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S↔R ~令和女子、昭和に放り出される~ 「1970年」マジありえない文化なのに人情に泣ける。そして未来へ繋がる……  作者: 髙井菜是


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【4】違和感の正体は「1970」

1970年て、いつ?

「待っ、ちょ、え? え? いやいや嘘ばっかり! それはないわぁ! ないない!」


怪訝な顔で幸子にジッと見られる。嘘でも冗談でもなさそうな顔。


「……あの、なんか、今日の日付のわかるものって、ある?」

「今日の日付……うち新聞取ってないからなぁ……うちに来てテレビ見てみい、テレビはあるで」


テレビか、テレビで日付わかるかな?

まぁ、もうなんでもいい、ヒントが欲しい!


「お願いします」


2階へ続く外階段を登る。サビサビの手摺り、これ大丈夫?


幸子がドアをカチャっと開ける。


「……いや、カギは?」

「へ? 昼はかけてへんで?」


はいもういいです、訳わからんけどわかりました、常識が違いすぎることが


「おじゃましまぁす」

今日2回目の知らない人のお宅訪問。


「その辺適当に座り。麦茶しかないで?」


あ、麦茶は知ってる、良かった


しかし狭い、一人暮らしなんだろうけど、それにしても狭い。

狭い台所を通って奥の畳の部屋に置いてある、小さなテーブルのところに座ると正面に小さなテレビがある……テレビ? だよね?

なんか、小さいけどデカい! なんか奥行きが!

……えっと、リモコンは? リモコンはどこにあるんだろう?


私がキョロキョロしてると幸子が麦茶を持ってきてくれた。


「そんな珍しいか? 特になんも置いてへんで?」


そう、確かに物がほとんどない。


「あ、いや、リモコンどこかなって」

「りもこん?」


待って、それも伝わらないの?


「あの、これって……テレビ?」

「そやで? 電話だけじゃなくてテレビも初めてかいな」


いや、違うけど、違わない


幸子がテレビのところに行って何かをカチッとするとテレビがついた。不思議なつきかたで。


一応、カラーだ、白黒ではないぞ。


チャンネルをカチカチ回しながら変えてる。

回すの好きやな……

そんなしょうもないことしか考えられない。


テレビに映るのは、知らない人ばかり。どのチャンネルに変えてもらっても、知らない人ばかり。

コマーシャルも見たことない。


涙が出てきた。


これ、多分、本当だ。

本当に、昔の世界にきてしまったんだ。静かに泣いていると、幸子が黙ったまま背中をさすってくれた。

ひとしきり泣いたあと、冷静にまた質問した。


「今、西暦何年?」

「1970年、昭和45年やで?」


昭和……昭和って……戦争があった時代だよね?


「……幸子は、何年生まれなの?」

「うち? うちは昭和23年」

「え? えっと、戦争は?」

「いややなぁ! うちは戦後生まれや!」


いや、よくわかんない


「うちも質問していい? みうはどこからきたん? 戦前とかやないよな?」


ちょ、なんでそうなる


「私は西暦2026年、令和8年だよ」

「……えー!!! 未来? 未来からきたの?」

「うん……そうみたい」

また少し泣けてきた。


「れ、い、わ? 昭和は終わったんやね」


あ、言って良かったのかな?

なんかよく映画とかで、過去に行ったら未来のことは言っちゃいけない、とかあるよね。


「みうは未来からきたのに、何で電話もテレビも知らんの?」

「知らないんじゃなくて、形が全く違うんだよ、電話なんて、このくらいだよ?」


手でスマホサイズを作ってみる


「しかも、持ち歩けるんだから」

「は? 電話を? 持ち歩く? なんで? なんであんなもの持ち歩くん?」


なんで、て……


「便利やん」

「うーん、ようわからん! 未来人はそんなに電話が好きなんか」


違う、なんかずれてる

それに、そんなことはどうでもいい!

問題は、帰れるか、だ


「どうすれば帰れるんだろう。帰りたい!」


家に帰りたいよ! 明日はおばあちゃんのお通夜だ。写真を選んでたんだ。


「うーん、それはわからへんけど……」


そりゃそうだよね、わかるわけないよね

……私まさかこのまま一生昭和で生きていくの?

いやだ! 絶対いやだ! こんな何も無い不便なところで生きていけない! 知り合いもいない! 天涯孤独やん! 

お母さん!


私はテーブルに肘を付き、頭を抱えて考える。


……もし、このまま生きていったら、今、いや、現代では何歳? えっと……1970年だから、2026年から引いて……足して……78!

現代で78歳! 嫌だー!!


ん? 78? ……あ、おばあちゃんと同じだ。

え? え? 待って、てことは……

おばあちゃんも今の時代に存在してる!

あ! 同じ歳だ! 22歳のおばあちゃんがどこかにいるんだ!

会いたい! おばあちゃん! 助けて!


……いや、今のおばあちゃんに会えたとしても、「私、孫です、助けてください」なんて突然言って信じてくれるわけがない。


でも……会いたい。


知らない人だらけの昭和で生きていくなんて、辛すぎる!



ピンチのときの「お母さん!」

からの「おばあちゃん!!」

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