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S↔R ~令和女子、昭和に放り出される~ 「1970年」マジありえない文化なのに人情に泣ける。そして未来へ繋がる……  作者: 髙井菜是


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【64】あなたの名前は

顔はシュッとしてて、キリッとしてて、イケメンやのに、照れ笑いで、「僕」で、「怖かった」!?


ヤバーい! めっちゃキュンキュンや!


……あかん、バレへんように、平常心や

「あ、あの、ほんまありがとうございました」


男の人は、スッと立ち上がる。

背ぇ高ーい!

気遣うように、首をかしげて私を見て、

「大丈夫でしたか? 怪我はありませんか?」

と言った。


イケボー!

「は、はい! 大丈夫です!」

ヤバい私、気色悪いぞ、ほんま落ち着け


すると男の人は、ジッと私を見て、

「……どこかでお会いしたことが」

と言った。


そうなんです! 会ってます!

「あの、私、喫茶アベルで働いてます……たまに、来てはりますよね?」


「あぁ! アベルの! 失礼しました」

「いえいえ! ほんま、助かりました」

「……さっきの男も、どっかで見たことがあると思ったら、アベルによく来てますね」

「はい……そこで会って……まさかこんな目に遭うやなんて」

「確か……昨日も妙な男に絡まれてませんでした?」

「……はは、そうです。あん時も来てはりましたよね? えっと……」

「あ、申し遅れました。僕は藤堂です。藤堂洋介といいます」


とうどう、ようすけさん……

「洋介さん……あ、あの、私は……」

「……みーちゃん」


え!? 


「あ、すみません……そう呼ばれていたので」

「あぁ……はい、そうですね」

びっくりしたわ、落ち着け


「あの……差し支えなければ、愛称ではなく、名前を伺っても?」


あ、そうやね

「松本です。松本……美羽です」


「なん……え?」


はい、久しぶりのやつきました

「へへ、変わった名前でしょう? み、う、です」

「……みう、さん」

「はい」

「みうさん、可愛らしい名前だ」

「いえいえ、そんな……」

「さっきの方とは違う呼び方をしたいんだが、みうさんと呼んでも?」


え、な、なんで!? ひゃー!

「あ、もう、なんでも! みう、でも、みうちゃん、でも!」


「……みう」


ひゃーー!! 破壊力!!


「みう」

「はい!」

「ははっ」

「へへっ」


「……松本姓は、関西に多いのかな?」

「へ? あぁ、どうなんやろ……あ、でも、松本はお父さんの名字なんで。熊本なんですよ、九州の」

「あぁ、なるほど、そういえば、僕の通う研究室にも九州出身という松本くんがいるな」

「はぁ……」


ん? 

「……え? 研究室?」

「……あぁ、そうなんだよ。僕は今、大学院生なんだ」


えー! めちゃくちゃ優秀な人やん!


それにしても……

「あの……関西の方やないんですか? そのぅ、言葉が……」

「あぁ、うん。いや今は大阪に住んで6年になるけど、元々は東北出身なんだよ。少し言葉が伝わりづらいようで、できるだけ標準語にするよう心がけててね……でも、関西弁にもだいぶ染まってきたんだよ? ……ええよね、関西弁。ははは」


「うふふふっ」


なんだか、ほんま可愛いわ

「……ケンカが苦手って、強かったやないですか」

「……あぁ、ははっ。実は昔から、なぜか握力だけは強くて。でも殴り合いなんかは苦手で……本当に、逃げてくれて良かったよ!」


「うふふっ」

「ははは」


すると洋介さんは周りをキョロキョロと見渡した。

「あの……良かったら、送るよ、ここはちょっと……」


私も周りを見渡す。

ただの住宅街やと思てたけど、その中に紛れて、旅館と書いてある建物が何軒かある。

……ラブホ的な? うわ、やだ


洋介さんも、気まずそうにしてる。

「あ、あの、あっちです」

私はさっき歩いてきたほうを指さす。

「では、行こうか」

「はい」


マジめっちゃ紳士的やん!


