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それは夢か現か、きらりと「何か」が光る。
気が付くと、彼は森の中にいて、木々の間で立ち止まっていた。
ずっと暗闇の中を歩いていたようなのに、足を止めた瞬間、目が覚めたかのように視界が開けた。
けれど、急にどうして……。自分自身でも理由は分からず、ひとまず彼は辺りを見回した。
すると、ちょうど木々の向こうで、身を隠しているが無防備な状態で、何かの呪文を唱えている怪しげな男を見つけた。
男を一目見た瞬間、彼はとっさに「これだ」と直感した。
そして気が付くと、背中にかついでいた槍を握り、彼は駆け出し、天に突き上げるようにして、男を刺していた。
「……何っ!?」
「何か」に意識を向けていた男に避けられるはずもなく、少ししてから、男は悲鳴を上げた。
その瞬間、男の目の前に、宙に浮かんでいる金色の髪の美しい少女がどこからともなく現れた。
……あぁ、なるほど。きみは俺の「役割」をよく理解していたんだな。
――少女をひと目見た瞬間、何もかもが違って見えた。ずっと暗闇の中で彷徨っていたのに、今この瞬間、「答え」を見つけ出したのだ。
「な……何者だ? なぜ私の邪魔をする!?」「…………」
男に問われても、彼は黙ったまま、苦しそうな表情を浮かべている少女を見つめていた。
けれど、彼女はまだ「なすがまま」にされているようで、何かを訴えるかのように、少しだけ彼の方へと視線を向けた。
――電撃が走る。彼は槍をさらに突き上げていた。
「……その人を解放しろ」
気が付くと、彼はそんな言葉を発していた。……ずいぶん久しぶりに話した気がする。
そんなことを考えながらも、槍を握る手に力を入れ、男を追い込む。
男は舌打ちをすると、その身を翻し、少し離れたところへと逃げる。
その瞬間、少女がようやく解放された。慌てて、彼は彼女を受け止めた。
同時に、少し離れたところに、またもやどこからともなく馬車と四人の少年が現れた。そのうちの一人がすぐさま「剣」を握り、体勢を整えると男へと駆けていった。
その姿を目で追っていると、彼はまた理解した。――自分は四人とともに「在る」べきなのだと。
「……カナトさんね?」
不意に抱えていた少女に声を掛けられ、彼――カナトは振り返る。どうして名前を知っているのだろうと思ったが、カナトはこくりとうなずいてみせた。
「助けてくれてありがとう。 ……良かった、思っていたより元気そうで安心した。 私、オルフィーメリア、あなたを探していたの。 会えて嬉しい」
先ほどまでは「とらわれ」の身だったはずなのに、少女はそう話して笑ってみせた。
……ああ、この人だ。これからはこの人を守り抜いていこう。
――「きみ」にまた会えるその日まで。
その笑顔を見た瞬間、「彼女」の言葉をまた思い出し、カナトはそう心に決めたのだった。
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首飾りが光ってしばらくしても、私はまだ動けずにいた。
抵抗していても、【力】はどんどん私を蝕んでいく。何もできずに悔しそうにしているみんなを安心させることもできず、私はただ助けを待つことしかできなくなっていた。
……いやだ、負けたくない。いよいよ力が入らなくなった時、突然、目の前の視界がぐにゃりと再び歪んだ。
その次の瞬間、私の目に空がうつった。だけど、まだ身体は動かせない。
まだ耳鳴りがしてよく聞こえなかったが、すぐ側では誰かが言い争っているようだった。そちら側に目を向けると、長い黒髪を一つに結んだ青年が空に向かって槍を突き刺しているのが見えた。
……彼が「そう」だ。首飾りは彼を呼び寄せてくれたのだ。
助けを求め、私は彼に視線を向ける。目が合った瞬間、彼ははっとしたような顔をした。
「……その人を解放しろ」
よく通る低い声でそう言い放つと、彼はさらに槍に力を込めた。
少しして、私はようやく解放される。どうやら、【敵】が逃げ出したらしい。そのまま放り出された私を彼が受け止めてくれた。
視界の隅では異空間から同じく解放されたリヒトが〝剣〟を握り、【敵】の方へと向かっていくのが目に入った。
「……カナトさんね?」
私はそんなリヒトを目で追っている彼――カナトに呼び掛ける。名前を呼ばれ、目を丸くした彼は静かにうなずいてみせた。
長老から「ひどい状態」だと聞いて心配していたが、とりあえず身体の方は何ともなさそうで安心する。ただ……確かに、他のみんなと違って彼が「何か」を抱えているのだけはわかった。
……でも、「分かり合えない」ということはきっとない。あまり話さないが、少なくとも私の前で表情を変える彼を見ていて、そう確信した。
「助けてくれてありがとう。 ……良かった、思っていたより元気そうで安心した。 私、オルフィーメリア、あなたを探していたの。 会えて嬉しい」
それに、こうして私を助けてくれたのだ。私は彼に笑ってみせた。
彼はまた驚いた顔をして、私をじっと見つめた後、少し視線をそらした。何か……考えているようだったが、すぐにくちびるをきゅっと結んで、改まった様子で私に向き直った。
「……俺はカナト。 カナトで、いい。 とある目的で旅をしていたんだが、君にあった瞬間『何か』を感じた。 君には……何か『使命』があるんだろう?」
「うん。 私、この国の姫でね、この国の『宝』と私を守護してくれる『五人の騎士』を探して旅をしていたの。 あなたがその最後の一人。 ――カナト、あなたにも私の旅に同行してほしい」
私のお願いに、彼――カナトは真剣な表情で耳を傾けているものの、すぐにはうなずいてくれなかった。やはり黙ったままで、何を考えているようだった。
けれど、完全に「拒絶」をされているわけではないと、私は何となく感じていた。きっと、カナトは彼自身の「目的」に支障がないかを見計らっているのだろう。
しばらく経って、カナトは大きくうなずいてみせた。
私が再確認の意味でじっと見つめていると、悩みながらも、カナトは簡単ではあるが説明をしてくれた。
「……いつか、話す。 俺には他にも大切な『ひと』がいるんだ。 もう一度、その『ひと』に会いたいって思ってるんだよ」
なるほど……カナトの中にはその「ひと」を探したいという気持ちが残っているのか。その一方で、私を守護する「使命」をきちんと理解しているから、決心が揺らいでいるのか。
私はそれでもいいと深くうなずいてみせた。……一番は旅の間にその「ひと」に会えるといいんだけど。
カナトは私が返した反応に、ゆっくりとまばたきすると、もう一度大きくうなずいてみせた。
「……ありがとう。 こんな俺だけど、君の力になれるよう、努力する」
――あぁ、これでついに「五人の騎士」が揃ったんだ!!




