第1章・18幕 神籬 蓮庵
今回の登場人物
■ ▢ ■ ▢
◎灰谷家
・灰谷 墨子 (はいたにすみこ)
蛭子里の生まれで、朝友と喜朗とは幼馴染。母子家庭だったが、半年前の冬に母と姉が行方不明となり、灰谷家へと嫁ぐ。非力だが賢く、里でも若く美人との噂。
・灰谷 朝友 (はいたにあさとも)
墨子と喜郎の幼馴染みで、墨子の旦那。墨子の境遇を想い、結婚に至る。里に小さいながらも畑を管理している。里でも良好なイケメン男子で通る。
◎旅人
・忌部 耕助 (いんべこうすけ)
ある場所で仙術を幾つか修得したという神出鬼没の謎の中年。頭は禿げ上がっているが、宣教師の様な服を纏い、紳士的な振る舞いを見せる。若い男性を愛でる趣味を持つ。
・雪平 若子 (ゆきひらわかこ)
忌部の教え子。中性的の魅力が溢れる美男子。紳士的であるが、殺しを生業とする。化粧とお香を愛する自己愛と同性愛を重ね持つ。暇があれば常備するスカーフを手で靡かせる。
※『ケダモノたちよ』『~監査人・三ツ谷 華~ 』で殺し屋と判明
ーーー
・新堂 玲 (しんどうれい)
黄田組の一員。神奈備の貧民の出自。蓮太らと同じ歳でありながら、寺院に行かず、黄田組の使いから活躍し、大胡田の弟分として活動。寺院には行かずとも、書物など独学で知識を学び、知性的でもある。漆黒の装束で、ワイルドな風貌ながらイケメンで、ハスキーボイス。
・神籬 蓮庵 (ひもろぎれんあん)
置田村北部・神奈備の沙汰人で副統括。山奥の蛭子里近くの蛭子神社の神主。長らく消息不明とされてきたが…
■ ▢ ■ ▢
【前回までのあらすじ】
蛭子里に住む墨子は、山菜採りに北の森へと向かった、旦那・朝友と幼馴染・喜朗に合流する為、北の森へ、息子・美継と向かう。
森で、朝友と合流するも、喜朗の姿は見えない。
時間を掛けても喜朗の姿は見えなかった。神主・神籬すら見つからず、一旦帰宅をする。
明くる日、黄田組が統治の名目で重税を徴収しに来ると、朝友は、灰谷家の分を出す。
黄田組は、次に向かう先は水戸部家。雅代が襲われそうになるところを助けるが、妙に恋心を抱かれる。
朝友は、喜朗・捜索の前に、時常と交わる雅代を見る。その際に、雅代の幸せの為にも、喜朗・捜索をしようと心に決めるが、時常は雅代を失うことに堪え切れず、喜朗・殺害を企てる。
朝友より早く、神社へと赴き、喜朗を探す時常に、不気味な息遣いの何者かが迫る。
翌日、時常が帰らない事に、不安を抱く凛。
里の皆、墨子と朝友、勝巳らを交えて話していると、黄田組の重税に苦しむ秀忠が現れる。今直ぐにでも黄田組と神籬に、話をつけたいと憤る秀忠に、健右衛門が、官人として黄田組へ向かう。
秀忠は、勝巳に焚き付けられるように皆の反対を他所に、神社へと向かっていってしまう。
秀忠は、神社へと着くと、社務所の和室まで入るも、入り口に気配を感じると、その後、行方不明となる。
その頃、健右衛門は、黄田組へと赴き、重税の件で交渉に来ていた。
新堂は、神社への偵察を引き受けると、健右衛門は里へ黄田組の税に対し、便宜を図ると約束する。
健右衛門は目的を果たし、里へと帰っていった。
新堂は神社へと部下と共に向かうと、蛭子里で偵察任務をしていた羽芝霞に遭遇。霞は奇襲を受け、辛くも離脱する。新堂らは、当初の目標、神籬と町田の生存確認へと神社へ向かう。
誰も見つからない新堂は、夜警をすると決め、その夜を迎える。
笹川は外の音を気にして、玄関に行くと、それは後藤が夜風に当たっていただけだった。
しかし、その奥で、不気味な息遣いの者が、二人を見つめていた。
3日後、交代で見張りをすることになると、後藤が残り、新堂は里へ、笹川は集会所へと戻る。
里に着くと新堂は健右衛門に、何事もないが誰も居ない報告を済ませ、集会所へと帰っていく。
健右衛門は、吉崎凛を寝取る為にも、吉崎時常殺害を目論む。
一方、墨子は、朝友が帰らない事に危惧し、神社を見に行くことに。家を出たところに、健右衛門と鉢合わせ、一緒に神社へ行くこととなる。しかし、神社に着くも、居るはずの黄田組は煙のように消えていた。
雨に濡れる墨子を見て、襲いたくなる衝動に駆られる健右衛門は、墨子を神楽殿の地下控え室へと追い詰める。3つの控え室で右に隠れる墨子に、左の部屋で健右衛門は誰かに遭遇したようだったが、それは『狂える花魁』といえる怪異で、あっけなく殺されてしまう。
墨子も、狂える花魁から命からがら逃げ延びるも、正気でない男に遭遇、刃物を振り上げられるが、そこへ新堂が男を撃退。墨子を助ける。
新堂も神器を使用する者だった。そして、黄田組から独立し、自分の組織を立ち上げようと決意する・・・
「グギャァァッ!」
正気を失ったような男が包丁で新堂に襲い掛かる。
ーガキン!
