↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
19/26

✿ 18


    ✿


 【敵】の数は尋常ではなかった。

 四方八方から、おぞましい顔つきをした人間(ひと)の形をした化け物のようなモノ(・・)が馬車に向かって来ていた。

 しかも、そのおぞましいモノ達はそれぞれ武器を手にしていた。誰か――人間(ヒト)の手によって造られた軍隊と表現しても(いっても)過言ではなかった。

 ……おそらく、軍隊(ヤツら)の狙いはヒメだろう。リヒトは〝剣〟を手にし、軍隊をにらみつける。何がなんでも、彼女を【敵】の魔の手から守らなければならない。

 他の騎士達も馬車の外に出て、軍隊に向き合う。

「……ははっ、こりゃ骨が折れそうだね」

 エイトが肩をすくめながら、いたずらっぽく微笑(わらい)を浮かべて、おどけた様子で言ってみせる。

 寡黙(かもく)なカナトが静かに槍を構え、横目でエイトに視線を向ける。まるで、それでも彼女を守り抜くという覚悟を見せているかのようだった。

「一番最後に見つかったカナトに呆れられてるじゃないか、エイト。 でも、そうは言いつつ、みんなと同じ気持ち……だろ?」

 ハルトと後方の位置につけながら、タクトがそう話しながら、弓を手にする。

「うん、当たり前だろ。 それにしても、不思議だよな。 俺たち、会って間もないのにこうして、ずっと前から一緒だったみたいに団結して、ヒメさんを守ろうって決心してるんだから」

 笑いながら語るエイトの言葉に全員が同意するようにうなずいてみせた。

「そうですね。 必ずヒメさんを守り抜きましょう。 ――では、兄さん、号令を」

 ハルトも魔法の構えを取りながら、当然のようにそんなことを口にする。

 ……なんで、俺が先達(リーダー)なんだか。思わず、リヒトは苦笑いを浮かべるが、異論を唱えるでもなく、他の三人も号令が掛けられるのをじっと待っている。

 改めて〝剣〟を握り締め、リヒトは大きく息をする。

「行くぞぉ――――!!」

 そして、騎士達(みな)鼓舞(こぶ)するかのように大声で叫ぶと、軍隊に向かって駆け出した。


 ……けれど、やはり戦いは一筋縄ではいかなかった。

 いくら倒しても軍隊の数は減りもしなかった。そのうちに、弓で戦うタクトや短剣で応戦するエイトに疲れが見え始めた。リヒトに食らいつくかのように懸命に戦っているハルトも、表情に余裕がなくなってきていた。

 当然、リヒトも(あせ)り始める。……このままではみんなが倒れてしまう。それだけは――ヒメに手を出されることだけは絶対に避けなければならない。

 そんな中、馬車からまばゆい光が放たれた。

 光は馬車――彼女を守るかのように障壁(バリア)を作り出し、そして、騎士達の元にも降り注ぎ、「力」を分け与えた。

 疲労していた二人とハルトは「力」のおかげで少し回復したようだった。

「みんな、諦めるな! 最後まで全力を振り(しぼ)るんだ!」

 そこに激励するように、リヒトは他の騎士達(みんな)に声を掛ける。

 騎士達はうなずいてみせると、それぞれ自分の武器にもう一度力を込めたのだった。


 ……だが、それも長くは続かなかった。

 やはり減らない軍隊に、リヒトも少しずつ疲れを感じてきたところに、横からドサリという鈍い音が聞こえてきた。

「エイト!」

 最初に倒れたのはエイトだった。武器を握ったまま、その場に倒れたかと思うと、一瞬にして軍隊に群がるようにして囲まれていた。

 残った四人に衝撃が走る。

 立て直す(ひま)もなく、後方にいたタクトとハルトにも軍隊の魔の手が(せま)る。

「兄さん、ヒメさんを……――」

 そう叫ぶハルトも軍隊に取り押さえられ、姿が見えなくなってしまった。

 それまで静かに戦い続けていたカナトの表情にも動揺の色が走る。

 リヒトは唯一残った彼の元へと近づきながらも、馬車の方へと目を向けた。

 ――その瞬間だった。

 バリン、と何かが(くだ)けたような音がした。

 はっと息を()み、リヒトは振り返る。

 見ると、彼女を守っていたはずの障壁(バリア)が壊れてしまっていた。その隙をつくように、軍隊が馬車へと押し寄せていた。

「ヒ……――」

 彼女の悲鳴が上がると同時に、衝撃が走る。リヒトは薄れていく視界の中、馬車の中からヒメが連れ去られていくのを目にしたのを最後に、意識を手放してしまうのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。