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13:子守歌

 こんにちは、アストです。


 前には女の勇者が五人。


 いや、ただの少女が五人。


「さて、どうしてやりましょうか?」


 独り言ではない。


 僕の隣。


 一面黒の床、泡沫は激しく。


 湧き立つ泡は昇り人の形を作り上げる。


「そうですね・・・・・・・・・・・・」


 それは王女の姿に。


 足下から全てを吸い上げるように地面の黒がその体に収まっていく。


「クロエはどうしたらいいと思う?」


 割れた天井、そこからクロエが舞い降り王女の隣へ足をつけた。


 国を呑み込んでいた黒い海が引いていったのが合図となった。


「できるだけ長く、長く、苦しめてやるのがよろしいかと。そして・・・・・・」


 クロエの提案。


「まぁ、それはいい考えだわ」


 処置は決まった。


「では、とりあえず動きを止めますか」


 女達はまだ魔法を出そうと必死に唱えていた。


 城の中だけはまだ王女の領域とはいえ今は大分縮小されている。


 さっさと範囲外まで逃げればまだ助かったかもしれないが。


「っ!」


 五人の少女。


 十本の足。


 膝から下を一閃。


 切られた事にも気付かないまま。


 支えを無くした体は崩れる。


「あ、ああ、ああぎゃああああああああああああああああああ」


 顔を地ベタに横にして。


 女達は初めて悲鳴を上げた。


 這いずり暴れる女達を見下ろして。


「それにしてもテストリア様の力は凄まじい。自らを世界に変え、異物から力を奪い、住まう者にそれらを還元する、まさに王に相応しいお力です」


 力の根源は恨み。


 同族達のそれを一身に背負っている。 


「それはそうよ、なんせあの日から毎日、毎晩、何年も、これまで欠かさず私が耳元で囁いているのですもの。獣人は耳、尻尾を切られ人間の真似事をさせられ、魚人は活け作り、リザードは皮を剥ぎ取られ、逃げ遅れ捕まった者のほとんどが家畜か愛玩道具、人間共のいいように使われ、そして死んでいった。それもこれもあの日勇者が現れてから、この世界を何も知らない力だけ持った無能共が大人達に言われるまま、行動の全てを善とし、なんの疑いもなく、同胞達は、切られ、焼かれ、突かれ、様々な色の血は流れ、首輪、鎖、鞭、体は痣、切り傷、絶え間なく、笑って、はしゃいで、尊厳、誇りすら奴らは奪っていく、共存していた、表向きにはそれでも平和だった、でもそれは突然血と涙の日常に様変わり、一緒に楽しく毎日隣に、お祖母様も、父も母、も姉も、友人もみんないなくなっちゃった。簡単に殺すのよ、助けてって、止めてっていっても、誰も聞かない、むしろそれを聞きたかったような顔をして、声が聞こえるの、みんな許して、自分はいいからって、私は逃げたの、なにもできなくて、皆が助けてくれたの、それってこういう事でしょ、だから今私はここにいて、王女の傍で、みんな言ってるわ、残された私はやらなくてはならない、耳から離れない、脳を駆け巡る、あの絹を裂く声、あまりの光景に、私は空から自分を見てるの、上からまるで自分には関係ない出来事のように、どんどん近づいてくる、もう一人の自分に、迫ってくる、どんどん、どんどん・・・・・・」


