第2章・1幕 澄という男
◎第2章スタートにあたり
2章からは、『澄』という男に主人公が変わります。
1章の最後に、その片鱗を現すも、一切が謎に包まれている男、澄。
彼の回想編となる2章は、彼が『神籬蓮庵』と呼ばれるまでになった経緯が5話で描かれます。
彼の目的と正体を、彼の視点から詳らかになっていきます。
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【前回までのあらすじ】
蛭子里の神隠し…
それは墨子の証言から、不気味な息遣いの者『狂える花魁』による無差別殺人である可能性が高くなった。
しかし、助けを呼びに行こうとするも、『龍の行水』という嵐により、外に出れなくなってしまう。
そんな中、神社の地下では怪しい男たちが、『神の子孫』を探し出すことに躍起になっていることが分かった。
その中の一人に、神籬蓮庵、いや、澄と呼ばれる神籬蓮庵の姿に、また違う謎が浮き出てくるのだった・・・
◎和都歴453年 4月1日 8時
神奈備・蛭子神社・地下室
澄という男なのだろうか。外見は間違いなく神籬、その人であるが…
暗い地下室の真ん中に、一人考え事をしている。
神籬は、『神の子孫』とやらを探しに行くために席を立つ。
「…さて、と。」
澄と呼ばれた神籬は、遠い眼差しをすると、過去を思い返す。
ー3年と8ヶ月程前…
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◎和都歴449年 10月
ある組織に依頼され、掌に乗る位、小さな装飾品を手にしている男がいた。
それは、2つのベッドが合わさる様な形をしていて、『華宝』なる品の1つ。
『華宝』とは、大陸に伝わる神秘的力が宿るとされる宝であり、日本・祖柄樫山の神器と似て非なる物。その行方を探す者が数多くいた。
その1つを持つ男が、海を渡り、祖柄樫山の裏手を越え、妙な男たちに金を払いながら、その通行を許可される。
そんな詰所を何ヵ所過ぎただろうか。
男は最後の詰所から長い洞窟の終点らしき場所へと辿り着いた。そこは黛村の極東…。
◎和都歴449年 10月15日 黛村・永咲
洞窟の前の篝火に門番のような南蛮人がいる。こちらの存在に気付くと、扉を開けて中へと通す。
その先は教会の中のようだった。
教会の外へと出ようとすると、男は肩を叩かれる。
「神への感謝を…」
神父らしき男が金や銀の積まれた容器を差し出し、さも金を出すように迫られる。
「ああ、わかったわかった。」
男はめんどくさそうに銀を1枚置いて教会を後にする。
そのまま男は、教会の裏手へと回る。
そこには、異国の夜行衣なる衣装を纏う謎の人物が立って待っていた。
「悪い、待たせたか…」
男はようやく辿り着いたような口振りで水筒を開ける。
「ああ、待っていたぞ…澄。」
異国の夜行衣なる衣装を纏う男がそう呟く。
澄。ある組織に所属する男で本名不詳。『華宝』なる物の真価を見出だし、使いこなすという使命を帯びているらしいが…
灰色のチャンパオの様な中華衣装に身を包む。
そこで同じ組織の者とコンタクトをとり、『華宝』なる品の使い道、現状までに知られている情報など、色々教わり、メモに残していた。
「お前の持つ、その『華宝』の使い道は分かったか?」
「…あ、ああ。代々、言い伝えにはあったが、使用は御法度とされてきた。少し躊躇う気持ちもまだあるが。」
澄は少し信じられないながらに返答する。
「聞けば祖柄樫山には、その神の子孫が居ると聞く。その者に成り得れば、神という人智を越えたモノの存在を少しは理解できるだろう。神の子孫となり、その力と感覚を組織に教えるのだ。いいな?」
「しかし、一体誰が神の子孫なのか…」
「我々の調査では、神の住む社、つまりは神社周辺が怪しいとされる。」
「わかりました。その周辺の人間を拉致、調査致します。」
「我が組織は、金と食料はいくらでも送る。後に必要ならば実験用のモルモットも可能な限り手配しよう。必ず使命を果たせ。」
「隠れ家さえ見つかれば、『華宝』の実験にすぐに入りたい。狼煙をあげるから直ぐにモルモットを寄越してくれ。」
「使命のためなら、直ぐにでも。」
夜行衣を纏う男は、澄の肩に手を置き、そう告げると、去っていった。
『使命』なるを果たすよう申し付けられると、澄は馬を買い、黛村を抜け、吊り橋を渡り、置田村へと入り、谷川沿いに北上。祖柄樫の滝へと着く。
「蛭子…神社は…もっと西か...」
澄は、滝の水を水筒に入れると、地図を見ながら西へ歩く。
ようやく崖の上に神社が見えてきた。
「あれが...蛭子神社か?」
ホッとする澄は、水筒を開けて水を飲んだ。
次回2026/11/6(金) 18:00~
「第2章・2幕 連絡員・三条勝巳」を投稿予定です。
※11月は秋の読書・強化月間です。
期間中は毎週(金) 及び11/3のみ 18:00に投稿致しますので、御期待下さい。




