38 古式
【38】
「「極大魔法」」
双方の声が静寂を打ち破ると共に、ザラチェンコの足許の地面を突き破って、巨大な何かが姿を顕す。
蛇だ。岩盤より削り出されし岩の大蛇。ザラチェンコの使役する〈従者〉。
それも、一匹ではない。ザラチェンコの佇立する周囲一帯の地面から、高々と噴き出す間歇泉のように岩の大蛇が、その大群が、続々と飛び出してくる。
天を駆け上がるかの勢いで飛び上がった大蛇の群れは、その勢いのままに中空で烈しくぶつかり合う。岩の体躯が擦れる音が轟然と響く。体表より剥がれ落ちた砂礫が霰のように降り注ぐ。大蛇の大群は交尾をするように絡まり、交わり、糾われ、更なる大蛇の大群を迎え入れながら絡まり、交わり、糾われ──その果てに、大蛇の集合体は、巍然と鎌頸を擡げる。
巨岩を連ねた鱗。高々と突き出した岩尖を逆さにしたかのような一対の毒牙。大地に生じた深淵を思わせる地隙の大口。
岩の大蛇の集合体が象るのは、さらに巨大で、より嶢々しい、巍巍たる一匹の巨蛇。
極大魔法〈世界を喰らう者〉。
数十、数百──厖大な数の従者を一挙に召喚し、土を捏ね上げるように丹念に纏め上げ、一体の強力無比なゴーレムとして使役する、石化魔法の極北とも云うべき極大魔法。
巍巍たる巨蛇は灰白の双眸に妖しい光を湛え、眼下に佇む矮小な聖騎士の人影を凝視する。その様は、まさしく獲物を前に臨戦態勢に突入した冷酷な一匹の爬虫類。穴が空くほど、巨蛇は聖騎士の姿を睨みつける。
だが、同時に聖騎士もまた、眼前に聳時する蛇を、酷薄な眼差しで睨んでいる。
山岳に見紛うゴーレムと相対し、それでも尚、アルトリウスの眸は完璧に凪いだ水鏡のような静謐を湛えている。怯えや動揺はない。神の騎士に弱さなど不要。洗練された剣技と聖なる魔法の術腕を以て神に敵する者を、血の一滴さえ残さず討滅する。それこそが聖騎士アルトリウス・ル・アクエスに課せられた使命、絶対的な神勅。
突き出すように構えた大剣を、アルトリウスは背へと戻す。
聖なる気が、聖騎士の周囲に薄靄のように立ち籠める。
白銀の手甲に包まれた左掌に、清冽な光が生じる。
掌の中心に生まれた光はすぐさま光量を増し、幾条もの光芒となって掌から迸り、周囲一帯に眩い魔力粒子を振りまく。
ゆっくりと、アルトリウスは左腕を前方へと持ち上げる。
途端、一際鮮烈な耀きが左掌で炸裂し──すぐさま光は収縮、残光に揺らいだ聖騎士の左掌は、一張の弓を握っている。
嘗てこれ程までに優れた弓がこの世界に存在しただろうか、そう思わせる程に美事な、至高の逸品をアルトリウスは手にしている。弓幹は穢れのない純白に照り耀き、全面に鷲の羽根──天使、ひいては神の象徴たる翼──の意匠が精妙巧緻に彫刻されている。弓柄は持ち重りのしそうな重厚な造りであり、しかし弓弭に向かうに従ってその造りは玄妙に細まり、朏の如き優美な曲線を描きながら繊細に撓う。張り渡された絃は冬の夜明けのようにピシリと張り詰め、星影のように燦めくその絃は、聖騎士の美髪を思わせる透き通るような天上の銀糸。荘厳華麗にして皎皎冽冽。聖騎士の魔力の結晶。神聖の具象。まさに至高の逸品。
アルトリウスは威儀を正し、至高の弓を粛然と構える。
銀糸の絃の中央に、聖騎士の右手の二指が掛かる。
聳え立つ巨蛇を見据えるアルトリウスの眸が、鷲の鋭さを帯びる。
二指の先端に淡い光が灯る。アルトリウスが絃を軽く引くと、光は鮮烈な光芒となって弓柄に直進し、その光芒が、そのまま一本の聖なる矢となる。
至高の弓を用いて超高密度の聖属性魔力を射出する、神に連なる者の極大魔法〈神の弓矢〉。
「穢らわしき魔人、穢らわしき蛇め」
凛然とした聖騎士の声が、山岳の巨体に谺する。
「神より賜りしこの弓矢を以て、貴様の存在ごと、その魂を消し去ってやろう」
ル・シャイル広場が鳴動する。地面の端々に深い亀裂が生ずる。巨蛇が動く。大地を削り、大気を薙ぎ払い、巨蛇は一際高く、その鎌頸を擡げる。大路ほどの幅のある長い舌を出し入れしながら、巨蛇はくわとその大口を開く。聖都の数区劃を軽々とひと呑みに出来そうな口腔、深淵のように底知れぬ無明の咽喉。世界を喰らうが如きその大口が聖騎士を付け狙い、そして、
だしぬけに、巨蛇が襲い掛かる。
