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神隠し ~蛭子神社の怪異~  作者: 船橋新太郎
第1章・和都歴450年 7~8月 ~灰谷 墨子編~
19/23

第1章・17幕 神器を操る者

今回の登場人物


■ ▢ ■ ▢


・灰谷 墨子 (はいたにすみこ)

蛭子里の生まれで、朝友と喜朗とは幼馴染。母子家庭だったが、半年前の冬に母と姉が行方不明となり、灰谷家へと嫁ぐ。非力だが賢く、里でも若く美人との噂。


◎黄田組


・黄田 八太郎 (きだはちたろう)

黄田組・組長。赤島会から副統括の神籬の監視を命令され、そこに一定の人員を割くよう命令されているが、本人は組の力を付ける事に躍起。昔気質の横柄な崩れ者で、狡猾。生き残るためには家すらも売る薄情さを持つ。


・大胡田 意満 (おおこたおきみつ)

黄田組の若頭補佐。悪どい手口でも結果を出して出世するタイプ。巨漢で、素手の格闘を好む。黄色の法被に黒の股引きを履く。


・新堂 玲 (しんどうれい)

黄田組の一員。神奈備の貧民の出自。蓮太らと同じ歳でありながら、寺院に行かず、黄田組の使いから活躍し、大胡田の弟分として活動。寺院には行かずとも、書物など独学で知識を学び、知性的でもある。漆黒の装束で、ワイルドな風貌ながらイケメンで、ハスキーボイス。


■ ▢ ■ ▢




【前回までのあらすじ】


蛭子里に住む墨子は、山菜採りに北の森へと向かった、旦那・朝友と幼馴染・喜朗に合流する為、北の森へ、息子・美継と向かう。

森で、朝友と合流するも、喜朗の姿は見えない。

時間を掛けても喜朗の姿は見えなかった。神主・神籬すら見つからず、一旦帰宅をする。


明くる日、黄田組が統治の名目で重税を徴収しに来ると、朝友は、灰谷家の分を出す。

黄田組は、次に向かう先は水戸部家。雅代が襲われそうになるところを助けるが、妙に恋心を抱かれる。

朝友は、喜朗・捜索の前に、時常と交わる雅代を見る。その際に、雅代の幸せの為にも、喜朗・捜索をしようと心に決めるが、時常は雅代を失うことに堪え切れず、喜朗・殺害を企てる。

朝友より早く、神社へと赴き、喜朗を探す時常に、不気味な息遣いの何者かが迫る。

翌日、時常が帰らない事に、不安を抱く凛。

里の皆、墨子と朝友、勝巳らを交えて話していると、黄田組の重税に苦しむ秀忠が現れる。今直ぐにでも黄田組と神籬に、話をつけたいと憤る秀忠に、健右衛門が、官人として黄田組へ向かう。

秀忠は、勝巳に焚き付けられるように皆の反対を他所に、神社へと向かっていってしまう。

秀忠は、神社へと着くと、社務所の和室まで入るも、入り口に気配を感じると、その後、行方不明となる。

その頃、健右衛門は、黄田組へと赴き、重税の件で交渉に来ていた。

新堂は、神社への偵察を引き受けると、健右衛門は里へ黄田組の税に対し、便宜を図ると約束する。

健右衛門は目的を果たし、里へと帰っていった。


新堂は神社へと部下と共に向かうと、蛭子里で偵察任務をしていた羽芝霞に遭遇。霞は奇襲を受け、辛くも離脱する。新堂らは、当初の目標、神籬と町田の生存確認へと神社へ向かう。

誰も見つからない新堂は、夜警をすると決め、その夜を迎える。

笹川は外の音を気にして、玄関に行くと、それは後藤が夜風に当たっていただけだった。

しかし、その奥で、不気味な息遣いの者が、二人を見つめていた。


3日後、交代で見張りをすることになると、後藤が残り、新堂は里へ、笹川は集会所へと戻る。

里に着くと新堂は健右衛門に、何事もないが誰も居ない報告を済ませ、集会所へと帰っていく。

健右衛門は、吉崎凛を寝取る為にも、吉崎時常殺害を目論む。


一方、墨子は、朝友が帰らない事に危惧し、神社を見に行くことに。家を出たところに、健右衛門と鉢合わせ、一緒に神社へ行くこととなる。しかし、神社に着くも、居るはずの黄田組は煙のように消えていた。

雨に濡れる墨子を見て、襲いたくなる衝動に駆られる健右衛門は、墨子を神楽殿の地下控え室へと追い詰める。3つの控え室で右に隠れる墨子に、左の部屋で健右衛門は誰かに遭遇したようだったが、それは『狂える花魁』といえる怪異で、あっけなく殺されてしまう。

