【30】日常
お盆休み終了。日常が始まります
チュンチュン
……すごいなぁ。ここにきてから3日続けて目覚まし無しで早起きしてる。朝日が入ってくるからか、スマホで夜更かししないからか
今日は初出勤。頑張らないと
身支度を整えて台所へ向かう。今日もお出汁のいい匂いがする。
「おはよう、おばちゃん」
「おはよう、今日も早起きやなぁ」
「へへ。洗濯してくるわ」
「魚焼いたるな」
「うん!」
勝手口から洗濯機の方に行き、洗濯物を入れてタイマーセット。よし
外でウーンと両手を上げて背伸びする。
……健康的だ
「おはよう、みうちゃん」
「あ、典子ちゃん。おはよう」
「洗濯機、空いてる?」
「うん、こっち空いてるで」
典子ちゃんが洗濯物を入れてタイマーをセットしている。
「典子ちゃんはいつも今くらいに起きるん?」
「そやねぇ、今週は当番やないからね。当番の日はもう少し早起きやで」
「当番? 当番ってなにするん?」
「あ……ふふ。お茶汲みや」
出たよ
「お茶汲み……早起きして、お茶汲み……」
「ふふっ。掃除もやで。灰皿片付けたり、みんなの机拭いたり」
「はぁ!? 何それ。そんなん自分でやればええやん」
「ほんまやなぁ」
「……それ、女の人だけがやるんやろ?」
「あはは! そやで!」
「ヤバ」
「やば?」
あ、ヤバいは通じないんだった
「早く出社って、朝残業ってこと?」
「朝、残業? なにそれ」
あう〜
「えっと、勤務時間以外の仕事だよね? ちゃんとその分給料の上乗せあるの?」
「えー!? そんなんないで。ただの当番や」
うーん、これが昭和のリアル
話していると「洗い」が終わり、排水しながら脱水槽へ洗濯物を移してタイマーセット。洗濯槽に水を溜める。ふふ、1回やっただけやけど、理屈がわかればできるで。もう完璧や!
「2人ともー! 魚焼けたでー!」
「はーい!」
一度目の脱水が終わって洗濯槽に戻し、すすぎのための「洗い」でタイマーセット。そこまでやってから台所へ戻り、お椀にお味噌汁入れてお茶碗にご飯をよそう。
慣れたもんやで!
ご飯を食べて、洗い物を桶に張った水に浸けてから、洗濯機の方へ行き排水しながら脱水にかける。よし!
典子ちゃんとお喋りしながら終わるのを待つ。
ミーンミーン
蝉が鳴いてる。……朝は涼しいなぁ。昭和の夏ってほんと過ごしやすい。未来では夏は40℃になることもある、て言ったら、典子ちゃんは全く信じてくれなかった。ほんとだよ〜
洗濯物を干していたら弘子ちゃんが来た
「おはよう。洗濯機、空いてる?」
「おはよう。空いてるで〜」
洗濯物を干し終わって台所へ戻り、皿洗いをしようとしたら既におばちゃんがやってくれてた。ありがとう
座って少し話していたら弘子ちゃんが戻ってきて朝ごはんの準備を始めた。
典子ちゃんは「そろそろ行くわ」と席を立ち、出社。
私はまだ時間があるなぁ
弘子ちゃんは朝ごはんの途中で洗濯機の脱水をかけて、戻ってすこし食べ、すすぎをかけに行き、食べ終わって脱水し、皿洗いをして干しに行く。
テキパキテキパキ
長い髪の毛もばっちりお団子にしてピシッと固めてある。キャリアウーマンっていうのかな? カッコイイ
そして「ほな行ってくるわ」と、ササッと出て行った。
ルーティンなんだろうな
私はまだ時間はあるけど、また散歩に出て遅刻するわけにいかないからなぁ。何しよ。スマホもないし。
すると、おばちゃんが「さてと、」と立ち上がる。
ん?
「おばちゃんどっか行くん?」
「んー? ちょっと表、掃いてくるわ」
「私も手伝っていい?」
「ええんやでぇ? おばちゃんの仕事やさかい、ゆっくりしとき」
「することないねん」
「ほーか、ほな一緒にしよか〜」
おばちゃんに付いていって玄関を出る。
箒を渡される。なんか、マンガで見るようなデカイやつ
おばちゃんに教えてもらいながらやっていると、誰かがおばちゃんに声を掛けた。
「あらぁ、おはよう、千代子ちゃん」
そう、おばちゃんの名前は千代子ちゃん。可愛い
「春子ちゃん、おはよう」
お友達かな? そう思いながら春子と呼ばれた人を見ると目が合った。ペコッと頭を下げると、
「ああ、この子が新しい店子さんかいな」
たなこさん? たなこって、何?
首をかしげているとおばちゃんが答えた
「そやねん。この子が、みうちゃんや」
「ほーかぁ、うちは近所に住んどるんやでぇ。よろしくな、みうちゃん」
「あっ、よろしくお願いします!」
……たなこって何?
2人のマシンガントークが始まった。
あれやな、井戸端会議ってやつやな
私は黙って箒で掃く。とても混じれない
どこまでやるのかわからなかったけど、せっかくだからどんどんやって、レトロな銀のチリトリにまとめる。
「みうちゃん、そろそろ行かなあかんのとちゃう?」
「あ、はい。準備します」
春子さんに頭を下げて下宿に入った。
いやまあ、まだ時間はあるんやけど、多分おばちゃんの朝のルーティンなんだろう。邪魔しちゃ悪いからね
……ちょっと早いけど、アベル、行っちゃおうかな
今日はバッグを持って、鍵も入れて。財布代わりにおばちゃんに借りた「巾着袋」も準備おっけー
外に出るとおばちゃんたちはまだ喋ってる。ふふ
「おばちゃん、行ってきます」
「ああ、行ってらっしゃい、気をつけてなぁ」
「行ってらっしゃーい」
春子さんまで、どうも
下宿屋から、徒歩10分くらいの喫茶アベルに向かう
働くぞ!
下宿屋の朝の日常でした




