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神隠し ~蛭子神社の怪異~  作者: 船橋新太郎
第2章・和都歴449年 10~12月 ~澄編~
22/23

第2章・1幕 澄という男

◎第2章スタートにあたり


2章からは、『澄』という男に主人公が変わります。


1章の最後に、その片鱗を現すも、一切が謎に包まれている男、澄。

彼の回想編となる2章は、彼が『神籬蓮庵』と呼ばれるまでになった経緯が5話で描かれます。


彼の目的と正体を、彼の視点から詳らかになっていきます。


ーーー



【前回までのあらすじ】


蛭子里の神隠し…

それは墨子の証言から、不気味な息遣いの者『狂える花魁』による無差別殺人である可能性が高くなった。

しかし、助けを呼びに行こうとするも、『龍の行水』という嵐により、外に出れなくなってしまう。

そんな中、神社の地下では怪しい男たちが、『神の子孫』を探し出すことに躍起になっていることが分かった。

その中の一人に、神籬蓮庵、いや、澄と呼ばれる神籬蓮庵の姿に、また違う謎が浮き出てくるのだった・・・

◎和都歴453年 4月1日 8時 

神奈備・蛭子神社・地下室


澄という男なのだろうか。外見は間違いなく神籬、その人であるが…

暗い地下室の真ん中に、一人考え事をしている。


神籬は、『神の子孫』とやらを探しに行くために席を立つ。


「…さて、と。」


澄と呼ばれた神籬は、遠い眼差しをすると、過去を思い返す。


ー3年と8ヶ月程前…


▼▼▼


▼▼


▼


◎和都歴449年 10月


ある組織に依頼され、掌に乗る位、小さな装飾品を手にしている男がいた。

それは、2つのベッドが合わさる様な形をしていて、『華宝』なる品の1つ。

『華宝』とは、大陸に伝わる神秘的力が宿るとされる宝であり、日本・祖柄樫山の神器と似て非なる物。その行方を探す者が数多くいた。


その1つを持つ男が、海を渡り、祖柄樫山の裏手を越え、妙な男たちに金を払いながら、その通行を許可される。

そんな詰所を何ヵ所過ぎただろうか。


男は最後の詰所から長い洞窟の終点らしき場所へと辿り着いた。そこは黛村の極東…。



◎和都歴449年 10月15日 黛村・永咲(ながさき)


洞窟の前の篝火(かがりび)に門番のような南蛮人がいる。こちらの存在に気付くと、扉を開けて中へと通す。

その先は教会の中のようだった。

教会の外へと出ようとすると、男は肩を叩かれる。

「神への感謝を…」

神父らしき男が金や銀の積まれた容器を差し出し、さも金を出すように迫られる。

「ああ、わかったわかった。」

男はめんどくさそうに銀を1枚置いて教会を後にする。

そのまま男は、教会の裏手へと回る。

そこには、異国の夜行衣なる衣装を纏う謎の人物が立って待っていた。


「悪い、待たせたか…」

男はようやく辿り着いたような口振りで水筒を開ける。

「ああ、待っていたぞ…澄。」

異国の夜行衣なる衣装を纏う男がそう呟く。


澄(すみ)。ある組織に所属する男で本名不詳。『華宝』なる物の真価を見出だし、使いこなすという使命を帯びているらしいが…

灰色のチャンパオの様な中華衣装に身を包む。



そこで同じ組織の者とコンタクトをとり、『華宝』なる品の使い道、現状までに知られている情報など、色々教わり、メモに残していた。


「お前の持つ、その『華宝』の使い道は分かったか?」

「…あ、ああ。代々、言い伝えにはあったが、使用は御法度とされてきた。少し躊躇(ためら)う気持ちもまだあるが。」

澄は少し信じられないながらに返答する。

「聞けば祖柄樫山には、その神の子孫が居ると聞く。その者に成り得れば、神という人智を越えたモノの存在を少しは理解できるだろう。神の子孫となり、その力と感覚を組織(われら)に教えるのだ。いいな?」

「しかし、一体誰が神の子孫なのか…」

「我々の調査では、神の住む社、つまりは神社周辺が怪しいとされる。」

「わかりました。その周辺の人間を拉致、調査致します。」

「我が組織は、金と食料はいくらでも送る。後に必要ならば実験用のモルモットも可能な限り手配しよう。必ず使命を果たせ。」

「隠れ家さえ見つかれば、『華宝』の実験にすぐに入りたい。狼煙をあげるから直ぐにモルモットを寄越してくれ。」

「使命のためなら、直ぐにでも。」

夜行衣を纏う男は、澄の肩に手を置き、そう告げると、去っていった。


『使命』なるを果たすよう申し付けられると、澄は馬を買い、黛村を抜け、吊り橋を渡り、置田村へと入り、谷川沿いに北上。祖柄樫の滝へと着く。

「蛭子…神社は…もっと西か...」

澄は、滝の水を水筒に入れると、地図を見ながら西へ歩く。


ようやく崖の上に神社が見えてきた。

「あれが...蛭子神社か?」

ホッとする澄は、水筒を開けて水を飲んだ。

次回2026/11/6(金) 18:00~

「第2章・2幕 連絡員・三条勝巳」を投稿予定です。

   

※11月は秋の読書・強化月間です。

期間中は毎週(金) 及び11/3のみ 18:00に投稿致しますので、御期待下さい。

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