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S↔R ~令和女子、昭和に放り出される~ 「1970年」マジありえない文化なのに人情に泣ける。そして未来へ繋がる……  作者: 髙井菜是


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【51】意外な特技?

「ご、ごめん、ようさい学校て、何?」

前に万博で、弘子ちゃんが話してたけど、その時は流してた……

話の途中で邪魔して、本当に申し訳ないけど、ちゃんと聞きたい!


みんなで説明してくれた。

なるほど……

「洋服の作り方を勉強するところ?」

「あー、うん、もちろんそれもなんやけど、うちは、デザイン科な」

「デザイン……え、デザイナー?」

「そそ」


えーっと、デザイナー専門学校、的な?


「ありがとう、わかった。ごめんね、話の途中で」

「ええよ。未来とは呼び名がちゃうねんな」

「それで、弘子ちゃんは仕事辞めて洋裁学校に行くん?」

「え? 辞めへんで? 学校は夜や」

「え!?」


「仕事しながら、夜は学校行く、て、この前弘子ちゃん言うてたやん。みうちゃん覚えてへん?」

うー、そうだったような……ごめん、覚えてない


「あんた、そんな生活して大丈夫か!?」

おばちゃん。

「ほんまに行くん? いつから!?」

典子ちゃん。

「銭湯はどないするん!?」

私。


「ちょ、ちょ、そんな一気に聞かれても……」

可笑しそうに笑う弘子ちゃん。

みんな、黙って聞く。

「銭湯て……ふふ。学校終わってからでも間に合うでな、心配いらんで」

「秋……10月から入学や。仕事もな、頼んで早番にしてもらうねん」

「学校はな、2年なんよ。2年間頑張れば、夢に近づけるんや。うち、頑張るで」


……すごい。万博のときは、夢の話やったし、へぇすごいな、くらいにしか思わんかったけど、ほんまに、やるんや……


「そうか……夢のため、頑張るんやな。よっしゃ! おばちゃん張り切って応援するからなぁ!」


おばちゃん……

「私も……何か、何か協力するよ!」


「弘子ちゃん……困ったときは何でも言うてよ」


「へへっ。みんなおおきに! うち、頑張るわ!」


あぁ、キレイやなぁ。キラキラしてる

いいなぁ……


おばちゃんも、若い頃たくさん頑張ったんだよなぁ……

典子ちゃんも休みのときは図書館通いやし

弘子ちゃんなんか仕事しながら学校やなんて……


みんなすごいなぁ

私は……

布団に横になって色々考えてるうちに、眠りについた。


翌朝。

今日は平日やから14時までやな

たった4時間だけど……

喫茶アベルに行き、いつも通り淡々と働く。


万博の影響なのか私にはわからへんけど、毎日結構忙しい。

今日は外国の人が来た。

「いらっしゃいませー」

「……いらっしゃい」


ん?なんか和夫さん、変

おふたり様に、お冷やとおしぼりを持っていく。

……メニュー、読めるんかな? 全部日本語やけど

さすがに私、ペラペラではないよ?


コーヒーは聞き取れた。2つね、OK

あと、なに? なんて?

スパゲッティは、わかる、けど他の部分がよくわからへんわ。うーん、まぁいいや

「オンリー、ワン、チョイス」

味は一種類ですよ〜って、伝わる?

お、頷いてる、通じたんやな

「カフィ、ツー。スパゲッティ、ツー。OK?」

指を2本立ててジェスチャーや、いけるか?

