11:虐殺
こんにちは、アストです。
隣国クロスレインに攻め込む事にしました。
なんだか軽い感じに言いましたが。
ここまでにはかなりの根回しが必要でした。
我が軍は遙か後方。
こちらに着く頃には何もかも終わっているだろう。
赤と黒の全身を覆う長いコート。
全員が深くフードをかぶる。
この場には四人。
他は違う場所に。
ヴェパは海方を。
サブノは森側を。
北はアリメトリスが。
そして南は僕達が。
もう逃げ場はない。
逃げ場はないぞ、人間、勇者。
「アスト、これから行う事は我々が勇者、そして人間達にされた事と同じです」
王女テストリア様が呟く。
「復讐とは空しく、そしてそれは負の連鎖を引き起こします」
殺し、殺され、殺し、殺され、憎み、憎まれ。
「テストリア様のいう通りでございます」
まさにこれから攻め入る間際の出来事。
「・・・・・・テストリア様の意志が全てでございます。侵攻を取りやめますか?」
王女様はお優しい。
でもそれは。
「復讐は空しい、でも私から母の温もり、幸せな未来、全部奪った人間、勇者に報いを。負の連鎖は続く者がいて初めて成立するもの。なら遺恨無きよう私達の番で終わらせましょう」
手を向ける。
その先には隣国クロスレイン。
「次期女王の名の下に貴方達に命じます」
王女の足下からジワジワと広がる、黒い染み。
ゆっくりと前へ。
眼前にはクロスレイン。
高い城壁に囲まれた城下町。
その上に城。
「殺して、殺して、根絶やしに、勇者も人間も殺せ、殺しなさい」
「御意に」「御意に」「御意に」
王女様はお優しい。
でもそれは。
同族と。
一部の協力者のみ。
紅き衣を纏い。
僕達は走り出す。
王女からわき出る影に足をつけ。
それと一緒に駆けていく。
南門。
兵士数人。
無言でギロチン刀を振る。
兵士は一瞬で肉片。
クロエの魔法。
城壁を派手でぶち壊す。
足は止めない。
王女の支援影を踏みながら。
そのまま敷地内へ。
僕は刃を縦横無尽に振り続ける。
回って、走って。
王女の影、地を這い街へとなだれ込む。
クロエは上空、住居の屋根を足場に。
そこからさらに高く、空へ。
クロエの背中。
魔法園、いくつも出して。
そこから七色の光。
浴びる、人、建物、皆破壊。
瓦礫、死体、一瞬で作り上げていく。
光の線はクロエの意志であらゆる方向へ。
それぞれ属性を持つ。
直線の虹。
それを背に僕とリンネはまだ止まらない。
刃を地面に叩いて、割って。
裂けて、砕けて、人は血を撒き散らしながら倒れていく。
煙が血が、炎が、悲鳴が上がる、上がる。
勝手に上がる。
これは厄災。
されど人災。
原因は人間。
元を辿れば因果応報。
道を歩いていた人間、自慢の品を売り込もうと大声で客引きをしていた人間、洗濯をしていた人間、食事をしていた人間、まだ寝ていた人間、子に乳を与えていた人間、友人に夢を語っていた人間。
もう何もかも。
全部。
纏めて。
目につく者には死を。
長年かけて作り上げられてきた町並は塵に。
騒ぎを聞きつけ。
異常を察して。
中央城門から兵士がワラワラ湧いてくる。
蜂の巣を叩いたように。
鎧を軋ませ、武器を構えて。
でも消える。
僕達はその波を裂く。
ギロチン刀の前に鎧などなんの意味もなさない。
ただ切断。
鎧ごと中身が切れる。
骨が肉が。
内臓をぶちまけ。
倒れ。
あるいは空を舞い。
壁にすらならず。
足止めにすらならず。
ただ死ぬために出てきた兵士達を。
踏みつけ、僕らは城内へ。
その間、刃を振るうことはやめない。
美麗な装飾品も、貴重な石で出来た柱も、見事な彫刻も。
どんどん崩しながら。
それでも僕らは疾走する。
城外ではクロエが。
城内では僕が。
どんどん殺し破壊し。
早く。
早くと。
待ちわびる。
この国の勇者は六人。
その内リンネが抜けたので。
今は五人。
さぁ、こい。
じゃなきゃ無くなるぞ。
見えるか。
住人が。
建物が。
城さえも。
刃を振るたび、形は変わる。
大層な絵が書かれていた天井、それを木っ端微塵に崩しながら大岩が侵入。
轟音と共にそれがいくつも落ちてくる。
穴はボコボコ、光が漏れる。
外、空からクロエが巨大な岩で無差別に攻撃していた。
瓦礫に押し潰される人間共。
炎にまかれ燃えさかる人間ども。
両腕を合わせる、二刀の刃を一つに。
天に翳し。
ありったけの力を込めて。
振り落とす。
この国の象徴。
クロスレイン城が真っ二つに裂かれた。
一面の空が見える。
城内なのに。
広がる青、そして白い雲。
それを立ち上る黒い煙が濁そうとしていた。
「っ!」
その瞬間はついに訪れた。
僕の片腕に感覚が消える。
目を移すとキラキラ輝きながらそれは凍っていた。
程なく逆の腕が燃えさかる。
そしてその両腕とも、細かくバラバラになると地面に音を立てて落ちた。
床には燃える肉片、凍った肉片。
「あぁ、やっと出てきましたかぁ」
目を細める。
両腕を無くした僕が前を見据え。
そこには3人の女。
この国の勇者。




