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拘束
仁哉は思わず和由を手から離した。心臓が早く打ち過ぎて息が苦しい。
その瞬間、玄関のチャイムが鳴った。
どうしよう、これは明らかに傷害罪だ。きっとひどい物音で誰かが通報したんだ。隠れる・・・?だめだそんなことをしたら自分がやったと言ってるようなものだ。市役所職員ということはすぐに知られるだろう。もうおしまいだな、俺の人生は。
再びチャイムが鳴った。
もう諦めよう。腹をくくって仁哉は玄関に向かおうとした。
突然、背中と右腕に衝撃を感じ仁哉は思わず倒れ込んだ。
振り返ると和由が近くにあった布団たたきを手に仁哉を見下ろしていた。
それから和由は馬乗りになって仁哉を殴った。しかし体力がないのか殴る力は弱く、その代わり足で床を蹴ったり壁をむやみに叩いたりしていた。
その時、ドアが開いた。
警察官と管理人が一斉に部屋に入って和由を押さえ込んだ。
「こいつなんてなぁ!俺が殺すんだよ!」
和由は警官に押さえられながら大声をあげていた。
そんな和由を見るのは初めてで仁哉があっけにとられていると
「佐藤さんですよね。大丈夫ですか?とにかく外へ」
すかさず別の警官が仁哉に駆け寄り外へ促した。
家の中ではまだ和由が暴れている。離せ、俺もあいつも一緒に死ぬんだ、という叫び声が外まで聞こえていた。




