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神隠し ~蛭子神社の怪異~  作者: 船橋新太郎
第1章・和都歴450年 7~8月 ~灰谷 墨子編~
8/11

第1章・6幕 色恋余興

今回の登場人物


■ ▢ ■ ▢


・灰谷 朝友 (はいたにあさとも)

墨子と喜郎の幼馴染みで、墨子の旦那。墨子の境遇を想い、結婚に至る。里に小さいながらも畑を管理している。里でも良好なイケメン男子で通る。


・水戸部 雅代 (みとべまさよ)

喜朗の妻。育ちが悪く、喜朗の人の良さを利用する。美貌とスタイルは里でも墨子に引けを取らない上、それを武器として生きてきた。


・吉田 健右衛門 (よしだけんうえもん)

蛭子里の官人の1人。現状、一番経験が豊富な故、官人所役・神奈備支部からの信用も厚い。紳士的で礼節を知る男として里でも名声がある。


■ ▢ ■ ▢




【前回までのあらすじ】


蛭子里に住む墨子は、山菜採りに北の森へと向かった、旦那・朝友と幼馴染・喜朗に合流する為、北の森へ、息子・美継と向かう。

森で、朝友と合流するも、喜朗の姿は見えない。

美継の姿も消えてしまうと、墨子は探し回る内に蛭子神社へと辿り着くと同時に美継を発見。

彼は喜朗を見たというも、時間を掛けても神主・神籬すら見つからず、一旦帰宅をする。

墨子らが健右衛門と雅代の関係を疑いながら、帰宅すると、朝友はその件は保留にした。そして翌日に、神社へ喜朗を探しに行くと二人を安心させた。

一方、夜九時に、良からぬ企みをする勝巳は、灰谷家へと向かうが、健右衛門が訪ねてくると、その企みは失敗する。

その頃、雅代の元を訪ねる朝友は、寂しそうな雅代に一線を越えてしまう。

明くる日、黄田組が統治の名目で重税を徴収しに来ると、朝友は、灰谷家の分を出す。

黄田組は、次に向かう先は水戸部家。雅代が襲われそうになるところを助けるも、妙な恋心を抱かれてしまう・・・

◎和都歴450年 7月13日

置田村・神奈備・蛭子里・水戸部家 11時


神社へ喜朗捜索の準備を終えた朝友は、約束通り、雅代の元を訪れ、玄関から扉を叩こうとする。


「…ん?」

朝友は違和感を感じ、扉を叩かず、耳を当てる。


⦅…アァ…い、いや…アァ…!⦆

雅代の喘ぐ声が聞こえる。

⦅ま、雅代~!⦆

誰か男の声だ。


「まさか?うわっ」


ードカッ…


朝友は足が扉にぶつかり、大きな音がする。


⦅なんだ!?音がしたぞ!?…雅代、まさか誰かいるのか?⦆

⦅え?もしかしたら…⦆


◎水戸部家 


「なんだ?俺以外とも寝てるのか?」

「違う…あ、だ…旦那かも!?」

「何んだと?喜朗が?バレたらマズい…!」

男は雅代を跳ね退けて、浴衣を羽織り出ていく。

「俺は食料をあげた見返りに寝てもらっただけだ。何も関係ない!いいか、誰にも言うなよ?」

吉崎 時常(よしざきときつね)。里でも珍しい商人家系で、親の七光りから良家の嫁を貰うも、影では好き放題に遊び歩く。所謂、ボンボンのクズ男。


ーガチャ…


時常が出ていくと、玄関の茂み裏に隠れていた朝友が出てくる。

「時常…か?」

朝友が水戸部家へと入る。


「雅代…さん?」

朝友が、裸で背を向け、酒を飲んでいる雅代に声をかける。

「朝友…?イヤだ、聞かれちゃった?」

雅代らしくなく、恥ずかしそうに哀しそうな声を出す。

「…もう、こんなことは止めるんだ。」

「…フフ、こんなことでしか生計は立てれないのよ。旦那も帰ってこないしさ。」

「…喜朗の奴、一体何処へ…俺探しに行くよ。」

「朝友?」

「ん?」

「探しに行くなら、私を抱いて?」

「またそんなことを…ダメだ。」

呆れ顔で背を向ける朝友。

「そう…貴方が…朝友が抱いてくれるなら、私、立ち直れそう。」

「…何を言ってるんだ。」

「いいの?私が他の男にまたー」

「ー雅代さん。」

朝友は鋭い視線で雅代を見つめる。


◎吉崎家


「やはり、里一の豪商の女性となると、カラダも一段と上品でした。久しぶりに僕自身も、紳士になった気分ですよ。」

「健右衛門さん、この事は、旦那には…」

「無論、僕と奥さんの秘密…とはいえ、それで犯罪はほぼ揉み消してあげているんだ。」

健右衛門は手を差し出す。

女性は金2枚を健右衛門に渡す。

「…また、近々楽しませて貰いますよ。ンフフフ…」

イヤらしい笑いをしながら去る健右衛門。


「ただいま。」

暫くして、時常が帰る。

「お帰りなさい、あなた。」

吉崎 凛(よしざきりん)。時常の嫁で、吉崎家の令嬢。育ちの良さを醸し出す桜色の着物と、簪で長い髪を結う。豊満な胸元と、口元のホクロが印象的。


「お疲れですか?お茶でもー」

凛は時常に着替えを渡そうとする。

「ーいや、いい。」

「…あら?あなた、何か香水の匂いが?」

「あ?そうか?」

「今夜、用事がないならたまには夫婦のー」

「ー今夜はちょっとまた出るんだ。飯だけ作っといてくれ。」

ぶっきらぼうな返答をすると、時常は書斎へと籠ってしまう。


「…なによ。」

凛は眉間にシワを寄せる。


小さな里の男女には、色恋沙汰しか余興はない…とはいえ、様々な確執と恨み辛み、色欲にまみれていた。

それは大した問題ではない、そう思える程の驚異が、この里に迫っていた…

次回2025/8/25(火) 18:00~

「第1章・7幕 殺しに行く者」を投稿予定です。

   

※8月はお盆休み・強化月間です。

期間中は毎週(火)(金) 及び祝日18:00に投稿致しますので、御期待下さい。

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― 新着の感想 ―
ほんとに色恋沙汰しかないですね。里に起こる驚異、気になりますね。
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