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そして……――。
再び、私は「あの場所」にいた。
そこは城から隠された通路を通り、地下深くへと潜ったところに在る秘密の場所だった。
私が帰ると、父は驚いた様子だったが、「これから」のことを考えるために、あの場所へ行きたいと頼み込むと快く案内してくれた。
小さい頃一度きり訪れただけでぼんやりとしか覚えていなかったその場所は、「宝」――大きな桜色の水晶がそこには眠っている、とても神秘的なところだった。
私は改まった気持ちで、水晶の前に立った。
確かに……それだけで、目の前の水晶には大いなる「力」が秘められているが、はっきりと理解できる。この水晶を……創国者から代々、ご先祖様達はずっと守護してきたのだ。
そして、次は――私の番なのだ。
〝……あら、そこに誰かいるの?〟
じっと水晶を眺めていると、どこからともなく、そんな〝声〟が聞こえてきた。
〈守護者〉の〈声〉とよく似ていたが、声色も口調が全く違う。ふと、以前に〈守護者〉から聞いた真実を思い出し、とあることに気付く。まさか……――。
〝あらあら、まだ「覚醒」の途中なのに、私の声が聞こえるのね? そんな継承者は本当に久しぶり。 ふふっ、はじめまして、オルフィーメリア姫。 私はルクレッサ――この世界の「守護神」よ〟
――その〝声〟はやはり、〝守護神〟ルクレッサ様のものだった。
いとも簡単に私の名前を出され、私は思わずその場で膝をつき、頭をたれる。
〝あらあら、そんなにかしこまらなくてもいいのよ。 いつの間にかこの世界に誕生していた水晶を、あなたのご先祖達はずっと守護してくれていたから、私、あなた達には感謝しているくらいなんだから。 ……さて〟
ころころと軽い笑い声を上げながら、ルクレッサ様はそう言って話した。
私は立ち上がると、水晶をもう一度眺めた。
〝今日、あなたがここへ来たのは「これから」のことを考えたいってそう思ったからでしょう? ……そうね、さっきも少し言ったけれど、あなたはまだ完全な「覚醒」には至っていない。 でも、それでも私の「声」をこうして聞き取れるほどには、あなたの秘められた「力」はとても大きいものなの。 「力」を正しく使うためには、もっとこの国のことを知らなければならない。 ……少しずつだけど、あなたは父王が話していた「宝」が一体何なのか、気付き始めているのでしょう?〟
ルクレッサ様に問われ、私は小さくうなずいてみせた。
あの時――ライヅに「支配」されそうになった時、私の頭には真っ先に国の皆が浮かんだ。――私の身ひとつで、この国が犯されてしまうなんて、もってのほかだとそう感じたのだ。
創国者様もずっと国と、そこに暮らす人々を守ってきた。そして、その後に続く他のご先祖様も。ここに来て、私はその跡を続かなければならないのだと、ひしひしと感じ取ったのだ。
それに、ライヅと戦っている時に、リヒトが話していた。――私はこの国を導いて、幸福にしていく存在なのだと。
――ここに眠る水晶を守護し、時にはその「力」を少しずつ借りながら、この国をより豊かに、そして幸福に導いていく。それが「救世主」と呼ばれる存在なのではないかと、私はそう考えていた。
「はい、ルクレッサ様。 父が言っていた『宝』とは水晶のことではなく、この国と人々なのだと、私はそう考えています」
〝――なら、これからどうすればいいのか……分かるわね?〟
その「答え」が正しいのか、肯定するでも否定するでもなく、ルクレッサ様がそう話した。
「……はいっ!」
〝なら、いってらっしゃい! 次に会う時を楽しみにしているわね。 ……ひょっとすると、私の姿が見えるようになってるかもしれないしね?〟
「はい! 頑張ってきます!」
私は笑顔でうなずきながら、その場所を後にする。
そして、五人の騎士が待つ場所へと急ぐのだった。




