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14:塗りつぶされる白

 こんにちは、アストです。


今、僕達は。


 基本的に六つの国は隣国とは歴史的に深い怨恨が根付いている。


 さらに自国の勇者達ですら信用できなくなると。


 もうどこも積極的には動かない。


 それは勇者も同じ。


 勇者を失うのが怖い。


 勇者達は自分の命が惜しい。



 黒い波がアリメストスの大地を襲う。


 雪の降る、白い街、白い城。


 黒く、黒く。


 紅黒コート、フードを僕達は目深にかぶり。


 空では雪のかわりに虹が降る。


 大地で雪のかわりに死体が積もる。


 クロスレインの時と同じ。


 とにかく殺す。


 ここの勇者達は五人。


 一人は以前ヴェパが仕留めた。


 そのヴェパが黒い海に潜り泳ぐ。


 王女の体は大地や海に。


 奥へ奥へと。


 僕らを乗せていざ進まん。


 人の死体は黒い地面に吸い込まれていく。


 それは王女の核たる部分に吸収されるとそこで魔力として変換され僕らの元へ送られる。


 人一人の変換量など微々たるもの。


 それでもこれだけ殺せば。


 それなりにはなる。


 事実、空ではクロエが高出力の魔力を絶え間なく撃ち続けているし。


 ヴェパも王女の体の中で泳ぐ方が速い、そして心地が良さそう。


 サブノに至っては動きが見えない。


 人間共は。

 

 上から降り注ぐ魔法に体がかき消されるか。


地中から飛び出た牙に体を食い散らかされるか。


 知らない間に体が切り刻まれているか。


 それとも。


「そ~れ」


 駒のようにギュルギュル回転しながら右へ左へ前へ前へ。


 まるで紙。


 力を込めれば破れ。


 少しの炎で燃えさかり。

 

 そんな種族に。


 僕達は滅ぼされかけたのか。


 殺す度悔しさが増す。


 殺す度怒りがこみ上がる。


 やはり全ての元凶は勇者。


 あいつらさえ来なければ危ういながらも均衡はとれていたのだ。


 勇者。


 勇者。


 勇者。


 今回は逃げられる可能性がある。


 なので根回しする必要があった。


 あの老齢の騎士。


 あの者はとても優秀で。


 そしてとても愚かであった。


「ここの勇者の能力は・・・・・・」


 勿論事前に事細かく調べてはいたが。


「まぁ、それもそれほど意味はなさない」


 もう王女が国を呑み込んでいる。


 となれば。


 ここで。


「おりゃあああああああああああああああああああ」


 人間の一人が剣で斬りかかってきた。


 避けるまでもなく。


 それを体で受けると。


 剣は折れ、空へと半分飛び去った。


「え、え、なんで・・・・・・」


 あれ、もしかして。


 すかさずその人間の腕を取る。


 少しだけ力を込めた。


「うがやあああああああああああああああああああああ」


 粘土のように潰れる肉。


 掴んだままその体を地面に叩き付ける。


 骨や内臓が粉々に。


「リンネ」


 同時に僕につかず離れずのリンネに声をかけ。


 その人間の体は数秒前へと同じ姿に。


「あ~、これはこれは勇者様でしたか」


 あまりの遅さ。


 あまりの非力さに、僕はただの人間だと思い違いをしていた。


 その斬撃は岩を裂き、飛べば空高く飛翔し、その身はどんな攻撃も弾く。


 勇者の基本。


 そこに個別の能力が加わるのだが。


「リンネ」


 今度は事を起こす前に叫んだ。


 軽く蹴りつける。


 勇者の体が勢いよく吹っ飛ぶ。


 瓦礫の中へ吸い込まれるように。


 絶妙な判断、勇者の体が押し潰されると同時に巻戻る。


 春来たりて地面から這い出る小動物のように。


 勇者もまた必死であった。


 それはまた別の場所でも。


「なぜだ、なぜ、体が思うように動かないっ!」


 どこから現れるか分からない恐怖。


 足下、背後から飛び出ては、少しずつ肉を食い千切る。


 どこからという認識すらなく。


 体中から勝手に血が吹き上げる。


 それは見上げる空から。


 細い細い光。


 いくつも体を貫いて。


 体は無意識に踊り出す。


「リンネ~」


「リンネっ」


「リンネ」


 その度、彼女の名は呼ばれ。


「はい・・・・・・・・・・・・はい」


 彼女はそれに応える。


 集中する。


 殺さないように。


 誰も。


 今は。

 う~ん。

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