あたかも天空そのものが墜ちてくるような、言語に絶する光景。視野を圧する圧倒的な質量と重量。あまりの規模感に、周囲の遠近感が呆気ないほど簡単に崩潰する。山岳が、天空が、蛇の象をした深淵が、聖騎士を呑み込もうと、凄まじい速度で墜下してくる。
末路窮途。絶体絶命。
それでも──それでも尚、アルトリウスの美貌は、その銀の睫に縁取られた双眸は揺らがない。弓柄を強く把持し、優美な所作で銀糸の絃を引き絞り、透徹した眼差しで狙いを定める。背後に展がる〈大天使の翼〉が、一際力強く展張し、そして──
「──貫け」
音が消える。色が褪せる。景色が眩む。ル・シャイル広場全域の影という影が、消し飛ぶ。
時が、止まる。墜下する巨蛇、残身の姿勢を保つ聖騎士、双方の間を流れる時間が、止まる。そう錯覚する。
崩潰が再開の合図となる。
聖属性は魔力を乱し、祓い、相殺する。くわえて、これは極大魔法。撃ち出された矢の魔力出力は、これまでの比ではない。数倍、数十倍、いや、それ以上。
山岳の如き巨蛇、その岩膚に僅かな瑕疵が生じる。小さな罅。その罅は一瞬で深々とした亀裂となり、亀裂が亀裂を呼び、放射状に拡がり──巨蛇の長大な体躯が、空中で粉々に砕け散る。衝撃波、突風、砂嵐。次いで広場全域に、さらにその向こうに拡がる街衢にまで、無数の砂礫が、驟雨のように降り注ぐ。
砂礫と云えど、この規模のゴーレムの崩潰によって引き起こされるそれは、名称ほど生易しいものではない。降り注ぐのは馬車ほどの巨岩であり、家屋を越える巌であり、大地より抉り出された岩盤そのもの。
轟音と鳴動を伴った隕石の雨が、すでに蹂躙され尽くした広場に、さらなる破滅を齎す。
そんな破滅の中心地に在って、しかしアルトリウスに降り掛かる砂礫は、ただのひとつも無い。
アルトリウスの頭上には、文字通り風穴が空いている。
神の名を冠する聖なる矢は、立ち塞がるすべてのものを貫き滅す。ゆえにアルトリウスに降り注ぐ砂礫は、小石どころか砂埃ひとつ存在しない。アルトリウスの頭上にはあるのは、無辺の蒼穹にまで達する完璧な円形の風穴。砂礫ひとつ、砂埃ひとつ、燦めく魔力粒子ひと粒さえ存在しない。
そう、頭上には何もない。何ひとつ存在しない。何ひとつ──
ぴくりと、アルトリウスの眉が顰められる。
風穴の中に、ひとつの影が顕れる。
凄まじい速度で風穴を落下してくる影。
黒髪。蒼鎧。身の丈を越える長大な巨刃。
〈魔人〉ザラチェンコ・ホボロフスキー。
アルトリウスは魔人の極大魔法を一瞥した瞬間、その魔法が抱える重大な瑕疵を見抜いた。〈世界を喰らう者〉は確かに強力な魔法だ。厖大な魔力を莫大な岩石に変換し、さらには足りない分を補うために、地層そのものから無理矢理岩石を削り出し、言語に絶する、大地の化身とも云える巍巍たるゴーレムを生成した。しかし体積が増えれば増えるほど、ゴーレムを動かす際の難度は指数関数的な上昇をみせる。ゴーレムを使役する一番の利点は、その自立性だ。魔力という動力源を彫像へと埋込み、己が従者として意のままに使役する。しかし〈世界を喰らう者〉の巨体を自立させるのは、いくら超越魔物たるザラチェンコの実力を考慮したとしても、不可能。そうなると、術者が直接ゴーレムの指揮に乗り出すしかない。巨蛇の出現と同時にザラチェンコの姿が消えたのは、動力源として〈世界を喰らう者〉の中に自らを組み込んだからだ。
そしてそれこそが、この極大魔法最大の欠点だ。
自立性を捨て、術者と従者による数の利を生かした波状攻撃、その選択肢を、この極大魔法は放棄している。
最も、その利点を遙か凌駕する攻撃範囲と破壊力をこの極大魔法が有しているのは明白だ。直撃すれば、アルトリウスとてただでは済まない。勝敗を分ける一手として、これほど相応しい手はない。
相手がアルトリウスでなければ、だが。
アルトリウスを聖騎士たらしめている強さは、その卓越した技倆だ。
王道にして正道の剣技。実直にして精確無比な魔法。
アルトリウスはゴーレムを仰ぎ見た瞬間、巨蛇の瑕疵を看破した。そして探知魔法〈天使の眸〉によって山岳の如き巨体を素速く精査、魔力の流れ、その結節点を辿り、流れの収斂するゴーレムの原動力──ザラチェンコの居場所を瞬時に見定めた。
巨蛇の頭部、額、その深奥。
