✿ 22
沈黙の後、先に動いたのはリヒトだった。
〝剣〟を握り、意識を集中させて走り出したが、ライヅは余裕の表情を浮かべて、攻撃をかわす。
「なんだ、さっきまでのは気のせいだったか? このままだとまたオレに姫を奪い返されてしまうぞ?」
ライヅの煽りの言葉に、リヒトの表情に怒りがこもる。
それを見たライヅが愉快そうに、私の方へと視線を向ける。
「姫よ、今は解放されているかもしれないが、お前はまだオレの支配下にある。 ――いくら味方に守られようとも、所詮お前はオレのモノなのだ」
肩がびくんと跳ねる。……そんなはずない。私はこうして自分の意思でちゃんと動いている。
私の恐怖を感じ取ったのか、騎士達がライヅから見えないように、前へと出て、私をかばう。
「もう、ヒメさんには指一本触れさせません!」
ハルトが冷たく、大きな声でそう言い放つ。
「……その通りだ。 さっきから聞いてりゃ好き勝手言ってるがな、ヒメはお前のモノなんかじゃない。 ましてや、お前のくだらない野望なんかに利用される筋合いもない。 ヒメは……これから、この国を導いて、幸福にしていく存在だ。 そんな彼女を騎士達は命がけでも守護する! ――誰にも、俺たちの〝ひめ〟を犯させやしない!」
続けて、リヒトもそう言い放つと、もう一度〝剣〟を握り、走り出した。
それを合図に、エイトとカナトも武器を手にして走り出す。タクトは私のそばで弓で後方から支援して、ハルトは魔法で私の回りに障壁を作り出した。
各々、自分の特徴を活かし、ライヅに攻撃を仕掛けるが、全く歯が立たない。なんてことない様子で、ライヅはひらりと軽く攻撃をかわしている。
しばらくこちら側が不利な攻防が続いたが、ライヅはふと不敵な微笑を浮かべて、私たちの方に向かって、手を広げた。
「――雷よ、轟け!!」
ライヅが叫んだ瞬間、その手から雷が放たれる。
不意打ちに、騎士達は避ける暇もなく、雷に撃たれてしまう。それどころか、雷は障壁すら貫き、私をも捉えた。
「きゃあっ!!」『うわぁっ!!』
全員の叫び声が上がり、あまりの痛みに、その場に崩れ落ちてしまう。
霞む視界の中で、ライヅが騎士達の脇を通り抜けて、まっすぐに私の元へと歩いてくる。
「さあ、姫。 こちらに来て、先ほどの『続き』といこうか」
のどの奥から息が漏れ、指先がぴくりと動いたような気がして、私は恐怖する。
「……待て」
そこに、ライヅの背後から制止の声が上がる。
――リヒトだ。何事もなかったように、彼は〝剣〟を強く握り締め、怒りの表情でライヅをにらみつけていた。
「何度も言わせるな。 それ以上、ヒメに手出したら容赦しない! ――俺の〝ひめ〟に手を出すな!」
そう叫び、リヒトは声を上げながら、ライヅに向かって一直線に向かってくる。
あまりの早さに、ライヅも驚いたのか、攻撃をかわすことができなかった。
〝剣〟の先が脇をかすめ、ライヅが目を見開く。
「みんな、起きろ!! 何が何でも、コイツからヒメを全力で守るんだ!!」