新堂は、左腕に巻き付ける赤と黒の交互に連なる鎖で、男の包丁を受け止める。
ードコッ!
新堂は、男に蹴りを入れて跳ね退ける。
「貰ったぜ?お前からの痛みをな?」
新堂の左腕に巻き付く、赤と黒の交互の鎖ー
肩を噛み付く様な黒豹の装飾品から、赤と黒の交互の鎖は腕を巻き付け、手首で交差する。
裏神器『黒豹の器・無慈悲なる鎖』
鎖で受け止めた本来の痛みを、自らの攻撃力にプラスするー
「刃物なら、お前にも同等の攻撃をー」
ーザシュッ!
見えない刃で、男の首が飛ぶ。
「ー俺の手刀も、刃の如く…な?」
新堂玲…ー
ー彼もまた、神器を操る者…!
狂乱し、襲い掛かる男を撃退すると、新堂は墨子の元へと歩み寄る。
「大丈夫ですか?」
「…ええ…ええ…ありがとうございます…」
新堂の助けに、少し落ち着きを取り戻してきた墨子。
「俺は黄田組の…いや、元・黄田組の新堂玲。立てるか?」
新堂が墨子に手を伸ばす。
「何かありましたかな?」
「ー!?」
老人の声に、2人は振り返る。
「あなたは?ー」
「ー神籬さん!」
新堂の問い掛けに、うまく答えるように墨子が声をあげる。
「え?この人が?」
新堂がまじまじと見る。
「如何にも、神籬 蓮庵である。」
神籬が名乗る。
神籬 蓮庵。置田村北部・神奈備の沙汰人で副統括。山奥の蛭子里近くの蛭子神社の神主。長らく消息不明とされてきたが…
「ちょっと失礼します。」
新堂はボディチェックやら、変装や変化でないかを試す。
「疑いは…晴れましたかな?」
神籬がニッコリと微笑む。
「ああ。本人らしいな。」
新堂が頷く。
「でも何故、今までお見えになられなかったのです?」
墨子が尋ねる。
「どうやら本殿の奥に監禁されてたようでな…今日は何故か開いていてな…」
「そうなんですか?」
「何やら都度、悲鳴も聞こえたが身動きできなかったのでな…」
神籬が俯く。
「なら、もう逃げましょう!ここは危険です。」
墨子が現実に戻り、すぐに避難の提案をする。
「…お気持ちは嬉しいが、私は神社の主。見捨てていくわけには…」
「危険なバケモノが出た以上、貴方をここに放置することは出来ない。バケモノの件が解決するまでは、里から毎日ここへ訪れる、その際は俺も同行します。どうでしょう?」
新堂が提案する。
「そ、そうか?そこまで言われては…で、では、一旦…」
3人は急いで神社を離れ、里へと向かった。
◎和都歴450年 7月17日
置田村・神奈備・蛭子里 17時
大雨の中、里まで逃げ延びた3人は、灰谷家を頼る。
「す、墨子か?」
朝友が、右足を引きずりながら奥から出てくる。
「あ、朝友…無事だったの?」
「ああ、君こそ、俺を探しに神社へと聞いて…済まない、転んで斜面の下まで落ちたんだが、あんな場所に洞窟があったんだな。誰かが暮らしてそうな感じで、食糧まであって、そこで一夜を過ごしたんだ。」
朝友が、申し訳なさそうに言う。
「そんな洞窟が?誰か住んでいるのかしら?…でも無事でよかった…」
墨子は、そう言うと、事の顛末を話す。
「そうか…でも、確かに、俺たちだけで解決できる話しとも思えない。新堂さん?彼方のその特殊な力があれば、何とか…」
朝友がそう話す。
「ええ。暫くは俺が神籬氏を送迎し、神社の管理を手伝おう。」
「宜しく頼みます。」
新堂の提案に、皆も納得し、改めてお願いする神籬。
新堂は、墨子の実家が空き家なのを聞くと、そこを住まいにした。
ーそして、1ヶ月が経とうとした頃…
◎和都歴450年 8月6日
置田村・神奈備・蛭子里 15時
8月になると、里に旅人と名乗る2人組が現れ、神籬と毎日神社へ掃除などの手伝いをする。
「雪平さんと、忌部さんのお陰で、色々と助かります。」
神籬は御礼を欠かさず、彼らを頼る。
雪平と忌部が、神籬らを知るのはこの時だった。
※第7章・6幕 ❝いつものことだ。❞
「そうそう、黄田組、アレも七草と双子の対峙により潰えましたよ…」
忌部が新堂にそう話す。
「…! 黄田組が?…大胡田さんや笹川は?誰も生き残りは?」
新堂が黄田組の行方を気にする。
「さぁ?黄田の組長らしい人は、神籬さんと懇意にしていることで双子に庇護されたとか?」
雪平が答える。
「組長…が…」
確かに、黄田は必ず神籬を見つけろと言っていた。双子との同盟の話も上がっていた中で、恐らくそう言わざるを得なかったことも、新堂は想像できた。
しかし、不義理な彼らに一切の同情はなく、生きているなら事実を伝えるのみと新堂は決めていた。
そして、龍の行水もまた…
「あれ?雨?」
物干し竿から取り込もうとする墨子は、その雨に気付く。
それが、止まぬ雨になるー
次回2026/10/30(金) 18:00~
「第1章・19幕 相次ぐ謎」を投稿予定です。
※10月はケダモノたちよ・2周年記念・強化月間です。
期間中は毎週(金) 及び祝日18:00に投稿致しますので、御期待下さい。




