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幻聴に恋をして《第七夜》

朝、目を覚ます、今日は影を探しても見つからなかった

「いないの?」

見えてるのがおかしかったはずなのに見えなくなると途端に寂しい

「ねぇ、どこなの?」

なんで今日に限っていないのよ

はぁ、まぁどうでもいいわ

私は、スマホを手に取り電話をかける

『もしもし、どうしたの?』

「店長、今日シフト空いてたりしません?」

『空いているけど、今日はどうしても休みたいって言ってたけど、大丈夫なの?』

「はい、予定なくなったので」

『まぁわかったわ。じゃあ1時にお店来て頂戴』

「わかりました。失礼します」

スマホの電源を切る

バイトまで4時間か、甘いものでも食べてようかな

部屋から出て、冷蔵庫を開く

昨日、あの影が食べたいって言っていたものが入った箱を取り出す

あいつがいなくなっちゃったんだもの、食べてもいいわよね

でも、どこかに行ってるだけかも

いいや、我慢しよ


〜〜〜


玄関の扉を開く

今日も客はクズばかり

私の見方が悪いのだろうか

廊下を移動していると、珍しく母が居間にいて何かを食べていた

「あら、日向おかえり」

「ただいま、お母さん」

話したくないから居間から離れようとしたその時

「ケーキありがとうね」

母がそう言った

「なにを、言ってるの?」

嫌な予感がする

「だって、今日母の日でしょ?ケーキ2つ入っていたから片方もらってるね」

なんで。あれは、あいつの分なのに

「たべ、あ、うん、そう。いつもありがとうね。お母さん」

「ケーキ美味しいわ。これ、限定のやつよね。ありがとう」

「うん、よかった」

笑えてるかわかんない。不機嫌にしたら何を言われるか、想像したくない


1つだけケーキが入った箱を持って部屋の扉を開ける

部屋には、あの影がいなかった

昨日まであんなにうざかったのに

箱を缶が多く置かれている勉強机の上に置く

お風呂も入っていないのに、ベッドに倒れ込む

なにもかも上手く行かない

大好きな人はいつもどっかに行ってしまう

「どこにいるの、バカ」

瞳が熱くて、目を閉じて眠りについた


『また、泣いてる』

私じゃない声が届き目を開けると

目の前に、朝はなかった影がいた

「あなた、なんで」

胸が熱い

「なんで、置いていったの」

『置いていった、っていっても。私も今起きたのだけれど』

寝ていたの?

私は今日に限っては、あなたとずっと一緒にいたかったのに

「そう、よね。ごめんなさい。あ、そうだケーキ買ってきたよ」

『ほんと!?』

「食べるわよね」

『うん!』

影が、多分にっこりと笑う

いいな、あんなに自然に笑えるなんて

箱を開けて紙皿の上に少しぬるくなったケーキを置く

『あー、あの限定いちごのやつが良いって言ったのにー』

「ごめんなさいね、売ってなくて」

『あー、やっぱ売り切れちゃってたかー』

ケーキが置かれた紙皿とフォークをあなたの前に置く

『あれ、あなたの分は?』

「あなたが寝てるうちに食べちゃったわよ」

『えー、一緒に食べたかったのに』

「ごめんなさい」

『そんなに謝らないでよ』

「ごめんなさい」

『もー、じゃあ謝る代わりに私フォーク持てないからあーんして』

そのお願いに私はフォークを持とうとしたら影に引っ張られる

「ちょ、っと」

『なんかぎゅーしてほしそうだったから』

恥ずかしい、でも。それ以上に

温かい

その温かさで、目が少しずつ開かなくなってくる

ねむ、い

『お誕生日おめでとう。ひなた』


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