【18】新たな出会いは
なんか気になる
しばらく眺めて手に取る。
これ、このマンガ、こんな昔にもうあったん?
小学生向けの雑誌のようなもの。
そこに小さく……
「みう、なんなん、小学生向けの雑誌が欲しいんか?」
「おばあ!」
あ、間違えた
「幸子! これ! これ!」
なんなん? と幸子が私の指さしたキャラクターを見る。
だけど、これが何? という顔。
「え! 幸子、知らんの? これ! このキャラクター! 国民的人気アニメやん! こんな昔からあるんやね!」
「国民的人気〜? 知らんで」
嘘やろ、この猫のキャラクターを知らない人なんて日本にいるの??
……まだ有名になってない?
「これな、未来ではもう日本人なら全員知ってるねん! 私、このアニメが子供の頃大好きで……テレビでもよく観てたけど、小さいときに初めて映画館に行ってこれの映画観て感動して……あぁ、そう、そうだった。おばあちゃんがね、連れて行ってくれたんよ」
幸子が話をうんうん、と聞きながらこの青いキャラクターをじっと見てる。
そして私のほうを見て、ふふっと笑う。
「みう、万博より楽しそうや。」
あ……
確かに
今日イチ興奮したかも
「なになに〜? なんやみうちゃん、小学生向けの雑誌が欲しかったん?」
いや、違……、違うけど、ちょっと欲しいかも
なんならこのお店ごと令和に持っていけたらお宝の山やな!
「付き合ってくれてありがとう。ちょっとスッキリした」
ん? なにがスッキリしたんだろう? 自分でもわからない
「ほな、行こかぁ。ちょっと早めに帰ってきたからな、和夫兄ちゃんの喫茶店でも寄って行くかぁ?」
令和だったらあのCafeに寄る感じだな
あ、でも
「……私、お金持ってへん」
情けない
「みうの分はうちが出したるから!」
「3人で出そうや、3人で分けたら安いもんな!」
「そやね! 行こう! みうちゃん!」
うぅ、みんなありがとう
そこからすぐ裏筋にある喫茶店、アベルに向かう。
カランカラン……
コーヒーの香り、それとタバコ!
うぅ、これがなければ素敵なのに
「いらっしゃい」
うーん、和夫さん、やっぱりイケおじだよなぁ
あ、おじじゃないんだった
「和夫兄ちゃん、4人行けるー?」
「おぅ、いいで。あっちの方空いてるで」
パチッと目が合う、ドキンとする
ぺこりと頭を下げながら気づいた
面接のときもそうだったけど、なんでドキっとするのか
目ヂカラだ、和夫さん、めちゃくちゃ目ヂカラがすごい
あんな顔の俳優さんいたなぁ
お母さんがカッコイイカッコイイ言ってたわ
私たちは入り口側の植木の柵の向こう側のテーブルに座った。
メニューを見てると誰かが近づいてきた。
みんなが気づいて顔を上げる。すると幸子がポソッと言った。
「正志……」
ん? 幸子の知り合い? 中学生……高校生かな
「久しぶり。なんで最近全然帰ってこーへんの」
なに? だれ?
私は幸子とマサシと呼ばれた男の子を交互に見る。
「なんで、て……別に……」
ん? 幸子にしては歯切れが悪いぞ
男の子は、ムスッとして自分が居たであろうカウンターの席に戻って行った。
えっと、聞きたい。聞きたいけど聞けない雰囲気
シーンとしてる。うわぁ、やだこの空気
そこに和夫がやってきた。
「注文決まった?」
ハッと顔を上げる。
典子ちゃんが「あっ、私、紅茶にする」
弘子ちゃんも「あ! あ、うちも紅茶にしよ」
え〜、どうしよ……「……私も、紅茶で」
「ほな! うちも紅茶にしよ!」
元気に幸子が答えた。
少しホッとする
「アイスでええか?」
「「ホットで」」
4人の声が揃って笑ってしまった
「なんでみんなホットなーん?」
「ほんま、なんでやろ」
「真夏にホットて!」
「あはは!」
すこし和んで、チラッと幸子を見る。
幸子は両手をぐっと握って話し出す。
「ごめんなぁ、変な空気になって」
「ええんよ、あの子が、前に話してた弟さん?」
弟? 弟がいたの?
「そやねん、正志っていうねんけど、今16歳で……」
おばあちゃんに弟? 聞いたことないよ!
「……正志くん、帰ってきて欲しそうやったね」
「そうなんかなぁ。ま、別に帰ってもええねんけど」
おばあちゃん、じゃ、ないのかなぁ……
話は変わって、万博のことやおばちゃんの話になった頃に紅茶がきて、ちょびちょび飲んでいるとまた正志がこちらに来た。
「……帰るわ」
「うん、ほなまたな」
ふと、正志と目が合った。
すると正志はびっくりした顔で私をまじまじと見る。
え、なになに、怖いんだけど。
「あんた……ここの人やないな?」
は……?
なに? どういうこと?
ここの人……この時代の人間じゃない、てこと?
オロオロして幸子を見る。
弘子ちゃんと典子ちゃんは首を傾げている。
幸子と正志はグッと見つめ合って意味ありげなことを言う
「なんや……またなんか感じたん?」
「……わからんけど、なんや変な感じや」
なに? どういうこと?
「あー、この子な? なんや昔から勘のええ子で」
幸子が言うには、正志くんは昔から不思議なことを言い出す子で、予知能力でもあるんじゃないか、と思うようなこともあったらしい。
「昔な? お……お父さんが出張でいつもとちゃう電車に乗るって日に、まだ幼かった正志が泣くわ、しがみつくわ、大変だったんよ」
なに、今の「お」
「そんでお父さん、乗る予定の電車逃してもうて、何本かあとのやつに乗ることになってな。後で聞いたら元々乗る予定だった電車、事故起こして何人か亡くなったらしいねん」
え、なにそれ、すごい
「他にもな、たまにうちに来てた御用聞きのおじさんがな? 用が終わって帰ろうとしとんのに、またしがみついて離さんのよ。なだめてる間におじさん急に倒れてな、すぐ救急車呼んだんやけど、あとで聞いたら脳梗塞やってんて。発見が早くてほとんど後遺症も残らんかったんやて」
へー! なんで? 何者?
「他にもな、」
「も、ええって。それより姉ちゃん、こいつ誰やねん。なんで一緒におんの」
あ、もっと聞きたかった……じゃなくて、どうしよう、何かがバレてる?
正志くん、めっちゃ怖い顔で私のこと見てる、何て言おう、本当のこと、言っちゃう?
幸子と見つめ合う。
「……どないする? 言う?」
「……わかんない、言うとマズイのかな。……初めてのことやからわからへん」
え、どうしよう……
タイムスリップの正解がわからへん
………
「未来から来ました」
言っちゃった
言うんかーい!