それだけ判ればアルトリウスには充分だった。
ただ実直に。ただ精確無比に。
位置さえ判っているならば、外しはしない。
射放たれた〈神の弓矢〉は、岩盤の如き巨蛇の岩膚もろとも、ザラチェンコを、その魂を、正鵠に射貫いた。その筈だった。
「──為損じたか」
そう、アルトリウスは為損じた。
読んでいた。そう、ザラチェンコは読んでいたのだ。
ザラチェンコは聖騎士の実力を甘く見ていない。むしろ逆だ。ザラチェンコは誰よりも高く、誰よりも正当に、聖騎士の実力を評価している。アルトリウスならば、一瞥しただけでこの極大魔法の瑕疵を見破る。そして何らかの方法──間違いなく極大魔法──を用いて、直接自分を狙ってくる。そうザラチェンコは確信していた。ゆえにザラチェンコは、ゴーレムを操るために巨体の隅々にまで張り巡らせた魔力網、その結節点のひとつに意図的に魔力を滞留させ、自身は漏出魔力を極力抑えることで、動力源の位置を偽装した。
結果、アルトリウスは偽りの動力源を正鵠に撃ち抜くこととなった。
落下してくるザラチェンコを、アルトリウスは透徹した銀眸で追う。銀の手甲が、聖刃の柄に掛ける。
魔人を、超越魔物を確実に仕留め切るには、やはり極大魔法をおいて他に手はない。しかしアルトリウスに残された時間は僅かだ。あと数秒もすれば、ザラチェンコはアルトリウスの許へと到達する。新たな極大魔法を練り上げている猶予はない。
だが、二の矢の用意を怠るアルトリウスではない。
柄を把む指先に力を籠め、アルトリウスは聖刃を抜き放つ。
──極光。〈神の弓矢〉が射放たれた時同様の鮮烈な耀きに、再び周囲一帯の影と云う影が消え去る。
太陽をそのまま刃としたような、あらゆる光を超越した光に白耀くアルトリウスの聖刃。その耀きの正体が極大魔法であることに疑問の余地はない。
聖騎士に手抜かりはない。〈神の弓矢〉を練り上げると同時に、アルトリウスはもう一種の極大魔法を練り上げ、研ぎ澄まし、聖刃に付与していた。二の矢を用意していたのだ。
「──覚悟しろ」
アルトリウスは頭上へ向け、泰然と鋒を向ける。聖刃に付与された極大魔法の名は〈裁きの剣〉。極限まで収斂圧縮された聖属性を贖いの刃とする、神に連なる者のみに赦された極大魔法。術理自体は非常に単純な魔法だ。魔人との戦いの中でアルトリウスが度々見せた〈眩耀刃〉とそう変わりはない。だが、その剣の秘める威力と出力は、眩耀刃を児戯に貶めるほど懸絶している。太陽と見紛うばかりに白熱した剣身より放たれる一撃は、あらゆる影を照らし、あらゆる夜を終わらせ、あらゆる闇を祓い滅ぼす。
その絶大な威力から、光魔法には”神器”と呼ばれる二種類の極大魔法が存在する。
収束せし光の矢を以て悉くを貫く極大魔法〈神の弓矢〉。
そしてもうひとつが、現在アルトリウスが泰然と頭上に擬する剣。極大魔法〈裁きの剣〉。
遠距離戦に於いて比類無き威力を誇るのが〈神の弓矢〉ならば、〈裁きの剣〉は迫撃戦に於いて無類の強さを証明する。相手が何ものであれ、〈裁きの剣〉の前に立ち塞がるものは、神の名の許に断罪される。至近距離ならば全光魔法の中でも紛うことなく最大の威力を誇り、眩耀の衝撃波を伴ったその斬撃は中距離の敵をも軽々と撃滅する。頭上より強襲を仕掛ける魔人を迎え撃つのに、これ程相応しい魔法が他にあるだろうか。
「来い、蛇。その穢れた血に、神の裁きを下してやろう」
アルトリウスは優美なまでの所作で白熱する刃を腰だめに構え──そこで気づく。
魔人より立ちのぼる、厖大な魔力の片鱗に。
二の矢を用意していたのはアルトリウスだけではない。蛇とは狡猾なもの。ザラチェンコもまた、当然善後策を用意していた。
中空を落下しながら、ザラチェンコは巨刃の鋒を聖騎士へと差し向ける。
巌の如き巨大な刃に宿る厖大な魔力。その魔力量が指し示す事実は明白。〈世界を喰らう者〉と平行して、ザラチェンコも二の矢たる極大魔法を用意していたのだ。
「無駄なことを」曇りのない銀眸に殺意を湛え、アルトリウスはさらに強く剣を握り込む。「良いだろう。ならばその極大魔法ごと貴様を断罪するまで」
虚勢でもなければ傲りでもない。聖騎士の〈裁きの剣〉ならば、それも可能。
アルトリウスは両腕に魔力を漲らせ、下肢で地を踏み込み、迫り来る魔人が断罪の間合いに到達した瞬間、
