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✿ 15

 ……目の前で、ヒメが危険に(さら)されている。

 けれど、【敵】の姿が見当たらず、どうすることもできない。リヒトは不甲斐(ふがい)なく思いながら、何とかこの状況が好転するのを待った。

 彼女の首飾り(ペンダント)が輝いてから少し経った後、ようやく「その時」がやって来た。

 突然、彼女の姿が消えたかと思うと、閉じ込められていた異空間から解放された。どうやら、異空間の外にいた「誰か」が彼女のことを救い出してくれたようだった。

 乱暴に地面に投げ出されたが、リヒトはすぐに体勢を立て直しながら、〝剣〟を手に取り、狙い(・・)を定める。

 ――すぐに【敵】は見つかった。その場から逃げ出そうとしていたその【敵】は以前、彼女をさらおうとしていた(オトコ)だった。

 性懲(しょうこ)りもなく、再び彼女に手を出した(オトコ)に、リヒトは容赦(ようしゃ)なく()り掛かる。

 けれど、(オトコ)も必死に(のが)れようとしているのか、リヒトの攻撃をかわした。そして、再び走り出そうとした。

 ……仕方ない。リヒトはいら立ち、手に持った〝剣〟を強く握った。

「〝剣〟よ、俺に力を!」

 そして叫び、(オトコ)の方へと向かって、〝剣〟を突き出すかのように振った。

 次の瞬間、〝剣〟から衝撃波が放たれ、(オトコ)に直撃した。

 叫び声を上げ、なすすべもなく、地面に倒れ込んだ(オトコ)に、リヒトは(おお)(かぶ)さり、〝剣〟をその目の前に向けた。

「……言ったよな? 『俺の〝ひめ〟に二度と手を出すな』って」

 怒りを含んだ声でそう言い放ちながら、リヒトは(オトコ)をにらみ付けた。

 いよいよ追い込まれ、(オトコ)も観念したのかしばらく黙り込んでいたが、突然、目を丸くすると「何処(ドコ)か」――虚空を見つめ出した。

「ひぃっ……! 助けてぇ! 助けてぇー!!」

 そして、みっともなく泣き叫び出した(オトコ)に、リヒトは思わず戸惑(とまど)う。

 もう二度と彼女に手を出さないと(ちか)い、反省の色を見せるなら、(オトコ)をそこまで傷付けるつもりはなかったのだ。けれど……――。

 ――けれど、(オトコ)は「何か(・・)」に(おび)え切った表情をしている。では、一体「()」に……?

 そこまで考え、リヒトはとっさに(オトコ)から離れた。

 (オトコ)はそれでも、泣き叫びながら、地を()うように後ずさりしていた。

「どうか……! どうか、お許しください、ヴァイヅ(・・・・)様!!」

 その名前を口にした瞬間、(オトコ)に「(いかずち)」が(おそ)い掛かった。

 (オトコ)が悲鳴を上げたかと思うと、その姿は黒い煙に覆われ、見えなくなる。

 リヒトが巻き込まれないよう、距離を取るために、一瞬視線をそらした次の瞬間、(オトコ)はこつ然と姿を消していた。

 思わず、リヒトは身震いしてしまう。気配こそなかったが、「そこ(・・)」にはまだ【敵】の「()」が残っている。

 ――考えているよりもずっと、【敵】は強大かもしれない。リヒトは危機感を覚えながらも、何がなんでも彼女を守り抜く覚悟を決めたのだった。


    ✿


「ヒメさん!」

 カナトと話していると、【敵】の術から解放されたハルト、エイト、タクトの三人が私のもとへと()け寄ってきた。

「みんな!」

「ヒメさん、無事でしたか?」「うん、何とか」

 真っ先にハルトに聞かれ、私は微笑んで(わらって)みせる。けれど、ハルトは険しい顔をして、首をひねっていた。

 そんなハルトの脇から、タクトが念のためか、私に癒しの魔法を唱えてくれていた。

「ありがとう、タクト。 そうだ、みんな聞いて。 私を助けてくれた人がいるの。 彼がカナト――『五人の騎士』の最後だよ」

 私はそう話して、カナトの方を見る。

「……カナトだ、よろしく」

 カナトは小さく頭を下げると、小さな声で短く自己紹介をする。

 ……さっきまでは私と話してくれていたのに。不思議に思っていると、唯一以前からカナトのことを知っていたタクトが合点したような顔で苦笑いした。

「あぁ、そういえば思い出した。 カナトって昔からすごく静かな性格だった気がする」

 タクトの説明に、カナトは黙ったままうなずいてみせた。……そっか、私には少しだけ心を開いてくれていたのか。

 そんなことをみんなで話していると、リヒトが戻ってきた。

「……ヒメ、無事か?」

 私を心配してくれていたが、リヒトの顔は何か思い詰めているような気がした。そんな彼のことが気になりつつも、私はうなずいてみせた。

「うん、ありがとう。 ねぇ、リヒト、聞いて! ――ついに『五人の騎士』が(そろ)ったんだよ!」

「本当か!?」

 私がそう報告すると、リヒトは少しだけ表情を緩めた。でも……――。

「……でも、これからどうすればいいんだろうね?」

 私がそう口にすると、みんなが肩透かしを()らったような顔をした。

「あ、あのなぁ……」

 (あき)れたようにリヒトがつぶやくが、私は本当に途方に暮れていた。

 ……これからどうしよう? そんなことを感じたその瞬間(とき)だった。


〈姫、私の声が聞こえますか?〉


 ――〈声〉がはっきりと(・・・・・)聞こえたのだ。

 私はすぐに、首飾り(ペンダント)を取り出し、頭上へと(かか)げるのだった。


    ϟ


「アイツめ、ただの役立たずだったワケか」

 暗がりの中から、そんな言葉が聞こえてくる。

「……まぁいい。 アレ(・・)も準備ができたことだ、オレが直々に動くとしよう」

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