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S↔R ~令和女子、昭和に放り出される~ 「1970年」マジありえない文化なのに人情に泣ける。そして未来へ繋がる……  作者: 髙井菜是


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55/65

【55】できること

日曜日。いつも通り朝10時にお店に行く。


うわぁ! 昨日と同じ! お客さんいっぱいや!

挨拶してサッとエプロンをつけてカウンターに入る。


はいはいはい、どんどんこなすよ〜

やっぱり日曜日だからか、家族連れが多いわ

今日は、コーヒーだけというより食べ物が多いみたい。フミさん大丈夫? カウンターの方も、色んな飲み物の注文が入ってむっちゃ忙しい。


結局昨日と同じ、14時に、和夫さんが私に休むように言ってくれて、賄いをいただく。

サッと済ませてすぐ働く。あっという間に16時になって、なぜかパタリとお客さんが減った。

……なんだったん


さっきまでの忙しさはなんだったんだ、と不思議になるくらい。テーブル席に2人ずつの、たった二組になった。

とは言え、洗い物の山! グラスも足りなくなるんやないか、というくらい出て、シンクにも置けず足元の奥の方にまとめて置いてある。


「みうちゃん、もう上がってええで」

「え! いやいや、これ片付けへんと!」

「……あぁ、今日はもう多分そないに忙しゅうならんと思うわ。ぼちぼちやるから大丈夫やで」


そやけど……

私は洗い物の山を見る


「はは。ほんま大丈夫や。おおきに、みうちゃん」

「……はい」


フミさんからお給料をもらう。


あ、そうだ

私は自分のバッグからあのメモ紙を取り出して、それを和夫さんに渡す。

「これ、時間があるときに見といてください」

和夫さんは首をかしげながら受け取る。


「あの……勝手にすみません。外国の人が来たときに、役に立つかなぁ、て」

「……みうちゃんが作ったんか」

「あ、それはまだ完成やないです。その内容で良かったら、ちゃんと作り直します」

「……すごいな」

「いやいや、ほんま、単語しかわからへんから、通じんかもしれんけど……あと、なんか足してほしいメニューがあったら教えてください」


和夫さんがジッと私を見る。

「……おおきに。あとで考えてみるわ」

「へへ。……じゃ、おつかれさまでした」

「おつかれさん。また明日も頼むわ」

「はい」


ペコッと頭を下げてアベルを出る。

なんか、役に立ててるみたいで嬉しい

顔が笑っちゃってることが自分でもわかるけど、気にしなーい。すれ違う人たち、どうせ知らん人ばっかりやしね。ふふふっ


今日も下宿屋でみんなで晩御飯。

私は最後の仕上げだけお手伝いや。おばちゃんがすり身にしていた魚を、形を整えて揚げていく。

魚のすり身が家で手作りできるやなんて、おばちゃんすごいわ

私はとにかく油が怖くて、離れたとこから投入しようとしたら、「危ないで!!」とむっちゃデカい声で言われて超ビビった。

油に近いとこからソッと入れんと、熱々の油が飛び跳ねてくるで! らしい。なるほど確かに


今日も勉強になったわぁ

典子ちゃんも日曜日は図書館でお勉強。弘子ちゃんはたまに残業してるみたいで、帰ったらすぐ銭湯に行き、急いで済ませてきているらしい。


弘子ちゃんが少し興奮気味に聞いて聞いてと言った。

「今度の公休のときな、入学金持って行くねん」

「わぁ! なんや実感湧いてくるなぁ」

「そやねん! もう1ヶ月とちょっとやしな。それ終わったらミシンも買わなあかんねん」


へぇ。ミシンまで買うんや。すごいな

すると典子ちゃんが驚いたような声を出した。

「えぇ! ミシンて……大丈夫なん?」


……そんな驚く? ちょ待って、また令和と常識が違う?

「あの……また途中でごめんやけど、ミシン買うって、そんな大変なことなん?」

「大変というか……高価な買い物やからなぁ」

「……そない?」

「あぁ……未来だとそうでもないん?」

「う……ごめん、買ったことないけど、そんな高価なイメージないなぁ」

「割賦で買うで。少しずつ返していくわ」


カップ?

