいくらでもあるはず。
ーーー姫野あのんは今日も日記?を書く




