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✿ 13


 ――私以外にも守らなきゃいけない、大切な存在(ひと)を見つけて。


 そんな言葉を最後に、「彼女」がいなくなってからどのくらいの時間が経っただろうか。

 いまだその「答え」を見つけられず、行くあてもないまま、あちらこちらを彷徨(さまよ)っている。

 ……本当に、いつか、理解できる(わかる)のだろうか。

 そんな疑問を(いだ)きつつ、()はまた、どこともなく進み出す。



   ✿


「――つまり、タクトの村にもう一人、『五人の騎士』がいるってこと!?」

 私がその「答え」を口にすると、タクトも初めて、あっと驚いたように口を開く。

「そうなるけど、問題は今もそこにいるとは限らないってことだな」

 ……まあ、そんな簡単に見つかるわけないよね。リヒトのつぶやきに、私は少しがっかりしながらそんなことを思う。

「それに、仮にまだいたとしても、一体誰が『五人の騎士』なのか分かりませんしね」

 さらに、追い()ちをかけるように、リヒトがそんなことをつぶやく。それじゃあ、結局手がかりがないのとほとんど変わりないのか……。

 落胆(らくたん)していたが、ふと、タクトが何かを考え始める。少し経って、小さく「いや……」と声を()らした。

「ひょっとしたら、誰かは分かるかもしれません。 それに小さな村だったから、僕と同じぐらいの年の若者は少なかったですし、皆、顔見知りでしたから。 となると……」

 それだけ話すと、タクトはまた黙り込む。村にいた一人ひとりのことを思い出しているのだろう。

 思わず、私はタクトの顔をじっとのぞき込み、どきどきしながら彼を待つ。他のみんなも息を()らしている。

「……あ! たぶん、カナトだ! 村にいた時は気付かなかったけど、今……何となくわかった(・・・・)。  だけど、カナトは……村から出て、僕より先に旅に出て行ってしまっているな……」

 少しして、タクトがぱっと顔を上げ、心当たりがあるという人物(ひと)の名前を口にした。

 ……カナト。名前を聞いただけで、何か感じる「もの」があった。けれど、その人の行方は分からないという。それに、タクトのように、その人と繋がる手段もない。どうすればいいんだろう?

「このままここで悩んでても仕方ないな。 無駄かもしれないけど、タクトの村に行ってみるのも一つの手かもしれないな」

 途方に暮れていると、リヒトが明るくそう言ってみせた。

 元気付けようとしているのだと気付き、私は彼を振り返る。すると、目が合い、リヒトがいたずらっぽく微笑んで(わらって)みせた。

 ……そうだ、リヒトの言う通りだ。とりあえず前へ進むしかないのだ。彼にうなずいてみせると、笑顔を浮かべて立ち上がり、口を開いた。

「……よし! とりあえず、タクトの村の方へ行ってみようよ! 四人(そろ)ったんだもん、きっとすぐに見つかるよ! それじゃ、出発!」

 ハルトとエイトがお互い目配せして、うなずいてみせた。その後に続くように、カナトも「案内します」と深くうなずいたのだった。


    ϟ


「……それで? オマエは目標(あいつら)に情報だけ与えて、のこのこと帰ってきたと?」

 (こうべ)()れ、地面に突っ伏している(オトコ)に、冷たい言葉が降りかかる。

 肩をびくりと動かし、さらに頭を下げながら、(オトコ)は消え入るような声で応える。

「申し訳ありません……」

 返ってきたのはまたしても冷たい反応だった。(オトコ)の謝罪を受けいれるでもなく、頭上で(あるじ)が鼻を鳴らした。

「まあ、いい。 所詮(しょせん)、オマエなど、取るに足らぬモノ(・・)だったというだけだ。 だが、オレもそこまで無慈悲(むじひ)というワケでもない。 いいか? 今度こそ、目標(・・)を捕らえて来なければ、オマエの命はないと思え」