──極光一閃。
夜を昼に変えるほどの光量と、煌星の魔力粒子の衝撃波が濁りなき蒼穹に一条の轍を腐刻し、
同時に、
──ぐらりと、アルトリウスの態勢が後方へと崩れる。
銀の鉄靴がうち沈む。思いがけず沼地に足を取られたかのように、踏み込んだ筈の地面の感触が綺麗さっぱり消え去っている。愕きに眸を見開き、かつて戦場に於いて敵から目線を切ったことのないアルトリウスが、足許に視線を落とす。
そこに在ったのは、底無しの深淵。あるいは、くわと開かれた、先ほどアルトリウスが打ち砕いた巨蛇を思わせる顎門。──いや、違う。そこに在ったのは、〈門〉。地割れように足許を断ち割った、巨大な〈門〉。
その〈門〉に、アルトリウスの膝下が呑み込まれている。
これこそがザラチェンコの用意した二の矢。岩塊の武器を削り出すわけでもなければ、従順な従者を生成するわけでもない。触れたものすべてを彫像と化す魔力波を放つわけでもなければ、岩盤の如き隕石雨を降らせるわけでもない。この局面に於いて手持ちの手札から魔人が選り出したのは、一切の攻撃性能を持たぬ一対の巨門。つまり、極大魔法を介した召喚術。
〈尾を呑む蛇が潜る門〉。
しかし、なぜこの極大魔法を? この門扉を潜った先には、もはや誰もいない。契約者たるムンドゥスはゼルジー大森林での戦闘に於いて、彼の狂狼に屠られている。召喚するべき相棒を欠いたこの〈門〉に、一体何の意味が?
「余所見をしている暇があるのか?」
至近より響いた声に、アルトリウスは足許より視線を戻し、素速く剣を振りあげる。
高く澄んだ音響。舞い散る火花。間一髪の所で、アルトリウスは振り下ろされたザラチェンコの巨刃を受け止める。
咫尺を隔てて垣間見るザラチェンコの異貌は、傷に被われている。頬に拡がる蛇の鱗は無惨に剥がれ、眉根から生え際にかけての皮膚は醜く灼け爛れ、溢れ出た血潮は頸筋を伝い、猟犬の頸鎧から胸当てまでを、穢れた錆色に染めあげている。
だが、それだけだ。
負傷している。決して軽い傷ではない。だが、致命傷たり得てはいない。
再度、アルトリウスは為損じた。
中空のザラチェンコを両断するかに見えた〈裁きの剣〉は、振り抜かれる瞬間に〈門〉に足をすくわれ、その軌道を僅かに逸らされていた。結果、衝撃波によるダメージは負ったものの、ザラチェンコは極光の刃自体の直撃は、紙一重で免れていた。
弓矢と剣。二種の神器を掻い潜るのは、どのような強者にとっても至難。ましてその神器を扱うのが、あの聖騎士アルトリウスとあっては、尚更。
だが、ザラチェンコはやってのけた。
雑種。劣等種。穢れた血。そう蔑まれる一匹の蛇が、神の騎士たる大天使の猛攻を凌ぎ切った。そしてその毒牙は、間違いなく大天使の喉元に届いた。
ずぷりと、アルトリウスの下半身が腰まで〈門〉の内へと沈む。
今のアルトリウスには巨刃の重みを受け止めるための支えがない。踏み込み、押し返すために必要な地面が、力点が存在しない。どぷりと、今度は胸元まで沈む。
もはや猶予はない。あと数秒を待たず、アルトリウスは泥沼の如き異空へと完璧に没する。
だが、それはザラチェンコにしても同じ。このままではアルトリウス諸共、ザラチェンコも〈門〉の中へとうち沈む。
しかし、それこそがザラチェンコの狙いなのだとすれば──
「気張れよアルトリウス。この先は少しキツいぞ」
状況に不釣り合いな朗らかな声でザラチェンコは嗤い、
「……それじゃあ、我慢比べといこうか」
その言葉を最後に、ふたりの騎士は〈尾呑みの蛇〉の巨門へと一息に呑み込まれた。
*****
「安心して。アンタのことなんて、きっと明日には綺麗サッパリ忘れてる」
ひらひらと手を振りながら、ジュリアーヌはアステルに背を向け──だしぬけに彼女は振り返り、素速い手振りで周囲の〈地獄の狩り犬〉をアステルに向かって嗾ける。
猟犬の群れは猛烈に闇の中を駆け、仰のいたアステルに襲い掛かり、炸裂する。
耳を聾する轟音。連鎖する大爆発。轟音は鳴り止まない。炸裂は止まらない。爆散と再構築を繰り返しながら、黒い猟犬の群れは延延、爆発し続ける。熱波が吹き荒れ、火の粉が舞い上がり、膨れ上がった黒い炎熱に、周囲の闇さえもが揺らめき立つ。