おぉ、頷いてる。良かった、いけたわ


和夫さんに注文を記入した伝票を渡す。

コーヒー2、ナポリタン2。


和夫さんが目を見開いて、伝票とお客さんと私を見て言った。

「みうちゃん、英語がわかるんか?」


「え? いや、わかる……というか、聞き取れたとこだけを確認して、頷いてたから、多分大丈夫やと……」


「……」

いやだからそのすごい目ヂカラ、怖いから


あ、でも……

「もしかしたら、ナポリタン見てちょっとびっくりされるかも……スパゲッティて言ってたけど、ナポリタンは確か日本独自のものらしいんで」


「そう……なんか?」

「はい……多分」

「……わかった」


和夫さんは厨房に伝票を持っていき、カウンターに戻ってコーヒーを淹れる。

そして私のほうに差し出しながら、真剣な顔で、

「……行けるか?」

と聞いてきた。

「……持っていくだけですよね?」

「……」

だから目ヂカラよ


私はコーヒーを持っていって、

「お待たせしましたー。カフィ」

と、適当に伝えた。すると、

「Thank you」

と返ってきた。よしよし


振り返ると、和夫さんがジッと見てる。

はぁ? なに? 仕事仕事、忙しいんやから


カウンターの中に入ると和夫さんがすごい勢いで近づいてきた。は? なに? こわっ


「……英語、わかるんか?」

「……あの、ほんと、わかりません、て。適当です」

「……適当!?」

はい、出た、セクシーポーズ。目を瞑って手の甲をおでこに当てる。

考え込むときの癖や


「……あの、ほんま、忙しいんで……ほら、まだアイスクリーム出してないとこありますよ? ホットケーキも途中ちゃいます?」


和夫さんはハッとして動き出す。


バタバタ動いてると、ナポリタンができたから、厨房で受け取って持っていく。どんな反応すんねやろ……また適当に説明しとこかな

「ジャパニーズ、スパゲッティ」

どうだ?

おぉ、驚いてる驚いてる。ウケる

「Japanese?」

「Yes。イッツ、ナポリタン」

「ナポ?」

「ナ、ポ、リ、タン」

「ナ、ポ、リ、タ!」

「YesYes!」

「Oh〜!」


ふふ、おもしろ

「Enjoy!」

「Thank you!」


クルッと振り返ると、また和夫さんがジッと見てる。

もうええっちゅうねん

そんな珍しいんやろか……この時代って、そうなの?

ファミレスでバイトしてるとき、外国人のお客さんなんか特別珍しくもなかったからな、むっちゃおったし


カウンターの中に入ると、今度は常連の吉村さんが話しかけてきた。

「みーちゃん、あんたすごいな、外人と話せるんか……わし、よー話さんわ」


外人?

「外国人ですね。簡単な単語を並べてるだけですよ」

「いやぁ、大したもんやわ、わしは外人が近づいてきただけで、おっとろしゅうて」


……何言うてんのやろ

「ハハ」

適当に流しとこー


あ、会計は和夫さんの仕事やけど、大丈夫やろか……

いやでも、さすがに今までかて外国人のお客さんが全くなかったわけないやろし、大丈夫やろ


バタバタとやってるうちに、外国人のお会計。

和夫さんは、小さく深呼吸してレジに向かう。

……そない?


ちょっと心配になって見ていると、……あぁ、ダメかも、お互い首をかしげてる。

しゃあない、私かて、英語でお会計はやったことないんやで? レジが全部表示してくれてたからね


レジに向かうと、和夫さんは、日本語で金額を言ってる。

うーん、多分、通じてへんな

私は伝票に書いてある金額を見て、メモ用紙に¥マークをつけて金額を書いて、そのメモ用紙をお客さんに見せた。


それでやっと、アーだか、ヤーだか言いながら、日本円で支払いをしてくれた。

ったく、日本にくるなら少しは日本語勉強して来いよ!


心の中で毒づいていたら、和夫さんがため息をつきながらお礼を言ってくれた。

……おつかれさんです

単位が違うことがあっても、基本的に英数字は共通ですよ、多分、と伝えたら、

「……英数字?」

あぁ……

私はメモ用紙に「1、2、3」と書いて

「これが、英数字」

次は「一、二、三」と書いて

「これが漢数字で、こっちの1、2、3は共通です」

「はぁー、なるほど、すごいな」

と、えらい感心してくれた。


「……今まで、どうしてたんですか?」

「……」

「……え?」

「……注文もわからんから、帰っていってたな」

……ウソでしょ

「……私も、英語はわからへんけど、ひとつだけ」

和夫さんが真剣な目で私を見る。

「コーヒーでは、通じません。カフィ」

「か、かふい」

「カフィ」

「かふい」

「……仕事しましょう」

「……そやな」


……なんやろ

ほんま私は英語はできん。でもこの時代の人は馴染みもないんやろな。

全く得意じゃないことで褒められてもビミョー


予定通り、14時には帰っていいよ、と言われ、バイト代をもらって下宿屋に帰る。

うーん、早すぎる。何したらええんやろ。

みんなまだ仕事だよなぁ


考えてるうちに下宿屋に着いた。

「ただいまぁ」


あれ?

玄関に見たことない靴がある。

とりあえず部屋に荷物を置きにいって、台所を覗くけど、誰もいない。


すると座敷からおばちゃんがパッと顔を出した。

「なんや、みうちゃん早かったなぁ」

「うん、今日はね。ただいま」

「おかえりぃ。ちょい、ちょっとおいで」


手を、招くようにちょいちょい、としてる

え

お客さんなんだよね……行ってええの

え〜

誰やろ



1、2、3って、「英数字」と言いますよねー?

本当は「算用数字」「アラビア数字」らしいけど、そんな呼び方したことないです。

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