↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
21/26

✿ 20


    ✿


 誰かに呼ばれた気がして、リヒトは目を覚ます。

「う……」

 気が付くと、硬い石の床に横たわっていた。しばらく焦点が合っていなかったが、まばたきを繰り返しているうちに、今いる場所が牢屋(ろうや)であることと、あの軍隊に捕まり、ここに閉じ込められていることを理解した。

「お、やっと起きたー」

 のん気に、エイトがリヒトの顔をのぞき込みながら、にこにこと手を振る。身を起こすと、片隅に険しい表情で座り込んでいたカナトが顔を上げた。

「……状況は」

「もう最悪。 どうやらみんな【敵】に捕まったらしいよ。 ヒメさんは別のとこにいるみたいなんだけど、やることやったら俺たちを始末(・・)するつもりなんじゃない?」

 軽口でそう話すエイトだったが、何とか打開策はないかと必死に考えているようだった。

 リヒトは立ち上がり、周辺を見回す。……手の届かなさそうなところに、鉄格子(てつごうし)のかかった天窓があるだけで、それ以外は壁に囲まれ、脱出できそうにない。床にはまだハルトとタクトが気を失ったまま横たわっている。

「くそ……っ」

 ……まずい。――このままじゃ、絶対にまずい。早くここから出て、彼女を探さなければ。

(――……けて)

 どうしたものかと考えていると、リヒトは何か聞こえたような気がして、ふと天井を見上げる。

 ……彼女だ。――彼女が助けを求めている!

「――ハルト!!」

 (リヒト)に名前を呼ばれ、ぱっとハルトが目を開け、「はいっ!」とすぐさま身を起こし、リヒトの隣に並んだ。

 その横ではタクトも()られるようにして目を覚ましていた。

「……あそこ。 何か感じるか?」

 リヒトはそのまま天井を指差し、じっとその方向を見つめながら、集中し始めたハルトの答えを待つ。

「そうですね……。 何か……今までとは比べ物にならないくらいの邪悪な【気】を感じます」

「魔法で破れそうか?」

「いえ、難しいかと……。 僕たちが力を合わせたとしても少し厳しい気がします」

 ……その上、全員、武器も取り上げられている。どうしたものかと考え、リヒトははっとして顔を上げた。

 ――自分だけは武器を持っている! そう思いついて、リヒトは〝剣〟をよび出し、手に握った。

 けれど、天井は高い。もう一度打開策を考えようとしていると、〝剣〟が独りでに、きらりと輝いたような気がした。

「――〝剣〟よ、俺に力を! あの天井を破って、ヒメのところへ行かせてくれ!」

 すがるように叫び、リヒトは上に向かって、〝剣〟を突き出すように振った。

 すると、衝撃波が放たれ、見事に天井を突き破った。穴の向こうにはどこかに続く道が見えている。

「――エイト、頼んだ!」

 穴に登る方法を考えるよりも先に、気が付くと、リヒトはそう叫んでいた。

「まかせて!」

 すると、エイトは驚くでもなく、二つ返事をすると同時に、狭い牢屋の中で上手く助走をつけ、器用に穴へと()け、穴へと()んでいった。

 エイトは穴ぎりぎりのところをつかむと、そのまま向こう側へと消えていった。そして、しばらくすると、寝具を縄代わりに穴から()らし、顔をのぞかせて笑ってみせた。

「武器も拾ってきたよ!」「よくやった!」

 そう言いながら、リヒトは他の三人を連れ、上へと登った。

 穴の先には長い廊下が広がっていた。

 幸いにも敵の姿は見えなかったが、あまり時間も掛けていられない。リヒトは〝剣〟を強く握りしめ、目を閉じ、意識を集中させた。

 彼女の「気」を探り、リヒトは周囲に顔を向ける。ふと、とある方向に「何か」を感じ、そちらを向いて顔を上げる。

「こっちだ!」

 一か八か、その方向へと走り出す。他の四人も続き、少ししたところで彼女とは別の【気】を感じ、立ち止まった。

 けれど、そこには壁しか見当たらなかった。

 エイト、タクト、カナトは戸惑ったような表情(かお)を浮かべているが、ハルトだけは険しい顔で壁を見つめていた。

「……ここだな」「えぇ、そうですね」

 兄弟(双子)だけの短い会話を交わすことで確信を得たリヒトは再び〝剣〟を握り、壁に向かって衝撃波を放った。

 すると、いとも簡単に壁は崩れ、その向こうの様子が浮き彫りになった。

「ヒメ!」

 真っ先に、石の台に横たわり、気を失っている彼女の姿が目に入り、リヒトは叫ぶが、彼女の側に立つ、一つ結びの黒髪の(オトコ)禍々(まがまが)しい【気】に思わず気圧(けお)されてしまった。

「何かに使える(・・・)と思って生かしておいたが……。 まさか脱走してくるとはな」

 ……コイツだ。――コイツが彼女を狙っている張本人だ。すぐに理解したものの、歴然とした「力」の差を()の当たりにして、リヒトは唇を()み締めた。

「オマエは……!?」

「オレか? オレはこれからこのオルフィーメリア姫をモノ(・・)にして、この世界を支配(・・)する者だ。 お前らの主人(・・)にもなるついでに、名前も教えてやろう。 ――オレの名はライヅ、ちゃんと覚えておけ」

 (オトコ)――ライヅはそれだけ話すと、彼女の方へと向き直って、何か呪文を唱え始めた。――五人の騎士達なぞ、取るに足らないと思っているのだろう。

「……ヒメに何する気だ」

「姫はオレに刃向かったからな、今から力ずくでオレの所有物(モノ)にするんだ」

 ライヅの馬鹿にしたような態度と、その台詞(セリフ)にリヒトの怒りは沸点に達した。気が付くと、〝剣〟を握り締め、駆け出していた。

「俺たちの〝ひめ〟に手を出すなぁ!!」

 リヒトは渾身(こんしん)の力を込めたが、振り向きざまに、ライヅに攻撃を避けられ、目を丸くした。

「……お前達も刃向かうか。 仕方ない。 特別に相手をしてやろう」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。