一体どれだけ続いたのだろう。ジュリアーヌが手を下げると共に、爆発は了わりを迎える。
闇に鎖された結界の中にあってさえ黒々とした黒煙が、入道雲のようにもくもくと立ち籠める。
ジュリアーヌは腰に手を当て、その光景をジッと見つめる。
ゆっくりと熱が薄れる。徐々に黒煙がその嵩を減じる。
そこに顕れたものは──
「噫、そう」猛禽の如き鋭利な眦を細め、少女のように小頸を傾げながら、ジュリアーヌは気怠げに口を開く。「ようやく真打ちのご登場ってわけね」
──立ち上がらなければ……
朦朧とした意識の中で、アステルはそう思う。
──眼の前に、あの女がいる。あの魔女がいる。ようやく見つけた、ようやく辿り着いたのだ。この機会を逃せば、二度とあの魔女に復讐する機会は訪れない。だから、こんな所で倒れているわけにはいかない。立ち上がらなければ。今すぐ立ち上がり、あの魔女目掛け、この斧を振り下ろさなければ……
だが、烈しい決意に反し、アステルの躯は微動だにしない。
力が入らない。全身が云うことを聞かない。指先ひとつ満足に動かすことが出来ない。
ぬるま湯に浸かっているようなじんわりとした感触が、アステルの背筋に広がっていく。温かい。だというのに、慄えが止まらない。──血だ。魔女に抉られた左胸の傷口から、大量の鮮血が溢れ出している。異形の胸当てを真っ赤に染め上げ、闘技場に敷き詰められた細かな砂地に浸潤しながら、滾々と溢れ出るアステルの血液は、朱い泥濘の領地を広げていく。
失われていく。アステルの血が。
失われていく。アステルの生命が。
失われていく。アステルの魂が。
──約束したんだ……
ありったけの力を振り絞り、震える指先で朱い泥濘を掻き、アステルは拳を握る。
──あの子に……ミドナの亡骸に、誓った、誓ったんだ……
だから、立ち上がらなければならない。今すぐ立ち上がり、魔女に挑まなければならない。焰を掻き分け、使い魔を薙ぎ倒し、あの女目がけ、断竜斧を振り下ろさなければならない。そうしなければならない。そうしなければ。そうしなければ。
だが、その機会は永遠に訪れない。
先ほど拳を握った僅かな動作が、アステルに残された最期の余力だった。
もはやアステルには、何ひとつ残されていなかった。
体力も、魔力も、気力のひと雫さえも。
何ひとつ、本当に何ひとつ、彼の内奥には残されていない。すべてが傷口から流れ出した。痛みと共に、血と共に、アステルのすべてが流れ出し──
「あらあら、随分と酷い有様ね」
鈴を転がすような女の声が、上方より軽やかに投げ掛けられた。
溷濁し焦点の定まらぬ視線を、アステルは声のした方向に向ける。
いつからそこにいたのか、いつ顕れたのか。
クシャルネディアが、彼を瞰下ろしていた。
「その様子では、持ってあと数分と云ったところかしら」クシャルネディアは蒼い眸を破られた左胸に据え、「本来であれば即死していて当然の傷だけど、貴方の身につけるその甲冑が、どうやら辛うじて貴方の生命を現世に繋ぎ止めているみたいね。さすがは山竜の素材より造られし戦神の呪鎧と云ったところかしら。なかなかどうして侮れない代物ね」朦朧と揺れ動くアステルの瞳に微笑みかけ、「──こうなることは最初から判っていたでしょう?」優しく、幼子に語りかける母親のような柔らかな声色で、血の姫君はアステルに語りかける。「貴方、この戦いが始まる前に私に云ったわよね。『ひとりで戦わせて欲しい』と。無論、私に異論はなかった。この復讐の主役は他の誰でもない、貴方。私は名も無き端役に過ぎない。貴方がひとりで戦いたいと云うのであれば、私はその選択を尊重する。舞台は整える。魔女を貴方の前に立たせもする。それでも貴方の戦い自体に干渉する気は、当初から私にはなかった。──けれど、それは先刻までの話」
言葉がアステルに染み渡るのを待つように、クシャルネディアは一拍の間を置き、
「貴方は、負けたわ」
事も無げに、それゆえ残酷に、クシャルネディアは告げる。
「そして貴方は、そうなることを最初から判っていた」
アステルは否定も肯定もしない。ただ磨り硝子のように溷濁した瞳で、クシャルネディアを見つめ続ける。
自分の血の流れ続ける音だけが、微かに闇の中に聞こえる。
