12:恨み辛み
こんにちは、アストです。
隣国クロスレインに乗り込んだ僕達は。
破壊に、虐殺を繰り返しながら城内部へ。
そこでやっと出てきました。
女の勇者が三人。
いや・・・・・・。
「三人ともちょっと待って」
後ろからもう二人。
また勇者。
女がさらに増え。
これでここの勇者達が全員揃った。
「ユキエ、なんで止めるの?」
「こいつら、うちらの国無茶苦茶にしたんだよ?」
「あ~あ、お気に入りの人形全部壊れされちゃった」
ここの勇者達の振る舞いは僕達の住む隣国まで耳に入っていた。
とにかく彼女達の浪費は激しく。
当然、国の財政は圧迫、僕達が手を下さなくても近いうちにこの国は崩壊していたでしょう。
他にも。
少しでも気に入らないと執事、メイドは丸焦げに。
逆に気に入った者は氷漬け、人形として飾っていたり。
「なんで止めるのって、そいつら顔は隠してるけど勇者の誰かでしょ。じゃなきゃこんな真似できるわけないし」
まぁ、普通に考えればそう思うよね。
「一体、誰かしら、尼鷺たちじゃないだろうから、佐藤、高杉の所か・・・・・・でも、こんな背の小さい奴いたっけ?」
会話の最中も、外ではクロエが辺り一面火の海に変えている。
「まぁどうでもいいわ、いづれにせよこの国はもう終わり。なら私達他の国に移籍しようと思うのだけど、貴方達はどこの国の回し者?」
「僕達ですか?」
地面の肉片。
氷の肉片。
炎に焼かれた肉片。
切り刻まれた肉片。
帰っていく。
僕の元へ。
完全に腕の形を取り戻し。
「魔族の国ですよ」
その言葉が口火となった。
振る、刃、横薙ぎ一直線。
前にいる三人の女の首。
だが防がれる。
氷の壁。
それを死角に。
今度は火球。
いくつもの炎の塊。
僕はこの場から動けない。
後ろにはリンネがいるから。
可能な限りギロチン刀の腹で打ち返す。
舞い戻る火は真っ二つ。
相手の風がそれを切り裂く。
前方、三人の女、火、氷、風の属性魔法習得者。
地面から尖った石。
逃げ場ないよう突き上げてくる。
瞬時に反応、刃に足をのせ、岩の波を乗り越える。
同時に距離を詰めるも。
雷撃。
これは刃では防ぎきれなかった。
天より落ちた雷は僕の全身を撃つ。
電流が走り、皮膚は黒づんだ。
だが、黒ずみも、浮かぶ水疱、焼けただれた皮膚も無かったように戻る。
先の三つに加えて、土と雷。
一度に五属性も相手にしなくてはならない。
全員が最上位クラスの魔法を使用する。
本来なら全てに対処する事は不可能。
しかし、これは元々リンネの情報で知っていた事。
ならば僕がここに今立つ意味。
「ぐぁっ」
痛みは絶え間なく続く。
同時に放たれる魔法。
一つ凌いでも、次々襲いかかってくる。
体の一部。
炎に焼かれ、岩に貫かれ、凍らされ、切り裂かれ、痙攣する。
その都度、体は万全に戻るが。
それでも精神は削られていく。
気は抜けない。
一瞬たりとも。
生だけは取り戻せない。
死だけには抗えない。
立て続けに全ての攻撃をこの身に受ければ。
さすがに一時的に強化を終えたこの体でも持ちはすまい。
「なに、こいつっ!」
「全然死なないんだけどっ!」
感覚的にはあちらには無傷に見えている。
なので焦る。
力を使う度その根源は確実に消費しているはず。
それがどれほど埋蔵されているかは。
本人すら知らない。
使う機会も試すという知恵も無かったからだろう。
勇者のそれは無尽蔵に近かったが。
彼女達がそれを知るよしはなく。
ただ一人一人が無計画で撃ち放っているだけ。
魔法の特性を生かし、五人が連携をすればまだ勝機はあった。
それに気付く事もないまま。
時間切れ。
「っ!?」
「えっ!」
「なんでっ!?」
女共が叫ぶ。
念じ命じた力は出ない。
蝋燭の火、舞い散る結晶、そよ風、石ころ、静かな電圧。
夢中だった。
お互いに。
だから、僕も今気付く。
地面は黒く。
ヘドロのように。
泡がブクブク湧いては消えて。
やっとここまで浸食が追いついた。
「少し張り切りすぎて途中で置いていってしまってたんですよね」
国の大地が塗りつぶされていく。
真っ黒に。
それは王女の怨念。
これでもう構える必要もなくなりました。
「貴方達はもう・・・・・・」
あぁ、痛かったですねぇ。
「ただの女の子です」
どうしてくれようか。




