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同居

雨の音が窓を叩いている。和由を引き取った仁哉はそのまま仕事を早退し家に帰った。そして夕食も食べずに寝たのだろう。目が覚めたら外は真っ暗だった。

ふと目をやると和由が床で寝ている。どうして昨日、和由の姿を見た時、引き取るなんて言ったんだろうか。こいつは記憶障害なんだ。自分自身のことだってわからない。俺が知らないと言って、何も知らない顔で役所で面倒を見てもらうのが一番だった。和由はあの日、家を出て帰ってこなかったあの日に死んだのだ。ずっとそう思っていたのに。


仁哉は視線に気付いた。和由が仁哉を見ている。


「記憶は」仁哉はぶっきらぼうに尋ねたが和由は何も答えなかった。

「とにかく、お前はここにいる人間じゃない。早く出てってくれ」そんなことを言ってもわからないか、と仁哉が続けて言おうとした時だった。

「ここにいさせてください」和由が口を開いた。

「・・・え?」

「僕は自分のことが誰だかわからない。当然あなたのことも知りません。でもお願いです。僕には行くところもない。どうかここに置いてください」

和由がしゃべっているところを聞いたのは何年ぶりだろうか。一緒に暮らしている頃でもこんなに話したことは思い当たらない。

「行くところならある。俺が明日連れて行く。役所で生活保護の申請を・・・」

そこまで言って仁哉はあまりにも当たり前のことに気付いた。和由が仁哉と兄弟ということはもう警察にも言ってしまっている。隠すことはできない。そして自分がいる限り、和由を扶養すべきということになってしまう。つまりそう簡単に保護を受けられない。しかもこんなやつが兄だなんて知られたくなかった。


「僕には行くところが・・・」うわごとのように繰り返す和由をさえぎるように仁哉は怒鳴った。

「帰ってくるなって言っただろうが!」

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