「万にひとつも勝機が無いということを」とクシャルネディアは続ける。「挑む前から、貴方は理解していた。それはそうよね。相手は超越魔物、世界にその名を轟かす〈獄焰の魔女〉ジュリアーヌ・ゾゾルル。一介の亜人程度がどうにか出来る相手ではない。──それでも貴方は挑んだ。勝ち目が無いと判っていながら、不様に殺されると理解していながら、それでも貴方は魔女の前に立ち塞がった。それも、たったひとりで」
アステルは、ひたすらにクシャルネディアを見つめ続ける。
「そうせざるを得なかったのでしょう?」視線に応えるように、クシャルネディアは先を続ける。「助勢を請う為に、貴方は私たちの許を訪れた。けれど、貴方が私たちに求めたのは加勢ではなく、あくまでもジュリアーヌ・ゾゾルルへと続く道筋の確保。貴女は、どうしても自分の手で殺したかった。自分ひとりの手で、復讐を成し遂げたかった。それだけが、貴方に残された唯ひとつのものだった」
「……誓ったんだ」アステルの咽喉から、唸りにも似たか細い声が絞り出される。「あの娘に……ミドナに……この手で、必ず私の手で魔女を殺すと、誓ったんだ……だから、私は……」
「ええ、そうね」血はすべてを物語る。クシャルネディアはアステルの血を摂取した際、彼のすべてを読み取ている。
その肉体を、記憶を、その絶望を。
その悲哀を、その執念を、その憎悪を。
そして……その誇りを、その気高い魂を。
「だからよ、アステル。だから貴方に手を貸したの」
たとえ勝てないと判っていようと、絶対に退くことの出来ない戦いがある。どれだけ対手の力が強大無比であろうと、自分ひとりで挑まねばならない戦いがある。
死を覚悟し、赫き竜殺しに挑んだように。彼我の実力差を度外視し、最強の人狼に挑んだように。
それらの戦いを、クシャルネディアは生き延びた。だがアステルは違う。彼は負けた。完膚無きまでに敗北し、不様に這い蹲り、あとはただ、死が訪れるのを待つしかない。
「だからねアステル、今が”その刻”なの」
クシャルネディアは屍体のように蒼白な右手を口許に運び、長く優美な人差し指の指腹を、夜の獣の牙で咬み切る。
闇の中にあってさえ異様に鮮烈な朱が、一輪の薔薇のように、指先で花開く。
アステルがサツキの根城であるユリシール王国辺境の古城を訪れた日、クシャルネディアはアステルに、ひとつの提案を持ち掛けた。
『その身を差し出す覚悟があるのなら、そのすべてを擲つ覚悟があるのなら、たとえどのような形であれ、復讐を成し遂げたいと強く望むのなら、私が貴方に魔女を殺させてあげる』
そしてクシャルネディアは、結びの言葉を口にした。
『その刻が来たら、返事を訊かせてもらうわ』
「この血を受け入れれば、貴方は貴方では無くなる」クシャルネディアの指先から流れる血潮は滾々とその量を増し、長い指を伝い落ちる。「通常、”転化”したからといって、その存在の人格が消え去ることはない。私の眷属たちは生前の人格をそのままに、忠実な僕として私に傅いている。けれどアステル、貴方は違う」長年に渡る無謀な鍛錬、、身に余る断竜斧の重圧、度重なる巨竜纏いの使用……余命三月とクシャルネディアが概算したアステルの肉体は、もはや転化の負荷に耐えられない。死種へと生まれ変わる際、間違いなく彼は崩潰する。
それでもクシャルネディアならば、アステルの躯を再生することが出来る。血も、肉も、骨も、生前と変わらぬ肉体を、生前以上に完璧な状態で、より強靱な状態で、誂えることが出来る。
だが中身は──アステルをアステルたらしめる本質は、そうはいかない。
生命の中で最も複雑な器官である脳は、不可逆な組織だ。自身の脳ならば超速再生によって容易に復元することが可能だ。〈時間回帰〉に分類されるクシャルネディアの再生能力に巻き戻せぬものなど存在しない。しかし他者のものとなると、たとえ彼女の技倆を以てしても、完璧な復元は不可能。
そして、魂。心臓の深奥に鎮座する根源魔力──魂もまた、不可逆なもの。
つまり、クシャルネディアの血を受け入れた場合、アステルは──
