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S↔R ~令和女子、昭和に放り出される~ 「1970年」マジありえない文化なのに人情に泣ける。そして未来へ繋がる……  作者: 髙井菜是


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【50】馴染んできた

いつものように、余裕のある朝。

相変わらず首をかしげながらのお料理教室や


……おばちゃんの「料理は慣れ」の話を聞いても、次元が違い過ぎて参考になれへんわ


「おはよう、みうちゃん。今日も頑張ってるなぁ」

「弘子ちゃん、おはよう。今日はお休みなんやろ?」


お休みの日の弘子ちゃんは、キッチリお団子やなくて後ろで一つ結びにしてる。

「そやねん。けど、朝ごはん食べたらちょっと出かけてくるわ」


いつも通りのルーティンをこなして、弘子ちゃんは出かけていった。

典子ちゃんは今週は当番や、て言ってとっくに出勤している。

私は、今日はたまたま上手に焼けた太刀魚を食べる。

……この子、太刀魚っていうんやなぁ、覚えたで


食べ終わって、おばちゃんと2人でお茶を飲む。最近、朝のこの時間は、あの話を聞いて以来、2人だけの女子トークタイムになってる。


「みうちゃんの初恋は5歳やったなぁ。未来の人はなんでも進んどるなぁ」

「おばちゃんかて、毛虫のときは6歳やったんやろ? そのときには好きになってたんちゃう?」

「そうなんかなぁ。……確かに格好良いお兄さんやと思ったかもなぁ」

「……待って、結婚のとき、写真撮った、て言うてたよね? ……今もあるん?」

「あるで?」

「えー!! 見たい見たい!」

「……そぉかぁ?」

おばちゃんは嬉しそうに笑って「ちょっと待っててな」と言って台所を出ていった。


思い出話で聞いたおばちゃんの若い頃……私の中では、義雄さんは、クールなイケメンになってる。どんな感じなんやろ、気になる〜!


おばちゃんが台所に戻ってきて座りながら言う。

「陽に当たるとなぁ、劣化するから普段は箱に閉まってんねん」


大切にしてるんやなぁ……なんか緊張してきた。たった1枚の大事な写真。


写真立てに入った写真を両手で受け取る。

そこに写る2人……


義雄さんは立って、千代子ちゃんは座ってる。

「千代子ちゃん、めちゃくちゃ可愛い!」

「千代子ちゃんて、あんた……」

おばちゃんは呆れたように笑う。

だって、千代子ちゃん、て感じやもん。16歳……くりくりとした目に、小さい口。ふっくらとしたほっぺた。アイドルみたい。そして……


「……義雄さん、やば」

「やば?」

「あ、えっと……」

昭和、舐めてた……ヤバすぎる

「……こんなカッコイイ人、私、会ったことないよ」

「男前やろ?」


ものすごい、なんやろ、キリッとしてる。ちょっと意地悪そうな目、よく見えんけど、多分二重やな。鼻もシュッとしてて、口は大きすぎず小さすぎず、賢そうに引き締まってる。