「ご、ごめん……カップて何?」

「それも未来にあらへん言葉なん?」

「……私が知らんだけかも」

「私も詳しくはわからへんけど、何回かに分けて払うことやで」

「……あー! 分割払いのことか!」


私が納得したことで、話は進む。


ほんま、申し訳ないわ。私、そんなにアホとちゃうけどなぁ。勉強だってそれなりに……まぁ、普通やったし。そやけど、ほんま言葉を知らん。本とか読んだんがええんかな。私も典子ちゃんみたいに図書館行くか?

中学生のときに少しだけ小説にハマったけど、結局マンガの方が楽やったし、だんだんアニメ中心になってきてたもんなぁ。


みんなで後片付けをして、それぞれの部屋に戻る。

私は辞書と一緒に置いてある、よくわからん本を何冊か借りて部屋に戻った。前に住んでた人たちが置いていったものらしい。


スマホがないからなぁ、テレビを見るか本を読むぐらいしか、一人時間を過ごす方法があらへん


よし、布団に横になって……

待って、ダメやん。電気スタンドがない〜!

部屋の電気つけたままやと、眠くなったときにわざわざ立たなあかんやん。リモコンもないし。

……しゃあない、座ったまま読も


しばらく頑張ったけど、感覚が違うのか、全然頭に入ってこんし、ひたすら眠いだけや。

あーもー! 寝よ寝よ!


電気を消して横になる。

今度また本屋行って、ライトノベルでも買お。いや、その前に電気スタンドか?

あかん、欲しいもの増えてきたわ……

すとーんと、眠りに落ちた。


翌日も朝10時からアベルのバイトや

今日は14時までやな


まだ夏休みとは言えさすがに月曜日ってだけあって、昨日ほどお客さんはいない。

エプロンをつけてカウンターに入るとすぐに和夫さんが話しかけてきた。

「みうちゃん、昨日のやけどな、あの英語の」

「あ、はい。どうでした? 何か他にもあります?」


色々話し合って、追加するメニューが決まった。

「ほな、あとはまた帰ってから書いてきますね」

「おおきに。助かるわ」

「……ここには置いてないんですか? 和英辞典」

「……なんかあったと思うなぁ」

そう言って店内を見渡す。

「ちょっと探してくるわ。頼めるか?」

「あぁ、はい」

和夫さんは奥の階段を上がっていった。


5分もせずに降りてきた。

「あったわ、これやな」

和英辞典を見せながら言った。

そんなすぐに見つかるんかーい


「こんなもんで、ほんまに外人と話せるんやな」

「外国人ですね。話すのは難しいかも……」

「……どういうことや?」

「あ〜。使い方の例は書いてあるけど、全部に当てはまらんやろし、会話中にこれを開いて文章を組み立てるんは、ちょっと無理があるんやないですか?」


う、そないにショックそうな顔せんといて。私が意地悪言うてるみたいや

「あの、ここに、英語は話せません、て書いとるから多分大丈夫ですよ」

「そうか……」

なんか、ガッカリしてる? 英語話したかったん?


「ほな、忙しゅうなるまではこの追加の分、調べて書き出しますね」

「おおきに。それが終わったら昼時になる前に賄いやで」

「はーい」


ちゃちゃっと調べてメモ紙に書く。すぐに賄いをいただいて、ランチタイムや。

お昼時はキッチリ忙しいわ。すぐに14時になった。


お給料をもらって、和夫さんに伝える。

「ほな、あのメモ紙、帰ってから仕上げて明日持ってきますね」

「あぁ、すまんな、ほんま助かるわ」

「あ、そんな期待せんといてくださいよ」

「いや、ほんま助かる」

「へへ。それじゃあ、おつかれさまです」

「おつかれさん。また明日も頼むわな」

「はーい」


いつものやり取りでアベルを出る。

今日は帰ってすぐこれやろう。ライトノベルも電気スタンドも、また今度や



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