私と洋介さんは、歩きながら色々お喋りをする。


「しかし、困ったもんだね。アルバイトしているお店のお客さんが、あんなことをしてくるなんて」

「ほんま、気色悪いです」

「昨日も、変な客に大声で絡まれていたね」

「……へへ」

「……お店の方は、何もしてくれないんですか?」

「え! いえいえ、助けてくれてますよ!」

「あぁ、じゃあ安心だ」

「……はい」

「……今日のことも、お店の方に言っておいたほうがいいね」

「はぁ……ですよねぇ」

「お店にとっては大事なお客さんなのかもしれないけどね」

「う……」

「それでも、みうは危ない目に遭ったんだから、大事なお客さんであろうが、それとこれとは違う話だからね」

「……そうですよねぇ」

「きっとわかってくれるさ」

「……うん、そやな」

「……いいね」

「へ?」

「今みたいに、砕けた話し方のほうが、僕は嬉しいな」

「……あ! すみません!」

「え? なぜ謝るんだい?」

「いや、だって……私のほうが年下やろうし」

「僕は、24歳だよ」

「あ、私は22歳です」

「……まぁ、年齢なんか関係ないさ。さっきみたいに、気軽に話してくれないか? それに、洋介でいい」

「えー! ……はい……へへっ。うん!」

「ははは!」


あぁ、笑顔がほんま素敵や


それに、穏やかで紳士的で、少し真面目すぎるな、て思うけど、すごい居心地がいい。


「みうは、お休みの日は何をしてるの?」

「あー、今のところ休みないねん……」

「え! それは……大丈夫かい?」

「あ! でも時間が短いねん。そやから大丈夫!」

「……たまには、休んで羽根を伸ばすことも大切だよ?」

「ま、万博が終わるまでは……それからはいつもの定休日があるらしいわ」

「あそこの定休日は、いつだったかな?」

「火曜日らしいで」

「みうは、お休みが取れるようになったら、何をして過ごす予定なの?」

「うーん……何したらええんやろ」


毎日、時短で働いたかて持て余しとるのに、一日中、昭和で何したらええんよ


「趣味はないのかい?」

「うーん……昔は、本読んだり映画を観たりしてたかなぁ」

漫画アプリ見たり動画配信観たりしてた、やけどね、ほんまは


「映画を観るのが好きなのかい?」

「うん、そやね」

お、これは……誘われる?


「それは素敵な趣味だね」


あれれ?

なんや……そんなんないんや。期待してしもたわ、恥ずかしい


「……みう」

「なに?」

「今日のことは、親御さんには話すのかい?」

「あ〜、ちょっと今、離れて暮らしてて……そやから話さん思うわ」

「……心配されるだろうけど、話したほうがいいんじゃないかな」

「……うーん」

令和に繋がる電話でもあればええけどな……

あ、今はおばちゃんが親代わりやな


「アルバイト先を変えるように言われるんじゃないかな。親御さんは常に心配しているはずだから」

「……うーん」


「……それにしても不思議なんだが、何故、みうはあの男について行ったの? ……あの辺にたまたまいて、そこで無理やり連れて行かれたの?」


「うーん……なんや、後つけられてたみたいで……ほら少し前に通り過ぎた空き地、あそこにいた時に、声かけられて……なんやついてこいて言うから……」


「……あの空き地で誰かと待ち合わせでもしてたの?」

「……あ、いや……ちょっと、思い出の場所? みたいな」

「そうか……そこにただ居ただけやったのに、嫌な思いをしたんだね」

「ほんまや。洋介のおかげで助かったわ」


それからも洋介は、色んな話をしてくれる。私の話も聞いてくれる。ふと会話が途切れると、私を見て、優しく微笑んでくれる……あぁ、素敵やぁ


下宿屋に到着。

えー、もう着いたん? もう少し話したかったわ


「あの……ほんまおおきに」

「いや、当然のことをしただけだよ」

「……」

「……また、アベルにお邪魔してもいいかな?」

「も、もちろん! 待ってるで!」

「はは、良かった。それじゃあ、また」


洋介は、爽やかな笑顔で手を振って帰っていった。

……あぁ、素敵や



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