「貴方は生ける屍と化す」流れ続ける薔薇の花瓣を見つめながら、クシャルネディアは云う。「意識は消滅し、人格は崩潰し、魂は粉と砕け散り、貴方は貴方たらしめるすべてのモノを、その瞬間失う。……それでも貴方は望む?」クシャルネディアの蒼き双眸が、妖しい光を放つ。「すべてを差し出し、すべてを擲ち、誇りも魂もかなぐり捨て、不様な生ける屍へと成り下がろうとも……それでも復讐を遂げたいと、どのような形であれ魔女を殺したいと、貴方が強く望むのであれば」クシャルネディアは血に濡れた右手を、死にかけのアステルの貌の上へとゆっくりと差し出し、一言、
──受け入れなさい
その言葉を、しかしクシャルネディアは口にしなかった。
必要なかった。答えならば、すでに示されていた。
もはやアステルには声を発するだけの余力は残っていない。だから彼は、自身に残された最後の力を振り絞って、ひとつの行動を起こした。
口を、開いた。
弱々しく顎を震わせ、それでもアステルはしっかりと、黒ずんだ口腔を晒してみせた。そして己が身に齎される運命を、粛々と待ち受けた。
溷濁し、白濁としたアステルの双眸に、その瞬間、力強い決意が漲った。
「……そう、判ったわ」クシャルネディアは威儀を正し、「ならばこれより貴方は我が僕」勁い顔つきで声を張る。人差し指を濡らしていた玄い血液が、意志を持つ生き物のように指先で蠢き、収斂し、濃縮された一滴の雫となり、自重に耐えかねた果実が枝より身を放すように、アステルに向かって静かに落下する。
「サツキ様は仰有ったわ。『誓いとは、果たされるべきものだ』と」
突如、アステルの全身が烈しい痙攣に見舞われる。指先は土を掻き摑み、両脚は打ち上げられた魚のように跳ね廻り、背筋は引き絞られたかのように急激に反り返り──唐突に、痙攣は収まる。
突如、巨大な炸裂音と共に、クシャルネディアの周囲の空間が粉々に砕け散る。クシャルネディアが周囲に展開していた玄い凝血の城壁が、ついに崩潰したのだ。この城壁が、延延と続く魔女の連鎖爆発から、ふたりの身を護り抜いた。
空気が薄い。瘴気を含んだ黒煙が四方に棚引く。灼けつくような熱波が、周囲を分厚く押し包んでいる。
だが、問題はない。現在この場所にいるのは、ふたりの屍者。薄い空気も、生命を蝕む瘴気も、茹だるような炎熱も、死と云う薄衣に身を包んだふたりには、何ほどのこともない。
”転化”は、すでに完了している。
「安心しなさい、アステル」
クシャルネディアは、凛然と正面に貌を向ける。
「我が血、我が一族の誇りに懸けて」
引き始めた黒煙の狭間に、クシャルネディアはその女の姿を見出す。
紫紺に染まる乱雑な髪。非情さの滲み出る残忍な美貌。暗色の魔術師外套はだらしなく着崩され、晒された頸許に垂れ下がる、貓や鴉を象った頸飾りの束。しかしとりわけ眼を惹くのは、その杖。女の傍らを気儘に浮遊する、無数の魔道具によって過剰なまでに飾り立てられた、箒の如き異形の長杖。
〈獄焰の魔女〉ジュリアーヌ・ゾゾルル。
クシャルネディアの傍らで、彼が立ち上がる。傀儡が糸を引かれたように。鞭打たれた家畜が漫然と身を起こすように。傍らに転がる断竜斧を摑み取り、灼け焦げた鎧を軋ませながら、重々しい動作で、彼は立ち上がる。
生気の抜け落ちた双眸は、白眼を剥いている。だらりと垂れ下がった顎から、涎が垂れ落ちる。頸筋から頬にかけて、蒼みを帯びた太い血管が浮き出す。
意識はなく、理性もなく、魂もない。すでに死が、倒木を貪る白蟻のように、彼という存在を隅々まで蚕食している。
それでも彼は、この屍体は、まぎれもなくアステルだ。爛れた復讐者、アステル・ガンサルディードだ。
だからクシャルネディアは、アステルの横貌を一瞥し、厳粛な音調を響かせる。
「貴方に魔女を殺させてあげる」
薄れゆく黒煙の只中に、ひとりの女が佇っている。
「噫、そう」小頸を傾げながら、ジュリアーヌは気怠げに眼を細める。「ようやく真打ちのご登場ってわけね」
闇の中にあって、女は背景から浮きあがる程に白い。しかしその白は、聖都で度々眼にする自ら発光するような純白ではない。女の身につけるドレスの白さは野晒しにされた白骨のそれであり、襟刳りからすらりと伸びる頸筋の色合いは間違いなく屍体のそれ。
皓ではなく蒼白。太陽ではなく月。生ではなく死。
頭頂が戴くのは、滴るような闇の被衣。無底の夜より切り出されたが如き射干玉の美髪は、頭頂から踝までを水簾のように流れ落ち、その底の無い闇色が女の蒼白の膚をより一層際立たせ、女の貌をこれ以上ないほど凄艶に引き立てている。
