↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神隠し ~蛭子神社の怪異~  作者: 船橋新太郎
第1章・和都歴450年 7~8月 ~灰谷 墨子編~
4/11

第1章・2幕 失踪

今回の登場人物


■ ▢ ■ ▢


・灰谷 墨子 (はいたにすみこ)

蛭子里の生まれで、朝友と喜朗とは幼馴染。母子家庭だったが、半年前の冬に母と姉が行方不明となり、灰谷家へと嫁ぐ。非力だが賢く、里でも若く美人との噂。


・灰谷 美継 (はいたによしつぐ)

朝友と墨子の息子。純粋無垢で、母・墨子を慕う健気な少年。真っ白い甚兵衛が特徴的。


■ ▢ ■ ▢




【前回までのあらすじ】


蛭子里に住む墨子は、山菜採りに北の森へと向かった、旦那・朝友と合流する為、後を追う。途中、幼馴染・喜朗の家に立ち寄るも、雅代から山菜採りに行ったからと、不在の旨を言われ、仕方なく北の森へ、息子・美継と向かった・・・

◎和都歴450年 7月12日

置田村・神奈備・蛭子里・北の森 12時


しばらく、いつもの採取場所で喜郎を探すと、旦那・朝友がやってくる。

「やあ、来たね。」

灰谷 朝友(はいたにあさとも)。墨子と喜郎の幼馴染みで、墨子の旦那。墨子の境遇を想い、結婚に至る。里に小さいながらも畑を管理している。里でも良好なイケメン男子で通る。


「喜郎を、どこかで見なかった?」

墨子が朝友に尋ねる。

「ん?いや。喜郎も今日、山菜採りに来てたのか?」

「家に寄ったんだけど、雅代さんがそう言ってたわ。喜郎の事だから、またここに居るかと思ったけど…」

朝友は返答する。

墨子は、雅代から喜郎が出掛けたことを知ると、いつものこの場所に来れば会えるだろうと思ったのだ。

「俺は粗方採ったけど、まだ少し美継と見ていくのか?」

「うん、少し散歩してから帰るよ。喜郎に会うかもしれないし。」

朝友は帰る素振りをすると、墨子は頷いて返す。

「一月前の熊の件もある。気をつけてな。」

朝友は里の方へと去っていく。


「お母、ちょっと奥まで探しに行ってくる!」

「気を付けてね。」

美継は、森の東側奥へと山菜を探しながらも歩いていった。


◎北の森 14時


「…美継も全然帰ってこないわ…まったく…」

墨子は、美継の安否も気になり、東へと歩み始める。



[スー…ファ~…スー…ファ~…]

茂みから、墨子を見つめる存在が不気味に立っていた。



「美継~!何処?」

墨子は、美継を呼ぶが返事がない。

更に東へ歩くと、道は南へと折れ、更に歩く。

「美継、美継!?」

行き着いた先は…


「蛭子神社まで来ちゃった…」



ー・・・あの時と・・・同じ・・・



墨子の脳裏に、母と姉の失踪が過る。


姉、鶴子。

15年ほど前に、神奈備の中心部の男と出逢い、度々会うようになると、男の家に普段は暮らしていた。

直ぐに結婚することも決まり、里を出て、嫁いだ鶴子。

しかし、去年の暮に、その男と別れることとなり、その後、里でまた家族一緒に住むつもりだと打ち明けられた。詳しくは話してくれなかったが。


そうなると報告をしに帰省した、その日にケジメの報告をとしたいと言い出した。

母と蛭子神社へ行くと言い残し、そのまま失踪した。

墨子にはそれが何か妙な気持ちを増幅させたのだ。


墨子はそのまま、鳥居をくぐり、随神門を抜ける。

「美継~!」

墨子は、美継の名前を呼びながら神橋を渡ると、正面の本殿の前に美継らしき子がいた。

「美継!」

墨子の叫びに気が付いた美継は、急いで墨子へと駆け寄る。

「お母!」

「美継!」

墨子は、美継を思い切り抱き締めると、顔を見る。

「ダメでしょ!この神社は最近は熊が出るんだから!」

叱りつける墨子。

「喜郎おじさんが居たんだ…」

「え?どこよ?」

美継の言葉を聞き、辺りを見回す墨子。

「喜郎は?何処行ったの?」

「わかんない…神社に入っていくのは見たよ?」

墨子の質問に、鳥居を指差して答える美継。

「…喜郎~!?」

今度は喜郎の名を呼ぶ墨子。

「…やだ、熊に襲われたりなんかしてないわよね…喜郎~?」

2人で喜郎の名を呼び始める。


◎蛭子神社 15時


しばらく、喜郎の名を呼ぶも、返事がないことに少し諦めかける2人。

「居なそうよ?ホントにいたの?」

「嘘じゃないよ、喜郎おじさんを見間違えたりしない!」

「う~ん…」

美継の答えに困り果てる墨子。

「そういえば、神籬(ひもろぎ)さんは?神籬さんに聞いてみるわ。」

神籬とは昔からここで神主をしている男で、神奈備地区の副統括でもある。

墨子は、社務所へ向かう。


ーガチャ…


「すみませ~ん…神籬さん、居ますかぁ?」


受付は閉まっていたので、墨子はドアを開けて声をあげた。


ー…


沈黙なる答えが返ってくると、墨子は、何度か神籬の名を呼ぶも、答えは変わらなかった。

「どうなってるのかしら…?」

「お母、神籬さんも消えたの?」

「…わからない…出掛けてるのかな…ちょっと回って見ようか…」

墨子は、美継の手を引いて、授与所と神楽殿を回るも、人影はなかった。


◎蛭子神社 16時


「そろそろ帰らないと、帰り道で日が暮れちゃうわ。」

墨子が心配する。

「喜郎おじさんは?」

「…もう帰ってるかもよ?今日は戻ろう?」

「…うん。」

墨子は美継をなだめると、鳥居に向かって歩いていく。

鳥居の向こうの空は既に暗くなりかけていた。


[スー…ファ~…スー…ファ~…]

そんな2人を見つめる人影が、またしても神池の奥の茂みに存在した。

次回2025/8/11(火) 18:00~

「第1章・3幕 消えた喜朗」を投稿予定です。

   

※8月はお盆休み・強化月間です。

期間中は毎週(火)(金) 及び祝日18:00に投稿致しますので、御期待下さい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
喜郎おじさんも神隠しに遭ってしまったのでしょうか?続きが気になります。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。