【20】ただいま!
コロッケ買ったよ。
帰り、4人で少し話し合う。
「……どないする? おばちゃん」
「うーん、混乱するんちゃうかなぁ」
「でもなんかなぁ、おばちゃんにだけ隠し事するんもなぁ。……みうは? どうしたい?」
どうしたい……うーん
「あんまり色んな人には言わんほうがええとは思うけど……なんとなく、おばちゃんには隠し事したくない。いやでも、おばちゃんのこと困らせないかな?」
う〜ん
結局答えが出ないまま着いてしまった
ガラガラッ
「おばちゃん、ただいまー!」
奥からおばちゃんがパタパタと出てくる
「おかえりぃ! みんな楽しかったかぁ!」
あぁ、ほっとする
ここが私の帰る場所なんやな
雨合羽を片付けたりお弁当箱を出して水につけたりする。
「おばちゃん、これコロッケ、お土産〜」
「あぁ、あそこのか! おおきに。あんたらすぐ銭湯行くやろ? 幸子ちゃん、あんた今日は泊まって行き、着替えもあるでな」
「ほんま? ほなそうさしてもらお」
わ、幸子泊まっていくんや。嬉しい
みんなで銭湯に行く準備をして傘をさして向かう。
……銭湯だけは、まだ慣れそうにないわ
ササッと済ませて帰ると、台所からお出汁のいい匂い。お腹が鳴る。
なんだかんだ、結局おばちゃんがずっとご飯作ってくれてるやん。各自自炊とは……
みんなで座敷に晩御飯を運ぶ。
「「いただきまーす!」」
今日は私がみんなにお茶を入れた。5人分だから大きめの急須を使う。
コツは、1杯に一気に注がず、少しずつ、全部のお湯呑みが均等の濃さになるように回し入れするんだって。
へー!!
「そんで、どないやったん? 万博は。人多かったか?」
ここは私に喋らせて!
「すごかったで! あんなにいっぱいの人見たことないわ! 人間の渦に呑み込まれそうやったわ!」
「ほんまぁ。人間の渦やて、なんや怖いなぁ。全部行きたいとこ回れたかぁ?」
ここは典子ちゃん
「いやぁもう人が多すぎてなぁ、並ぶんは心折れたわぁ」
弘子ちゃん
「ほんまどこもえげつなくてなぁ。結局みんなが行きたいとこ、ひとつだけに決めてん」
「みんなが行きたいとこぉ? どこ行ったん」
みんなで顔を見合わせる。代表で幸子。
「みんなが行きたかったとこはなぁ、未来館やねん!」
「あんたら、おばちゃんに気ぃ遣こたんちゃうん!」
あはは! とみんなで笑う
「ちゃうちゃう! ほんまにみんな未来館にだけは絶対行きたかってん!」
「……ほぉか? みんなおおきになぁ。ほんで? どやったん、未来館!」
みんなで見てきたものを全部話す!
ワイワイ、あはは! とめちゃくちゃ盛り上がった。
おばちゃん、驚いたり笑ったりずっとニコニコしてる。
楽しんでくれてるよね?
ひとしきり話したあと、幸子がぶっ込む。
「おばちゃんは、未来ってどう思う?」
みんなバッと幸子を見る。
アレを言うの? それとも言ってもいいか探るの?
「どうって……よくわからんわぁ」
うん、だよね、まず質問の意味もわかんないよね
「ただなぁ。楽しみやわ」
楽しみ?
「おばちゃんはなぁ、戦争知ってるでな。生涯を共にしようと結婚した人が戦死してなぁ……」
え……そうだったん? 戦争……
「旦那さんとなぁ、子供いっぱい産んで育てて、家族みんなでこんな風にご飯を食べるのが夢やってん」
え……そんな普通のことが、夢?
「このお屋敷を下宿屋にするために、2人で頑張ったんやでぇ。けどなぁ、さあこれから、て時に赤紙がきてなぁ。そのまま……」
……
「この辺り一帯は戦争で焼け野原やってんで。そん中でも奇跡的に何軒かは助かったんやけど、ここも奇跡の下宿屋やねん!」
あ……確か戦前からあった、て
おばちゃんは、遠くを見るような懐かしむような表情をして話す。
「あん人がな、この下宿屋と共にうちのことも守ってくれたんやと思ってるわ。……ここの隅から隅までな、あん人との思い出がいっぱい詰まってるんや」
……ヤバい、泣く
いやもう典子ちゃん泣いてる
「あんたら泣く話とちゃうで! 拍手するところや!」
みんな、ふふっと笑う
「せやからなぁ、ここに来た子はみんなおばちゃんの家族やと思てんねん」
家族……
「おばちゃんにとっての未来はな、あんたらや! 戦争も終わった、みんなも頑張っとる。うちが見られんずっと先の未来は、あんたらが作っていくんや!」
おばちゃんにとっての未来は、私たち……
「……うん、作っていくよ。おばちゃん」
「ところでみうちゃん、あんた未来から来たってホンマかぁ?」
……んっ?
「え、え?」
4人で顔を見合わせる。全員、知らない、と首を振る。
「今日な、あんたらが帰ってくる前に正志くんきてなぁ?」
正志!? アイツ!!
「なんや知らんけど、みうちゃんは未来から来たから、とか、面倒見たってくれ、とか。なんのこっちゃ意味わからんかったわ」
……は?
ええ話のあとに、「は?」




