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S↔R ~令和女子、昭和に放り出される~ 「1970年」マジありえない文化なのに人情に泣ける。そして未来へ繋がる……  作者: 髙井菜是


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【6】幸子の暮らし

計量米びつ自体はすでに世の中にはあるけど、

幸子はそんなん買ってません

オロオロしたまま時間だけが過ぎる


幸子が帰ってきた


「ごめん、お……幸子、お米の計り方がわかんない……」

「えー? いつもどないしてんの?」

そう言いながら教えてくれた


こんなやり方知らない。実はご飯炊いたのも、学校の調理実習のときだけで、あのときはお米はあらかじめ計って配られてた。

結局、水の分量もわからなかった。


使えない、私


「ま、これから覚えたらええんちゃう?」


優しい、おばあちゃん、好き


「お……幸子、ありがとう!」

「さっきから何なん? なんで名前の前におって付けんねん」


おばあちゃんって言いそうなんだよ! でも内緒!

「え? そうかなー?」


お……幸子と一緒に晩御飯の準備をする

懐かしいなぁ、小さい頃よくやってた


昔から優しかったんだなぁ、好き


「いただきます」


2人で質素な晩御飯を食べる。

なんでタイムスリップしたんやろ、て言いかけて思った。この時代の人、タイムスリップって知っているのか。

聞くと、SF小説や漫画好きの友人からそんな話を聞いたことがあるらしい。


「何をやってて、みうはタイムスリップなんかしたん?」

「本当に私にもわからないんよ。ただ、写真を見てて……」

「写真?」

「うん、おばあちゃんの……」

と、言いかけて、なんとなくおばあちゃんが亡くなったことは言いづらいな、と思った。だって、もしかしたら目の前の幸子がおばあちゃんかもしれん


「おばあちゃんの?」

「あ、うん。……おばあちゃんの家でみんなでアルバム見ててね。気づいたら昭和にいたんよ」

「そのアルバムがタイムスリップの装置やったんかな?」

「……わかんない」


本当に、なんで私が昭和なんかに飛ばされたんやろ。神様が決めたのかな。なんか使命とかがあるのかな。


「映画とかだと、何かの使命があってそれを成し遂げたら戻れる、とかそういうのありがち」

「そうなんや。うちはあんまりその手のやつ詳しないからなぁ」

「うん、でもそういうのは作り話やし」

「そやなぁ、ま、いくら考えても神のみぞ知るっちゅうやっちゃな」


……そんな言葉、リアルで使う人おるんや


でも、本当にいくら考えたってわからないし、頭おかしくなりそうやから、あんまり考えたくない。そのうち、どうにかなるかもしれんし。うん、考えるのヤメヤメ!


晩御飯を食べ終わって麦茶を飲む。


「よし! 洗い物したら銭湯行くで。着替えは私ので我慢しいや! とりあえず下着だけ買ってきたわ」


……なんとおっしゃいました?


銭湯?


「え? なんで? わざわざ行かなくても家で入ればええやん」

「ここら辺のアパートにお風呂なんか付いてへんわ。うちらみんな銭湯やで」


え、お風呂が、ない?

そんなことある?


これ、地味に一番ショックかも。

和式トイレもイヤだけど、お風呂がない、て感覚がかなりのカルチャーショック!


おばあちゃんは好きだけど、昭和は嫌いだ


銭湯セットと着替えは、幸子が貸してくれることになった。人生初銭湯や……いややなぁ

温泉も、人が沢山いる中で裸になることに抵抗を感じるから、あまり行ったことがない。


イヤだイヤだイヤだイヤだ

そう思いながらなんとか済ませた


でも帰り道はなんか楽しい

お……幸子と昭和と令和の違いについて話しながら歩く


2人で笑いながらアパートに到着した。ドアを開けようとしたら中からテレビの音がする


あれ? 消したはず


「あー、やっぱり来たか」

幸子がつぶやいた


なんのことかわからなくて中を覗くと男の人が横になってテレビを見てる


え? え? もしかして……

「彼氏さん?」

「……うん」


わ! わ! おじいちゃんだ! やば! 初対面きたよー!


家の中に入りながら幸子が声をかける

「今日友達が泊まるから会われへんって電話したやんか」


彼氏さん、いや、おじいちゃんがムクっと起き上がる


わぁ、おじいちゃん! 私、孫だよ! 初めまして!

私はニヤニヤしながらおじいちゃんを見ていた。



「あ? 知らんわそんなん、追い出せや」



……え? なんて?


「今日だけやから……お願い」


おじいちゃんがおばあちゃんの前にズカズカと近づいてきて、パーン! と平手打ちをした


え! うそ! やめて!


「やめてー! なんで! なにするんよ!」

咄嗟におばあちゃんを庇おうとした。


「みう、ええから。茂(しげる)、お願い、今日だけは堪忍して」


……ん? シゲル?

あれ? おじいちゃんの名前は実(みのる)だよ?


「チッ」


シゲルと呼ばれた男は舌打ちして私を睨みつけて帰って行き、私はホッとした瞬間、膝がガクガクと震えだしてその場にへたり込んだ。


「みう、ごめんね、びっくりしたやろ? 普段は優しいんやけどね、お酒飲むと……」


ふぇ? はぁ……


あれ?

「シゲル? 彼氏さんの名前、シゲルっていうの?」

「え? うん、そやで?」


あれれ、おじいちゃんじゃないの?

え? そしたら……おばあちゃんじゃないの?


え、でも……


おばあちゃんが結婚したの何歳なんだろ……

でももしかしたらこの人と別れたあとに、おじいちゃんに出会うのかも


うん、きっとそうだ

それに、こいつは駄目だ! もしおばあちゃんじゃない幸子だとしても、こいつはダメ!


「幸子! DVはダメだよ! 別れないと!」


「でぃ? え? なに?」


あーもう!

「DV! 恋人や夫婦間での暴力のこと!」


「あぁ……うん、でも、アイツ良い奴なんよ」

そう言いながら、シゲルが飲んでいたであろう何かのお酒の瓶やグラスを片付けている。薄茶色っぽいお酒に赤いラベルが貼ってある。


何のお酒か知らんけど、酒くさい! めっちゃ嫌な気分!


暴力振るう男が良い奴なわけない!

これは絶対! 別れさせないと!


おばあちゃんの幸子だろうと、ただの幸子だろうと!


絶対別れさせる!

明日から早速!


「みう、明日は住むとこ決めてアルバイトの面接やで、頑張ってや」


……あ、ハーイ、頑張りマース


少しお喋りしながら布団に入ると、疲れてたんだろう、私はあっという間に眠りに落ち、泥のように眠った。



許すまじDV

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