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――私以外にも守らなきゃいけない、大切な存在を見つけて。
そんな言葉を最後に、「彼女」がいなくなってからどのくらいの時間が経っただろうか。
いまだその「答え」を見つけられず、行くあてもないまま、あちらこちらを彷徨っている。
……本当に、いつか、理解できるのだろうか。
そんな疑問を抱きつつ、彼はまた、どこともなく進み出す。
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「――つまり、タクトの村にもう一人、『五人の騎士』がいるってこと!?」
私がその「答え」を口にすると、タクトも初めて、あっと驚いたように口を開く。
「そうなるけど、問題は今もそこにいるとは限らないってことだな」
……まあ、そんな簡単に見つかるわけないよね。リヒトのつぶやきに、私は少しがっかりしながらそんなことを思う。
「それに、仮にまだいたとしても、一体誰が『五人の騎士』なのか分かりませんしね」
さらに、追い討ちをかけるように、リヒトがそんなことをつぶやく。それじゃあ、結局手がかりがないのとほとんど変わりないのか……。
落胆していたが、ふと、タクトが何かを考え始める。少し経って、小さく「いや……」と声を漏らした。
「ひょっとしたら、誰かは分かるかもしれません。 それに小さな村だったから、僕と同じぐらいの年の若者は少なかったですし、皆、顔見知りでしたから。 となると……」
それだけ話すと、タクトはまた黙り込む。村にいた一人ひとりのことを思い出しているのだろう。
思わず、私はタクトの顔をじっとのぞき込み、どきどきしながら彼を待つ。他のみんなも息を凝らしている。
「……あ! たぶん、カナトだ! 村にいた時は気付かなかったけど、今……何となくわかった。 だけど、カナトは……村から出て、僕より先に旅に出て行ってしまっているな……」
少しして、タクトがぱっと顔を上げ、心当たりがあるという人物の名前を口にした。
……カナト。名前を聞いただけで、何か感じる「もの」があった。けれど、その人の行方は分からないという。それに、タクトのように、その人と繋がる手段もない。どうすればいいんだろう?
「このままここで悩んでても仕方ないな。 無駄かもしれないけど、タクトの村に行ってみるのも一つの手かもしれないな」
途方に暮れていると、リヒトが明るくそう言ってみせた。
元気付けようとしているのだと気付き、私は彼を振り返る。すると、目が合い、リヒトがいたずらっぽく微笑んでみせた。
……そうだ、リヒトの言う通りだ。とりあえず前へ進むしかないのだ。彼にうなずいてみせると、笑顔を浮かべて立ち上がり、口を開いた。
「……よし! とりあえず、タクトの村の方へ行ってみようよ! 四人揃ったんだもん、きっとすぐに見つかるよ! それじゃ、出発!」
ハルトとエイトがお互い目配せして、うなずいてみせた。その後に続くように、カナトも「案内します」と深くうなずいたのだった。
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「……それで? オマエは目標に情報だけ与えて、のこのこと帰ってきたと?」
頭を垂れ、地面に突っ伏している男に、冷たい言葉が降りかかる。
肩をびくりと動かし、さらに頭を下げながら、男は消え入るような声で応える。
「申し訳ありません……」
返ってきたのはまたしても冷たい反応だった。男の謝罪を受けいれるでもなく、頭上で主が鼻を鳴らした。
「まあ、いい。 所詮、オマエなど、取るに足らぬモノだったというだけだ。 だが、オレもそこまで無慈悲というワケでもない。 いいか? 今度こそ、目標を捕らえて来なければ、オマエの命はないと思え」
有無を言わせない主の命令に、男は更に頭を深く下げると、どこかへと姿を消した。
その場に残された主はもう一度鼻を鳴らすと、背後へと顔を向けた。
「――教授」「はい、おそばに」
彼の後ろから、どこからともなく返事がする。
主は満足そうに口元を緩めると、口を開いた。
「教授、どうせアイツは道化で使えん。 じきにオレが動かねばなるまい。 そこで、だ。 お前の自信作は準備できているか?」
「えぇ、えぇ、もちろんですとも」
その答えを聞いて、主はさらに愉快そうに笑い声をあげ、深々と「玉座」につくのだった。
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それから、一日掛けて、タクトの村に到着したが、残念な結果に終わった。
「カナトですか……。 タクトから聞いているかとは思いますが、もうすでに村を出ておりますし、残念ながらどこへ向かったかも分かりません。 なにせ、カナトが旅から出た時は、それはもうひどい状態でしたから」
長老から話を聞いたところ、そんな答えが返ってきて、結局何もわからずじまいだった。
だけど、一つ気になっていることがある。――長老はカナトのことを「ひどい状態」だと話していたのだ。
……何があったのだろうか。まだ逢ったこともなかったけれど、私はすごく心配だった。――力になれるなら、力になりたい。
タクトの村を出て、行くあてもなく、私は出発したのだが、みんなはとても残念そうな表情を浮かべていた。
私はいったん、みんなを励まそうとした。
――その時だった。
ぐらり、と周りの景色が歪んだ。
『!?』
一瞬にして、何もない異空間へと閉じ込められたのが理解できた。
すぐさま、リヒト・エイト・タクトが武器を構え、ハルトが私のすぐ側に駆け寄ってきた。
「ヒメは馬車の中に」
リヒトにそう言われ、私はすぐに動こうとしたが、なぜか身体がピンと張って、その場に倒れ込んでしまった。
「……ヒメさん?」
ハルトに声を掛けられるが、声も出ない。
応えようと必死にもがくが、頭が割れそうに痛み、激しい耳鳴りも聞こえ始める。
「う……あ!!」「ヒメさん!?」
思わず声を上げ、頭を抱える。
……何か、聞こえる。ただの耳鳴りじゃ、ない……。
【――オルフィーメリア姫。 アナタは我が主のモノ】
【――その手も、足も、心も、全て、主の所有物。 よってその身を差し出しなさい】
……いやだ。
どこかで聞いたことのある【声】が私にささやきかける。
【――アナタの意志など関係ない。 従わねねば、力ずくで従わせるまで】
次の瞬間、私の身体がひとりでに浮き上がり、弓なりにそり返った。
「ヒメ!?」「ヒメさん!?」
私の異変に、みんなが驚いて声を上げるが、私を狙う肝心の【敵】の姿が見えず、どうしようもできずにいる。
私も抵抗しようとするが、何もできず、なすがままにされている。
そうしているうちに、身体に違和感を覚えた。……何か、身体の隅々まで、得体のしれない【力】を注ぎ込まれている。――まるで、その【力】を糸のかわりにして、私を「操り人形」にでも変えようとしているようだ。
……だけど、このまま黙っているわけにもいかない。私は全身の力をふり絞り、胸元の首飾りへと手を伸ばす。
私の抵抗にいち早く気付いたリヒトが急いで、それをつかんで私の手に握らせてくれた。
(助けて。 ――お願い、助けて!!)
その瞬間、私は心の中で叫んだ。
私の叫びに応えるかのように、首飾りはキラリと光り輝いたのだった。




