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S↔R ~令和女子、昭和に放り出される~ 「1970年」マジありえない文化なのに人情に泣ける。そして未来へ繋がる……  作者: 髙井菜是


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【3】違和感の正体

違和感!

なんか変わった人多いなぁ。大阪のどこなんだろ

商店街に流れてる音楽もなんか……古くない?


うわっ。あそこのお店、おじさんたちが大騒ぎしてる。


居酒屋のような定食屋のような、外に椅子やテーブルが置いてあるようなところでおじさん達がお酒を飲んでいるようだ。

チラッと見ながら通り過ぎようとしたらおじさん達の大きな声が聞こえてきた。


「PL学園が優勝やろ!」 「そやそや!」 「それより万博行ったか?」 「いやぁもう息子が連れてけ連れてけうるさいねん」 「おー、うちは来週連れて行くで!」


ぴーえる学園? なにそれ

万博って、あの万博? 去年で終わったよね?


「あー、あんまジロジロ見んとき、絡まれるで」


幸子に注意されてすぐ目を逸らす。

昼間っからお酒飲んで酔っ払ってるんだね。だから終わった万博の話なんかしてるんだ。ヤバくない?


だいたい未だに万博の旗があちこちに飾ってあるって……。終わったんだから片付ければいいのに。

……ん? 万博って、こんなデザインだったかな? あの特徴的なキャラクターは見当たらないなぁ


それにしてもタバコ臭い!


周りをみると、あちこちでおじさんたちが歩きタバコしてる。

信じられない! 条例があるでしょうに!


「ねぇ、幸子。この辺りは条例ないの? 歩きタバコって禁止だよね?」

「へ? なにそれ?」


ん? なに? それも伝わらないの? もしかして幸子って山奥で生活してる人で最近降りてきたのかな?


なんだか不思議な国に来たような感覚になってきた頃に古い木造のアパートが見えてきた。


「ここやで、ちょっと待ってな」


幸子が一階の部屋をノックする

「おばちゃーん! 藤(ふじ)原(わら)ですー!」


しばらくするとおばちゃんが出てきた。

なんだか、昔の映画に出てきそうな、白いエプロンをつけてお団子結びしているおばちゃんだ。


「なんや幸子ちゃんか、どないしたん?」

「おばちゃん、あんなぁ、ちょっと困ってる子おってな、電話貸してほしいねん」

「おーええで」


おばちゃんと幸子がこちらを見る


「あ、こんにちは。私、松本と言います。突然すみません、電話を貸して頂きたいんですが」

「うん、ええでぇ、上がり」


ん? 上がる? いやスマホ持ってきてくれたらいいんだけど……もしかして、ここにもない? 家(いえ)電(でん)か? 家の固定電話なんか?


仕方がないのでお邪魔することにした。


「おじゃましまぁす」


嫌だなぁ、知らない人の家に上がるの


「ほら、ここやで」


電話を見た、びっくり、博物館なの?

いや博物館か知らんけど、これまさかの黒電話っていうやつ? すごい! まだ使えるんだこれ!


「初めて見ました!」

「へぇ? 電話見るの初めてかいな?」


いやいや、そんな訳あるかーい

こんな古い電話を見たことないんや!


まぁいいや、では早速

「お借りします」


えっと、090……

「……あの、この、数字のところを押したらいいんですか?」

「はぁ!? あはは!! ほんまに知らんのやな! 回すんや! こう、くるーっと!」


まわ、す? 回す? え?

0のところに指を入れて恐る恐るくるーっと回す。最後まで回したら指を離すらしい。そして次は9、ジーコ、0、ジーコ、ジーコジーコジーコジーコジーコジーコ

……いや何これめんどくさい!


番号を最後まで回したけど、繋がらない。

もう一度やってみたし、おばちゃんにもやってもらったけど、やっぱりだめ。

これ、壊れてるんじゃないの?


「それにしても変わった番号やなぁ」

おばちゃんも幸子も不思議な顔をしてる


はいはい、もういいよ、スマホ知らないんでしょ。まだ日本にもそんな人がいるなんてね、こっちがビックリだよ!

電話は繋がらなかったけど、おばちゃんにお礼を言って外に出た。


どうしよう、詰んだ


「詰んだわぁ」

「詰んだ? 何を?」


あーもう、何もかも伝わらない。なんなんこれ。

もしかしてあれか? パラレルワールド的な?

似たような世界だけど少しずつ違う世界ってやつ。


……いや、

ありえなくないよね、秋だったのに夏だし、道端でタバコ吸ってる人だらけだし、スマホ知らないし、終わったはずの万博に行こうとしてるやついるし。


……え、万博って昨年終わった、よね?

恐る恐る聞いてみる


「……ねぇ幸子、万博ってさ、昨年だったよね?」

「え! なんでやねん! 今まさにやってるやんか! 

みう、あんた大丈夫か? もしかして記憶喪失か?」


え? 今まさに? え? てことは?

2025年ってこと? 一年前に来ちゃったの?


嘘やろ! ないないない! 小説じゃあるまいし!

……念の為な、念の為に聞こう。まさか自分がこんなセリフを口にする日がくるやなんて……

「あの、さ、今って、西暦何年?」


幸子が首をかしげながら答える

「今年は1970年やで」



……

なんて?




黒電話の数字の部分を押す、というエピソードは

筆者の姪っ子の実話です……

ちなみに黒電話は今(令和8年現在)も使っている方(かた)がいて、びっくりしました

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