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S↔R ~令和女子、昭和に放り出される~ 「1970年」マジありえない文化なのに人情に泣ける。そして未来へ繋がる……  作者: 髙井菜是


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【12】ちょっとだけ頑張ってみた

美羽はノンアル派

私、アルコール飲めないよ


でもなんか、言える雰囲気じゃない。

ビールには手をつけず、お茶を探す。キョロキョロ見渡すと、おばちゃんの横の補助テーブルのようなところにそれっぽい物がある。


多分、これだよね?

「あの、お茶、いただきます」


おばあちゃんちで見たことがある、これ……えっと、ティーポット? それといくつか伏せて置いてあるお湯呑み。入れようとしたけど、何も出てこない。

蓋を開けると中身は空だ。

「みうちゃん、お茶っ葉はそこの缶カンに入ってるで」


カンカン?

これかな? 缶の蓋をカポッと外すとお茶っ葉が入ってる。

えっと、これを? 確かこの網のところに入れるんだったよね

で、えっと、お湯? ケトルは? どこだろ……

あ、もしかして、これ? 花柄がレトロで可愛い


えっと、沸かすボタンは? ん? もうお湯が入ってるのかな? どうしよう、わからない


「……あの、どうやったらこれ…お湯? これはお湯ですか?」


「そやで、ポットや」


ポット……ああ、おばあちゃんちにあったやつ


形も大きさも違うけど、おばあちゃんの家にあったやつはボタンを押して沸かしてたはず。

これは、もうお湯になってるんやな。そんで? たしかおばあちゃんちではここを押してお湯を出してた。

押す、あれっ? 押せる感じじゃない。あれ? これ蓋だ。えっと、こう? かな?


なんとかお湯をお茶っ葉のところに入れることができた。

蓋を閉めてティーポットからお湯呑みにお茶を注ぐ。

え! なんか濃い! 緑過ぎる! なにこのお茶!


「あの〜これ、お茶ですか?」


おばちゃんがクルッとこっちを見て仰天!

「なんやあんたこれ! うわ! こんなにお茶っ葉入れて! 膨れて溢れそうやわ!」


あ……これ、入れ過ぎなんだ……わかんないよ、お茶っ葉なんて使ったことない……いつも家ではペットボトルのお茶か麦茶だし。おばあちゃんの家でも自分で入れたことないし……


ほんと使えない、私


シュンとしてるとおばちゃんが細かく教えてくれた。

「あんなぁ、1人分ならだいたいこんくらい、みんなの分入れるときもこんなにお茶っ葉入れたら膨れるでな、この急須ならこのくらいまでしか入らんで」


きゅうす、ていうんだこれ……

「……はい」

「まあ、誰でも初めてはあるんや! 気ぃ落とさんと、これから覚えたらええんや。気にしな。おばちゃん夏でも熱いお茶が好きでな、麦茶が良かったら今度沸かしといたるな?」


優しい、好き


「みうちゃんってお嬢様なんやて? なんやわからんことあったらいつでも聞いてな?」

「ホンマ困ったことあったらいつでも相談のるで〜」


弘子さんと典子さん、優しい、好き


みんなでワイワイ。

誰も私の素性を聞き出そうとしたり探ったりしない。

これがめちゃくちゃ居心地がいい


「えっ! 2人とも20歳なんですか?」

「そやで。18歳からここにきて、もう2年になるわ」

「うちは奈良から」と、弘子さん

「私は和歌山やで」と、典子さん

「ここ来たとき不安でなぁ。右も左もわからんで。そんとき幸子ちゃんが親切に色々教えてくれたんや。そやから、みうちゃん、敬語いらんで?」


ひゃー、大人っぽいなぁ。なんなら年上かと思ってたわ

「うん。2人ともよろしくね」


「そーいやあんたらもまだ万博行ってないんちゃう? お盆休み明後日までやろ? 弘子ちゃんも明日は休み言うてたし、4人とも休みが合うなんてなかなかないんちゃう? みんなで行ってきたらええ」


万博かぁ! 昭和のほうの万博! すごい、お母さんも生まれる前のやつやん! 2025の方は行った! 昭和の万博も行けるて、これすごいわ!


「え? 弘子ちゃん明日休みなん?」

「そやねん! まさかお盆に公休が重なるなんて思わへんかったわ! ええね!」

「うちも明後日は用事あるからなぁ、明日なら行けるで」


ん? 幸子の用事? なんだろ、気になる


「なんなーん、幸子ちゃん。用事って……彼氏か?」


弘子さん、ナイス


「はは、まぁ、そやねん。一緒に映画見に行くねん」


アイツか、DV男か!!

ちょっと口を尖らせて幸子のほうを見ると

「ごめんなぁ、みう。その日は一緒におられんで」

と。


違う、そんなことを言いたいんじゃない。

くそぅ、DV男めっ! どうしてくれよう!


「わぁ! 万博行きたいわぁ! おばちゃんは? 行かへんの?」

と、典子ちゃん。


「うちはええねん、ほら、おばちゃん膝が悪いやろ、あんたらだけで行ってきー」


おばちゃんには悪いけど、行きたい! すごいすごい! 昭和の万博!


明日4人で、万博に行くことになった。

「みうの分の電車賃と入場料はうちが立て替えとくわ」


ありがとう! 幸子。

入場料がたったの600円やて! 安すぎるわ、昭和。


みんなでご飯を食べて、みんなでお片付け。5人もいたから私はお皿運びとテーブル拭き。


幸子は自分のアパートに帰って行った。


今日もヘトヘト。いつもなら晩御飯のあとは自分の部屋で動画配信でドラマを見たり漫画アプリを読み漁ってる。

だけどこの部屋には本当になにもない。


昭和の人って、何して過ごしてるんだろう

そんなことを考えていたらいつの間にか深い眠りに落ちていた。


お茶っ葉入れ過ぎ事件も、筆者の姪っ子の実話です……。

ポットの蓋を給水ボタンと勘違いして押す、というエピソードも実話です

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