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S↔R ~令和女子、昭和に放り出される~ 「1970年」マジありえない文化なのに人情に泣ける。そして未来へ繋がる……  作者: 髙井菜是


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【53】しっくり

商店街をプラプラ歩く。

……本当、賑やかだよなぁ。万博の影響で人が多いからなのか、そもそも昭和がこんな感じなのか……


歩きタバコに顔をしかめながら本屋さんに入る。


雑誌コーナーを横目にとりあえず店内を見てまわる。

実用書……小説……マンガ……

ビニールのカバーがしてないんだよなぁ。全部読まれてまうやん、こんなん

文房具コーナー。ふむふむ


……そうや

アレ、作ってみよかな。和夫さんが困らん程度に

あーでもなぁ、スマホ検索ができんからなぁ……図書館か? うわ、めんどくさ……

辞書買う? いやぁ、お金もったいないな。おばちゃん持ってへんかな


とりあえず、書くもんだけ買っとこ。マジックと、なんかこう……厚めの紙……あぁ、これでええわ


レジでお金を払って自分のバッグに入れる。紙は折れないように丸めておく。


……職場のために自腹切るやなんて初めてや

でも……なんやほっとかれへん


……辞書も売ってあるよね? 実用書になるのかなぁ。買わんけど、一応見てみよ


実用書のコーナーで探してみると、すぐに見つかった。だけど……


なんか、色々あるやん。

え、辞書って、そんなに種類あるん?


……英和? 和英? なに? 