「もう、いいです、クロエ」


 頭を押さえるクロエの腕を取る。


「女王様はお優しい方だった、どの種族分け隔て無く接し、それは人種にも同様で、いつも考えていた、どうすればもっと皆が、どうやれば皆が、いつもいつも自分より他者を優先して、私の悩み、相談、なんであの方が、どうして、おかしい、王女が生まれ、私は誓った、今はもっと、だから教えるの、女王がいかに素晴らしい方だったかを、貴方の母親がどんなに偉大だったのかを、その母がどんな最後をむかえたかを、毎日毎日、私自身深くもっと深く刻む、刻んで刻んで、呪うの、恨むの、もっともっと、花を愛でていたわ、リンネと同じように、だから話はあったんじゃないかしら、仲良くなれたと思うの、残念、貴方はそっち側だったから、もっと早くこっちに来てくれてたらまた違ってたかもしれない、でももう遅い、もうこの世にあの方はいない、もう話せない、残念、合わせたかったわ、きっと盛り上がったと思うの、話はつきず、仲良くできたと思うの、花を愛でいたから、あの方は、いつも自分で水を与えて、日々成長を楽しみに、それは王女が生まれてからも同じように、全てに愛を、花、そう、花を愛でていたの、あの方は、だからリンネともきっと話が合うわ、なんでその時出会ってなかったのかしら、それなら貴方はきっとこっちについてくれたから、もしかしたらまた違った未来があったかも、隣にまだ女王様がいたかもしれない、そうよ、それなら私はまだ幸せだった、王女様も母親の温もり、あの深い優しさを、だって凄くお優しい、そう花を愛でていた、庭園があったの、そういえば、この国にもあった、リンネに言われてたからそこだけは攻撃しなかったわ、だから残ってるはず、できるだけ持ち帰りましょう、そうすれば私も思い出すわ、あの時と同じようにして欲しいの、花に囲まれる、でもそこには女王はいないけど、でも思い出すの、香りがそうさせてくれるわ、吸い込む度・・・・・・」


「もう分かりました、そろそろ勇者達に制裁を」


 テストリア様は、こんな調子で毎晩子守歌のように耳元で囁かれてたのか。


「そうね、早くやりましょう。こいつらは五属性の魔法を使ってたわ。私も勇者達ほどではないけど魔法は得意だから任せて」


 

 クロエが考えた勇者への処置。


 煙が上がり、瓦礫に塗れた、国の中心部。


 氷の杭。


 炎の杭。


 風の杭。


 土の杭。


 雷の杭。


 肩の付け根、太股の付け根から両腕、両足をもがれた勇者達が。


 それぞれの長い杭に差し込まれていた。


 晒されるように。


 下から串刺し。


 重力と自重で、体はすこしずつ地面に近づいていく。


「あ、あ、あ、あ」


 真っ青な女、氷の杭が食い込む度、内部から凍りついていく。徐々に徐々に。


 真っ赤な女、炎の杭が食い込む度、内部から焼かれていく。ゆっくり、ゆっくり。


 真っ青な女、風の杭が食い込む度、内部から回転する小さな風に切り裂かれる。僅かに僅かに。


 真っ赤な女、土の杭が食い込む度、内部から土の枝が肉に根を張る、食い破る、少しずつ、少しずつ。


 真っ黒な女、雷の杭が食い込む度、内部から電気が駆け巡る、一人だけ激しく痙攣、じっくり、じっくり。


 それを見上げながら。


「う~ん、壮観ですね」


 フードを取った僕ら。


 勇者の一人がそこにリンネの姿を見る。


「・・・・・・り、凜廻、た、たす・・・・・・」


 今まで必要としなかったリンネの回復魔法(と思ってる)、今は喉から杭が出るほど欲してるだろう。


 でも、そのリンネは。


 その光景に目を輝かせて。


「いつも言ってたじゃないですか、綺麗になりたい、綺麗になりたい、もっと綺麗に、可愛くなりたいって、今の貴方達、とても、綺麗ですよぉ」


 うっとりと見とれていた。


「とりあえず、このままこの子達はここに放置。これで皆が疑心暗鬼を始める」

 

 勇者をやったのは勇者と考える。


 同盟状態であるアリメストス側はこちらの仕業と思うだろう。


 だが、実際、一国の勇者が揃っていてもこんな芸当はできない。


 となると別の国と繋がってるかと。


 それは他の国も同じ、この件はクロスレインを挟み込んでいるうちとアリメストスが手を組んで行ったと考えるのが妥当。


 しかし、そこで別の可能性。


 国家間ではなく、勇者達が結託しての反逆。


 この噂を同時に吹聴することで国だけではなく勇者達も困惑する。


勇者が全員揃っている国が簡単に滅ぼされたのだ。


 様々な考えを張り巡らせるだろうが。


 そこに僕達の存在はない。


 残り勇者。


 24人。

 よろしくお願いします。

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