 有無(うむ)を言わせない主の命令(ことば)に、(オトコ)は更に頭を深く下げると、どこかへと姿を消した。

 その場に残された主はもう一度鼻を鳴らすと、背後へと顔を向けた。

「――教授」「はい、おそばに」

 彼の後ろから、どこからともなく返事がする。

 主は満足そうに口元を(ゆる)めると、口を開いた。

「教授、どうせアイツは道化(・・)で使えん。 じきにオレが動かねばなるまい。 そこで、だ。 お前の自信作(・・・)は準備できているか?」

「えぇ、えぇ、もちろんですとも」

 その答えを聞いて、主はさらに愉快そうに笑い声をあげ、深々と「玉座(・・)」につくのだった。


    ✿


 それから、一日掛けて、タクトの村に到着したが、残念な結果に終わった。

「カナトですか……。 タクトから聞いているかとは思いますが、もうすでに村を出ておりますし、残念ながらどこへ向かったかも分かりません。 なにせ、カナトが旅から出た時は、それはもうひどい状態でしたから」

 長老から話を聞いたところ、そんな答えが返ってきて、結局何もわからずじまいだった。

 だけど、一つ気になっていることがある。――長老はカナトのことを「ひどい状態(・・・・・)」だと話していたのだ。

 ……何があったのだろうか。まだ()ったこともなかったけれど、私はすごく心配だった。――力になれるなら、力になりたい。

 タクトの村を出て、行くあてもなく、私は出発したのだが、みんなはとても残念そうな表情(かお)を浮かべていた。

 私はいったん、みんなを(はげ)まそうとした。

 ――その時だった。

 ぐらり、と周りの景色が(ゆが)んだ。

『!?』

 一瞬にして、何もない異空間へと閉じ込められたのが理解できた(わかった)

 すぐさま、リヒト・エイト・タクトが武器を構え、ハルトが私のすぐ側に駆け寄ってきた。

「ヒメは馬車の中に」

 リヒトにそう言われ、私はすぐに動こうとしたが、なぜか身体がピンと張って、その場に倒れ込んでしまった。

「……ヒメさん?」

 ハルトに声を掛けられるが、声も出ない。

 応えようと必死にもがくが、頭が割れそうに痛み、激しい耳鳴りも聞こえ始める。

「う……あ!!」「ヒメさん!?」

 思わず声を上げ、頭を(かか)える。

 ……何か、聞こえる。ただの耳鳴りじゃ、ない……。


【――オルフィーメリア姫。 アナタは我が主のモノ(・・)

【――その手も、足も、心も、全て、主の所有物(・・・)。 よってその身を差し出しなさい】


 ……いやだ。

 どこかで聞いたことのある【声】が私にささやきかける。


【――アナタの意志など関係ない。 従わねねば、力ずくで従わせるまで】


 次の瞬間、私の身体がひとりでに浮き上がり、弓なりにそり返った。

「ヒメ!?」「ヒメさん!?」

 私の異変に、みんなが驚いて声を上げるが、私を狙う肝心(かんじん)の【敵】の姿が見えず、どうしようもできずにいる。

 私も抵抗しようとするが、何もできず、なすがままにされている。

 そうしているうちに、身体に違和感を覚えた。……何か、身体の隅々まで、得体(えたい)のしれない【力】を注ぎ込まれている。――まるで、その【力】を糸のかわりにして、私を「操り人形(・・・・)」にでも変えようとしているようだ。

 ……だけど、このまま黙っているわけにもいかない。私は全身の力をふり(しぼ)り、胸元の首飾り(ペンダント)へと手を伸ばす。

 私の抵抗にいち早く気付いたリヒトが急いで、それをつかんで私の手に握らせてくれた。

(助けて。 ――お願い、助けて!!)

 その瞬間、私は心の中で叫んだ。

 私の叫びに応えるかのように、首飾り(ペンダント)はキラリと光り輝いたのだった。

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