それぞれ手に取ってめくってみる。


……なるほど、そういうことか。和英辞典やな。覚えたで


ちょっとだけ立ち読みして店を出る。商店街を少しブラブラして……うーん、まだ時間あるな

一旦下宿屋に戻ろかな……そやな、荷物もあるし


下宿屋に戻るとすでに静子さんの靴はなくなっていた。ちょっとホッとしながら靴を脱ぐ。

「ただいまぁ」


おばちゃんの声が台所から聞こえてきた。

「おかえりぃ」

ちょっと聞いてみよ。台所へ行くとおばちゃんは晩御飯の準備をしてる。

「おばちゃーん、辞書持ってる? 和英辞典」

「辞書ぉ? あるで。座敷の棚や。見てみ」

「はぁい」


座敷に行って、謎の置物とか飾りのような物とか、色々置いてある棚を探すとすぐに見つけた。

色んな種類が何冊か。

やっぱりスマホがないと、こういうので調べるしかないんやろなぁ


おばちゃんが、新聞の折り込みチラシの裏が白いやつをカットして、メモ紙代わりにして置いている。それを一枚もらい、ペン立てからボールペンを借りる。


今日はもうそんなに時間がないから、とりあえずどんな感じになるか書いてみる。

明日これを和夫さんに見せて、あと何が必要か聞いてくるか


よし、そろそろ向かうか

私はまた台所へ行き、おばちゃんに声をかけてから幸子のアパートへ行く。


アパートの下で大家さんに会った。

「こんにちは〜」

「あらぁ、こんにちは。幸子ちゃん帰ってはるよ」

「ありがとうございます」


ペコッと頭を下げて階段を上がる。大家さんともすっかり顔馴染みになった。

……最初は、めっちゃ見てくるやーん、て思ったけど、幸子が気にしてないからなぁ。


コンコンコン

しばらく待つ。勝手に入ってええで、て言われるけど、どうしても抵抗があってできない。


ガチャッ

「なんやみうかぁ、入ってええのに」

「そやからそれ無理や言うてるやーん。おじゃましまーす」


いつものように台所を抜けて部屋に入る。小さなテーブルの横に座ると、幸子が麦茶を入れてくれる。

「幸子、今日な、静子さんと会ったで」

幸子の動きがピタッと止まる。

「……叔母ちゃんと?」

「うん。まだ言うてへんのやろ。幸子は元気か、聞かれたから、元気です、しか言うてへんで」

「……うん、まだ」

「たまには家に帰ってこい、やて」

「……うん」


幸子が麦茶をテーブルに置く。

「ありがとう。……体調どない?」

「うん……特に変わりなしや」

「私はようわからんけど、早よ結婚したほうがええんとちゃう?」

「うーん……うちもそうしたいねんけど」


「……茂さんが、まだ?」

「うん……色々忙しいねんて」

「……いつになったら忙しゅうなくなんねん」

「うん……」

「とりあえず先に静子さんに言うわけにいかんの?」

「……茂が、一緒に行くまで待て、て」

「……いつになんねん」

「……」

「お酒は?」

「飲んでへんで。……多分……最近ほんま忙しいみたいで、あんまここにこーへんねん」

「いつまで待たすんや。幸子は結婚したら仕事辞めるんやろ?」

……この時代はそうすんねやろ? 意味わからんけど


「うん……」

「会社のほうには? まだ?」

「まだや……お互いの両親に挨拶してからやないと」

「早よしてほしいわ、茂さん」

「うん……」


なんか最近、幸子が幸子らしくないというか……初めて会った頃の元気はどこいったんやろ


「……静子さんて、なんや、ちょっと変わってへん?」

「……叔母ちゃん? 変わってる?」

「あ、いや……なんか不思議なことに興味持ってるというか……熱い人?」

「え? なに?」

「うーん……なんかな? 私の家族のことむっちゃ聞いてくるし、私の手ぇ握って離してくれへんし」

「なんそれ!? 叔母ちゃんがそないなことしたん!?」

「そやねん」


幸子が首をかしげる。

「意味わからんわ……叔母ちゃん何がしたいねん」

「なんかな、未来の出生数とか、流行りの名前とか知りたい言うてたで」

「……そんなん聞いたことないわ」

「あぁ……あれかな、未来がどんなとこか興味あったんかもしれんな」

「あぁ……正志に聞いたんやな」

「ほんまアイツ、ベラベラ喋りよって」

「弟が……堪忍な」

「いやいや! ……まぁええけど」


麦茶をひと口飲む。

「幸子んちの家系て、なんや不思議なチカラ持ってる人がおるらしいな」

「あぁ、そうらしいな。うちは正志しか知らんけどな」

「もしかしたら幸子にもあるんかもしれんやん」

「うち!? いやぁ、何もない思うで?」

「あはは! アレや、宇宙人を呼び寄せる能力や」

「……ふふ、なるほどあれか」

「そや、幸子の能力は宇宙人との交信や」

「ほな、またお願いして、みうを宇宙に帰したらんと」

「ほんま、頼むでぇ」

「あはははは」


そうや、幸子はそうやって大笑いしてるほうが可愛いわ。茂! 早よ幸子のこと安心させたれよ!


幸子が私のことを見る。え、なに?

「……最初の頃は」

な、なになに

「えらいスカした子やと思てたけど、だいぶ馴染んだな?」


「……スカした? え? どういう意味?」

「え? えーっと……なんて言うんやろ……なんやこう……東京もんみたいな話し方やったからな、カッコつけてはるんやろなぁ、て」

「え! 私、そんなやった!?」

そうなんかな、自覚ないけど……えー、カッコつけてたように見えてたん? 恥ずかし!

「……確かに、未来で私の周りに、コテコテの人あんまおらんかもしれん……こっちはみんなコテコテやからなぁ」

「コテコテ!? うちら、コテコテなん!?」

「……そやな」

「……意識したことなかったわ」


お互い顔を見合わせて、ふふっと笑う。


それから、喫茶店の話や和夫さんの話をする。弘子ちゃんや典子ちゃんの話もしたいけど……

「あかん、もうこんな時間や。銭湯行かな。幸子もやろ?」

「ほんまや……一緒行こか? 久しぶりに」

「ほんま? ええな、行こ行こ!」


幸子は銭湯セットをパパっと準備する。2人で下宿屋へ向かい、今度は私が準備をして銭湯へ。


いっぱい話していっぱい笑う。幸子と一緒にいると、なんやろ……しっくりくる? 気が合うっていうのかな……柚希ともちょっと違う。


銭湯を出て下宿屋に着いた。

私は、一緒にご飯食べていかん? て聞いたけど、明日も仕事やから、て。半ドンやねん、て。

何回聞いても変な言葉。ドンてなんやねん


「ほな、また遊び行くな、気ぃつけてな」

「うん! また来てよー」

幸子は手を振ってアパートへ帰って行った。



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