「顔、整ってるわ〜。目が少しキツいところがまた……うん、男前やね」

「これがな、笑うともっと素敵なんやで?」


おばちゃんは、義雄さんの話をするときは、可愛らしい女の子、て感じの笑顔になる。

今も、恋してるんやろな……戦争さえなかったら……


「おばちゃんありがとう。2人、お似合いやで」

「おおきに」

そう言って写真立てを受け取り、一度眺めて、ふふっ、と笑い、台所を出ていった。

また大切に仕舞うんだろう。


その後、おばちゃんは掃除という名の井戸端会議。私はバイト。


もうすぐ8月も終わる。私はまだ……「何か」を成し遂げてないのかな、令和に戻れない。

だけど、食べるにも住むにもお金がいる、働かないと。


喫茶店のバイトは、料理が苦手な私でも、ホールの方は向いてるみたい。余裕でこなしてる。常連さんも優しい人ばかり。

バイト終わりには、毎日じゃないけど幸子に会いに行って少しだけ話して帰ってくる。


カランカラン……

「おはようございます」

「おはよう、みうちゃん」

レジ奥の物置に、いつも通り荷物を置いて厨房にも挨拶。

「おはようございます」

「はい、おはよう」


和夫さんもフミさんも優しいし。


エプロンを着けて、さぁ、働くぞ。


忙しいけど、淡々とこなす。

カランカラン……


あ、またこの人や。50歳くらいかな? 大人しいおじさん。3日に1回くらいくるから常連さんなのかと思ってたら、和夫さんが、前はたまにしか来てなかった、て。

ま、フーン、て感じ。


「いらっしゃいませ〜」

カウンターに座ったおじに、おしぼりとお冷やを出す。

「ありがとう、みーちゃん。今日もコーヒーな」

「はい」


私が常連さんから「みーちゃん」と呼ばれているのを聞いて、このおじもそう呼ぶようになった。


カウンターの中に戻ると、おじが話しかけてきた。

「みーちゃんは、甘いもの好きかぁ?」

「え? あーはい。好きです」

「これ……良かったら」

そう言って、缶入りのクッキーを差し出した。

「え?」

「あ、いや、な、もらったんやけどな、わし甘い物食べへんから……」

「えっと……」


横でコーヒーを淹れてる和夫さんをチラッと見ると、頷いてくれた。

「……あー、ありがとう、ございます」

なんか、親戚のおじちゃんみたいやな。下宿屋で、みんなで食べよーっと。


とりあえずカウンターの下に降ろしておく。


カランカラン……


お兄さんが2人入ってきた。

すると和夫さんに向かって、

「こんにちは!」

と、お辞儀をする。

「おう、いらっしゃい」


お冷やの準備をしながら、知り合いかな? と首をかしげていると、和夫さんがボソッと、

「後輩や」

と言った。

あぁ、また後輩さんか、みんな礼儀正しいな


毎日色んな人が来るけど、後輩さんたちはみんな、和夫さんにピシッと挨拶するし、なんなら私にまで綺麗な姿勢で頭を下げてくる。……なんか、私にまでそんなに礼儀正しくされると、申し訳ない気がしてくる


あれっぽい、ヤンキーマンガじゃなくて……なんだっけ、暴走族? とかいう世界線のマンガの、なんかリーダー的な人に挨拶する下の人たち、みたいな


ランチタイムが終わって少しヒマな時に聞いてみた。

「和夫さんて、もしかして暴走族のリーダーですか?」

「暴走族?」


あれ? 通じない?

「あのー、なんか、集団でバイク乗り回す人たち」

「……ああ、カミナリ族のことか」


なにそれ!


「……なんや急に」

「あ、いや、なんとなく……」

「そんな贅沢な遊びしたことないわ」

「……贅沢?」

「贅沢やろ、あんな高価なもん、買う余裕なかったわ」


あれれ? なんか、思ってたんとちゃう……

2人で首をかしげる。

「……カミナリ族が、どないしたん」

「あ、いや……それが何なのか、わからへんけど、何かのグループのリーダーぽいなぁ、て」

「……さあな」


また変な間!

「……リーダーやったんですね」

「……わしはそんなつもりなかったで」

「……なるほど、周りの人が、勝手に慕ってきた、と」

「……」

「……」

カランカラン……

「ほらお客さんや、アホ言うてへんと仕事や」

「いらっしゃいませー!」

あーもう、逃げられた


仕事終わりにお給料をもらう。

「みうちゃん、ほんまにええんか? ずっと休みなしで」

「万博が終わるまでは忙しいんですよね? 私なら別に……他にすることもないし、大丈夫です」

「……9月13日までやで? ほぼ1ヶ月休みなしや」


うーん……毎日来ちゃうとバイト代払うのも大変なのかもしれん

「そしたら、時間短縮は、どうでしょう」

「……時間短縮?」

「一番忙しいのは、お昼時ですよね?」

「そやな」

「今は16時までやけど、15時とか……14時とか?」

「……そやな、ほな、土曜、日曜、祭日(さいじつ)は16時、平日は14時、忙しいときは延長をお願いする感じでどうやろ」


さいじつ……あ、祝祭日のことやな

「はい!」

「休みたいときは、いつでも言うてな。電話してくれたらええから」

優しい〜


下宿屋へ帰ると、玄関に弘子ちゃんの靴がある。帰ってきてるんやな〜

「ただいま〜」

台所へ行っておばちゃんに、もらったクッキーをあげる。

「なんかね、お客さんがくれた」

「へぇ、良かったなぁ」

「ここ置いといて〜。みんなで好きに食べよ」


銭湯を済ませて、台所で晩御飯の準備のお手伝い。


座敷でみんなで晩御飯を食べる。

「今日は弘子ちゃんは何してたーん?」

典子ちゃんが弘子ちゃんに聞く。そうそう、何してたんやろ。

弘子ちゃんを見ると、目を逸らしてなんかモジモジしてる。え、なに? まさか……彼氏、とか!?


「……あんなぁ」

うんうん!

「……洋裁学校のパンフレット貰いに行っててん」


……ようさい学校て、何



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