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神隠し ~蛭子神社の怪異~  作者: 船橋新太郎
第1章・和都歴450年 7~8月 ~灰谷 墨子編~
5/11

第1章・3幕 消えた喜朗

今回の登場人物


■ ▢ ■ ▢


◎灰谷家

・灰谷 墨子 (はいたにすみこ)

蛭子里の生まれで、朝友と喜朗とは幼馴染。母子家庭だったが、半年前の冬に母と姉が行方不明となり、灰谷家へと嫁ぐ。非力だが賢く、里でも若く美人との噂。


・灰谷 美継 (はいたによしつぐ)

朝友と墨子の息子。純粋無垢で、母・墨子を慕う健気な少年。真っ白い甚兵衛が特徴的。


・灰谷 朝友 (はいたにあさとも)

墨子と喜郎の幼馴染みで、墨子の旦那。墨子の境遇を想い、結婚に至る。里に小さいながらも畑を管理している。里でも良好なイケメン男子で通る。


・灰谷 儀兵衛 (はいたにぎへえ)

朝友の父で墨子の義父。編み笠職人で、口数は少なく、嫁に先立たれてからは家事は墨子にお願いしている。神奈備の中心まで傘を売りに行くことがある。


ーーー


・水戸部 雅代 (みとべまさよ)

喜朗の妻。育ちが悪く、喜朗の人の良さを利用する。美貌とスタイルは里でも墨子に引けを取らない上、それを武器として生きてきた。


・三条 勝巳 (さんじょうかつみ)

本編・三条勝太郎の実父。妻と勝太郎を捨てた後、何故か蛭子里へと流れ着く。里では近代的な男前、と評判だが、裏の顔は好色と貪欲の悪人。


■ ▢ ■ ▢




【前回までのあらすじ】


蛭子里に住む墨子は、山菜採りに北の森へと向かった、旦那・朝友と合流する為、後を追う。途中、幼馴染・喜朗の家に立ち寄るも、雅代から山菜採りに行ったからと、不在の旨を言われ、仕方なく北の森へ、息子・美継と向かう。

森で、朝友と合流するも、喜朗の姿は見えない。朝友は帰宅するも、墨子と美継は少し森を散策する。

美継も消え、墨子は探し回る内に蛭子神社へと辿り着くと、美継を発見。彼は喜朗を見たというも、時間を掛けても神主・神籬すら見つからず、一旦帰宅をすることになるが・・・

◎和都歴450年 7月12日

置田村・神奈備・北の森 17時


先月あった熊による、惨殺事件を思い出し、足早と蛭子神社から里へと急ぐ、墨子と美継。

「…!?」

背後に妙な気配を感じ、振り返る墨子。


ー…


変わらず沈黙の風が支配する森の道。

「お母?」

「…気味が悪いわ…行きましょ。」

2人はそのまま里への道を進む。


◎蛭子里 18時


墨子と美継は、里へと帰ってくると、急いで喜郎の家へと向かう。

その途中、里の官人・吉田 健右衛門とすれ違う。

「こんばんは。」

「あ、こんばんは~。」

吉田 健右衛門(よしだけんうえもん)。蛭子里の官人の1人。現状、一番経験が豊富な故、官人所役・神奈備支部からの信用も厚い。紳士的で礼節を知る男として里でも名声がある。



墨子が挨拶を交わすと、笑顔で返す健右衛門。

里の官人は、時間で巡回をしている。

「…あれ?」

墨子は一瞬、妙な感覚を覚えたが、そのまま喜郎宅へ向かった。


「こんばんは~!ごめん下さい!喜郎、居ますか?」

墨子は喜郎宅の玄関で喜郎を呼ぶ。


ーガラッ!


「…まぁ~た墨子さんか…今度は何なの?喜郎ならずっと帰ってないから...」

羽織一枚の雅代が出てくる。

胸元が隠し切れていない姿で、ぶっきらぼうに話すと、ドアをすぐに閉めてしまう。

「…え?あ、あの…!」

呆気に取られる墨子。

「喜郎おじさん…帰ってないの?」

美継が不安そうに墨子に確認する。

「…そ、そうみたい…あれ?この匂い…」

墨子は鼻を鳴らしながら、同時に先程すれ違った、健右衛門の違和感の正体が、雅代の香水であることに気が付いた。

「…まさか?」

墨子は、喜郎と雅代の関係は良好とも聞かないが、険悪とも聞いていなかった。

昔から、何でも悩みを話し合える喜郎から、雅代の悩みを聞いていない。

墨子は、幼馴染みの喜郎の事とはいえ、夫婦間の事だし、あえてこれ以上は詮索はしなかった。



◎灰谷家 19時


墨子と美継は、帰宅するなり朝友に事の顛末を話す。

「何?喜郎が?」

「うん、消えちゃって…一体どこに消えたのか…」

朝友は驚き、墨子は話に念を押した。

「話はわかったし、気持ちも分かるが…蛭子神社は先月、熊の被害もあるし、近付くのは危険だよ?」

朝友は必死に止める。

墨子も美継も下を向いてしまう。

「…じゃあ、喜郎おじさんはどうするの?」

美継が反論する。

「う~ん…困ったな…じゃあ俺が明日にでも探しに行ってみるよ。」

「…うん…」

朝友が捜索する話に落ち着くも、どこか不安は拭えない美継。

「美継はもう寝なさい。」

「わかったよ…」

墨子は美継を寝かせると、朝友に近寄る。

「そういえば、雅代さんさ…浮気してない?」

「…え?」

「官人の健右衛門さん?とすれ違ったら、雅代さんと同じ香りがしたの…喜郎、知ってるのかな…」

墨子は、雅代の浮気に喜郎を案ずる。

「確証はないなら、あまり言わない方がー」

「ーわかってる、わかってるけど…喜郎は、根が優しいから、ホントは知ってても相談できないとか…喜郎の行方不明は、それも関連してたりしないのかなって?」

「…まあ、まずは喜郎を探し出さなきゃ、問いただす事も出来ないからな。その件は俺が預かる。8時にはお湯が沸く。墨子も汗を流したら明日は俺の代わりに谷川まで魚を頼む。」

「わかったわ。」

喜郎の件は朝友に任せ、明日は谷川へ魚を捕りに行く事となった墨子。

汗を流しに脱衣場へ向かおうとする。

「墨子さん。」

脱衣場の前で儀兵衛が墨子に話し掛ける。

「あ、お義父さん。どうしました?」

「あ…ああ。その、ちょっと酒のアテになる簡単なもの、作ってくれんか?」

「え?あ、はい。作ったら持っていきます。」

「すまないね。慌てんで良いんでな。」

儀兵衛は急に墨子にお願いをすると、部屋へ戻っていく。


◎水戸部家 20時


「ーちょっと、何?もう行っちゃうの?」

服を着ながら出掛ける準備をする勝巳に、不満げな態度で止める裸の雅代。

「今夜はな…急な用事があってな。お前だって喜郎が戻ったらコトだろ?今夜はゆっくり枕でヤってろ。」

そう言って出ていく勝巳を後に、枕を玄関に投げつける雅代だった。

次回2025/8/14(金) 18:00~

「第1章・4幕 情事」を投稿予定です。

   

※8月はお盆休み・強化月間です。

期間中は毎週(火)(金) 及び祝日18:00に投稿致しますので、御期待下さい。

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― 新着の感想 ―
喜郎、神隠しに遭ってそうですが、見つかるといいですね。墨子がとても危険ですね。
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