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……目の前で、ヒメが危険に晒されている。
けれど、【敵】の姿が見当たらず、どうすることもできない。リヒトは不甲斐なく思いながら、何とかこの状況が好転するのを待った。
彼女の首飾りが輝いてから少し経った後、ようやく「その時」がやって来た。
突然、彼女の姿が消えたかと思うと、閉じ込められていた異空間から解放された。どうやら、異空間の外にいた「誰か」が彼女のことを救い出してくれたようだった。
乱暴に地面に投げ出されたが、リヒトはすぐに体勢を立て直しながら、〝剣〟を手に取り、狙いを定める。
――すぐに【敵】は見つかった。その場から逃げ出そうとしていたその【敵】は以前、彼女をさらおうとしていた男だった。
性懲りもなく、再び彼女に手を出した男に、リヒトは容赦なく斬り掛かる。
けれど、男も必死に逃れようとしているのか、リヒトの攻撃をかわした。そして、再び走り出そうとした。
……仕方ない。リヒトはいら立ち、手に持った〝剣〟を強く握った。
「〝剣〟よ、俺に力を!」
そして叫び、男の方へと向かって、〝剣〟を突き出すかのように振った。
次の瞬間、〝剣〟から衝撃波が放たれ、男に直撃した。
叫び声を上げ、なすすべもなく、地面に倒れ込んだ男に、リヒトは覆い被さり、〝剣〟をその目の前に向けた。
「……言ったよな? 『俺の〝ひめ〟に二度と手を出すな』って」
怒りを含んだ声でそう言い放ちながら、リヒトは男をにらみ付けた。
いよいよ追い込まれ、男も観念したのかしばらく黙り込んでいたが、突然、目を丸くすると「何処か」――虚空を見つめ出した。
「ひぃっ……! 助けてぇ! 助けてぇー!!」
そして、みっともなく泣き叫び出した男に、リヒトは思わず戸惑う。
もう二度と彼女に手を出さないと誓い、反省の色を見せるなら、男をそこまで傷付けるつもりはなかったのだ。けれど……――。
――けれど、男は「何か」に怯え切った表情をしている。では、一体「何」に……?
そこまで考え、リヒトはとっさに男から離れた。
男はそれでも、泣き叫びながら、地を這うように後ずさりしていた。
「どうか……! どうか、お許しください、ヴァイヅ様!!」
その名前を口にした瞬間、男に「雷」が襲い掛かった。
男が悲鳴を上げたかと思うと、その姿は黒い煙に覆われ、見えなくなる。
リヒトが巻き込まれないよう、距離を取るために、一瞬視線をそらした次の瞬間、男はこつ然と姿を消していた。
思わず、リヒトは身震いしてしまう。気配こそなかったが、「そこ」にはまだ【敵】の「気」が残っている。
――考えているよりもずっと、【敵】は強大かもしれない。リヒトは危機感を覚えながらも、何がなんでも彼女を守り抜く覚悟を決めたのだった。
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「ヒメさん!」
カナトと話していると、【敵】の術から解放されたハルト、エイト、タクトの三人が私のもとへと駆け寄ってきた。
「みんな!」
「ヒメさん、無事でしたか?」「うん、何とか」
真っ先にハルトに聞かれ、私は微笑んでみせる。けれど、ハルトは険しい顔をして、首をひねっていた。
そんなハルトの脇から、タクトが念のためか、私に癒しの魔法を唱えてくれていた。
「ありがとう、タクト。 そうだ、みんな聞いて。 私を助けてくれた人がいるの。 彼がカナト――『五人の騎士』の最後だよ」
私はそう話して、カナトの方を見る。
「……カナトだ、よろしく」
カナトは小さく頭を下げると、小さな声で短く自己紹介をする。
……さっきまでは私と話してくれていたのに。不思議に思っていると、唯一以前からカナトのことを知っていたタクトが合点したような顔で苦笑いした。
「あぁ、そういえば思い出した。 カナトって昔からすごく静かな性格だった気がする」
タクトの説明に、カナトは黙ったままうなずいてみせた。……そっか、私には少しだけ心を開いてくれていたのか。
そんなことをみんなで話していると、リヒトが戻ってきた。
「……ヒメ、無事か?」
私を心配してくれていたが、リヒトの顔は何か思い詰めているような気がした。そんな彼のことが気になりつつも、私はうなずいてみせた。
「うん、ありがとう。 ねぇ、リヒト、聞いて! ――ついに『五人の騎士』が揃ったんだよ!」
「本当か!?」
私がそう報告すると、リヒトは少しだけ表情を緩めた。でも……――。
「……でも、これからどうすればいいんだろうね?」
私がそう口にすると、みんなが肩透かしを喰らったような顔をした。
「あ、あのなぁ……」
呆れたようにリヒトがつぶやくが、私は本当に途方に暮れていた。
……これからどうしよう? そんなことを感じたその瞬間だった。
〈姫、私の声が聞こえますか?〉
――〈声〉がはっきりと聞こえたのだ。
私はすぐに、首飾りを取り出し、頭上へと掲げるのだった。
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「アイツめ、ただの役立たずだったワケか」
暗がりの中から、そんな言葉が聞こえてくる。
「……まぁいい。 アレも準備ができたことだ、オレが直々に動くとしよう」