蒼褪めた唇。僅かに覗く獣の牙。美しい蒼い双眸。貌という画布に画き出されるのは、造作の黄金比。死者の、闇の、魔の貴顕のみに赦された、凄艶なまでの美貌。
会ったことはない。姿を視たことさえも。
それでもジュリアーヌは瞬時に理解した。女の正体を。その種族、その名前を。
「クシャルネディア」ジュリアーヌは女の貌を見つめる。「クシャルネディア・ナズゥ・テスカロール、そうでしょ?」
血の姫君はにっこりと微笑し、「ええそうよ、ジュリアーヌ・ゾゾルル」
「この結界ってアンタが造ったんだ。通りで頑丈なわけね」
「稀代の魔導師たるジュリアーヌ・ゾゾルルにそう云っていただけるなんて、光栄の極みね」
「アタシをここまで引き摺り込んだ〈魔の廻廊〉、あれもアンタね」
「想像以上にうまくいったわ。おかげで私自ら出向く必要がなくなったもの」
「色々仕込んでたわけね」
「勿論。貴女のような超越者をもてなす以上、手抜かりは赦されないわ」
「あっそ」ジュリアーヌは嗤笑と共に吐き捨て、「──で、一体何のつもり?」その問い掛けは、しかしクシャルネディアの目的について問い質したわけではない。クシャルネディアの目的に興味はない。なぜ聖都に居るのか、なぜ自分を結界に閉じ込めたのか、なぜ自分の前に姿を顕したのか……そういった疑問には露ほどの意味もない。クシャルネディアは〈地獄に堕つ五芒星〉と反目している。つまり、この血魔は敵だ。聖都落としの最重要討滅対象にこそ数えられていないが、それはクシャルネディアの現出の可能性が皆無に等しかったからであり、この血魔がヘル・ペンタグラムの敵である事実にかわりはない。
敵である以上、殺すことは確定している。そもそもこの様な仕打ちを受けて、ジュリアーヌがクシャルネディアを見逃すはずがない。だからジュリアーヌが訊いているのは、クシャルネディアの目的についてではない。ジュリアーヌが訊いているのは──
「そんなものを”転化”させて、一体どうするつもり?」
クシャルネディアの傍らに佇む、一体の屍体。先ほどジュリアーヌが嬲り殺したばかりの、亜人の屍体。
「──貴女、この場所が何処だか判る?」質問には答えず、クシャルネディアは微笑を泛べたまま、優雅な手振りで魔女の視線を周囲へと促す。幾つもの街衢が丸々収まりそうな巨大な円形の広場。広場の外周をぐるりと囲繞する、長身の男三人分ほどの高さの壁面。その壁面の上には、広場を全周するように設えられた、ゆうに数万人は収容できそうな階段状の客席。石柱や門扉など、建造物のあらゆる場所には数々の意匠が見受けられる。殴り合う裸身の男、鍔迫り合う騎士と騎士、杖を構え相対する、ふたりの魔術師。見紛えようがない。答えを謬ることなどあり得ない。誰がどう見ようと、この場所は、
「闘技場よ」クシャルネディアは云う。「聖都建国はもとより、世界連合世紀よりもさらに時代を遡って建造された、此処は古い時代の闘技場。これから私たちが行う遊戯の舞台として、これほど相応しい場所はないと思わない?」
「ゲーム?」
「郷に入れば郷に従え、と云うでしょう?」クシャルネディアが右手をサッと振りあげると、アステルは断竜斧を担ぎ上げ、重々しくその足を踏み出す。「私たちは聖都にいる。そしてこの場所は人々が誇りと名誉を競って血を流した、由緒正しき決闘の場。なら、古式に則って戦うことにしない?」アステルはクシャルネディアの前方一間(約二メートル)ほどの位置で立ち止まり、荒々しく斧を構える。「さあ、貴女も前衛を配しなさい。魔女なのだから、使い魔なんて唸るほどいるでしょう? それともその薄汚い猟犬が貴女の騎士?」クシャルネディアは鷹揚に頷き、「別に何でもいいのよ、貴女が騎士だと思うものなら、何でもね。──さあ、早くしてくれない?」
聖都に伝わる遊戯。古来より行われてきた由緒正しき決闘の作法。傍仕えの武人を前衛に、誇り高き貴人を後衛に。己が誇りと名誉を懸けて行われる、これは古々しい戦いの遊戯。
「どうやら準備は整ったみたいね」
蒼い双眸を爛々と耀かせ、クシャルネディアは開戦を告げる。
「それじゃあ始めましょうか、〈騎士と魔術師〉を」