墨子も、狂える花魁から命からがら逃げ延びるも、正気でない男に遭遇、刃物を振り上げられる・・・



「た…助けて…!!」

墨子は、上へと戻る階段を駆け上がる。

戸は開いていて、神楽殿の舞台へと出てくる。


「急げ…急げ!」

譫言(うわごと)の様に呟きながら舞台を飛び降り、膝を付くと、墨子は大雨と泥にまみれる。


「グウウ…」


「いや!今度は何?」

墨子は目の前に包丁を持つ男が立っている。

如何にも正気を保っていない風貌だ。


「…だ…誰…!誰なの!?」

墨子が大きな声で問う。


「グギャァァッ!」

男は包丁を振り上げる。

◎和都歴450年 7月17日

置田村・神奈備・蛭子神社近くの道 16時


⦅きゃああっ!誰か!助けて!!⦆

新堂は、女性の悲鳴を聞く。

「何だ?女性を襲うゴロツキか?」


新堂は悲鳴のした神社へと走る。


そう、新堂は、少し前に、黄田組へ一度戻るなり、ある報告と決意をした。



◎黄田組 14時


新堂は大胡田に面会すると、事の顛末を話した。

「ほう?誰も居なく、3日間寝泊まりしても何も起こらなかった…と?」

「はい。」

「そりゃ、里の皆さんには顔は立ったかもしれんがな?」

大胡田がふんぞり返り、新堂を睨む。

「赤島会には何て報告するんだ?」

「それは…まあ。」

大胡田の不機嫌に、新堂は察するも、顔色を変えない。

「黄田組はこれから赤島会か、双子かの大事な時だ。土産は一つでも多い方がいい。それが神籬なら、言うことはない。」

「はい。理解しています。」

「あ?だったら何で手ぶらで帰ってくんだ?」


ーバキッ!


大胡田が新堂を殴り付ける。


ーガチャ…


「あ、オヤジ!」

「おう、大胡田。もういいから、下がってろ。」

黄田は部屋へ入ってくるなり、大胡田を下げ、倒れている新堂に手を伸ばす。

「いいか、新堂?儂がこれから交渉に臨む時によ、赤島か双子かに『神籬は居ませんでした』なんて言えない。わかるな?」

「はい…」

「交渉は、黄田組の今後が掛かってる。そん時に儂は、『神籬は然るべく場所に幽閉している』と答える。後はお前の努力次第だ。最悪は神籬を会わせなくちゃならない時がくるかもしれん。そん時までに神籬を用意しとけなきゃ、儂はお前を庇いきれねぇからな?」


ーわかりました…!



◎蛭子神社 16時


神社の奥から、何かに追われる女性が、こちらへ走ってくる。


「…! 助けて!」

墨子は、新堂の存在に気が付くと声を掛ける。


「ええ。ここは俺が。後ろに隠れていて下さい。」

新堂が追ってくる男らしき者に、斜に構える。



ー俺は、神籬を見つける。


しかし、黄田組への『手土産』じゃない。


俺自身が、直接『手土産』として渡す!


そして、不義理な老害共を始末し、俺なりの野蛮組織を作ってみせる…!



「グギャァァッ!」

正気を失ったような男が包丁で新堂に襲い掛かる。


ーガキン!


新堂は、左腕に巻き付ける赤と黒の交互に連なる鎖で、男の包丁を受け止める。


ードコッ!


新堂は、男に蹴りを入れて跳ね退ける。


「貰ったぜ?お前からの痛(・)み(・)をな?」


新堂の左腕に巻き付く、赤と黒の交互の鎖ー


肩を噛み付く様な黒豹の装飾品から、赤と黒の交互の鎖は腕を巻き付け、手首で交差する。


 裏神器『黒豹の器・無慈悲なる鎖』


鎖で受け止めた本来の痛みを、自らの攻撃力にプラスするー



「刃物なら、お前にも同等の攻撃をー」



ーザシュッ!



見えない刃で、男の首が飛ぶ。


「ー俺の手刀も、刃の如く…な?」



新堂玲…ー


ー彼もまた、神器を操る者…!

次回2026/10/23(金) 18:00~

「第1章・18幕 神籬 蓮庵」を投稿予定です。

   

※10月はケダモノたちよ・2周年記念・強化月間です。

期間中は毎週(金) 及び祝日18:00に投稿致しますので、御期待下さい。

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― 新着の感想 ―
新堂も神器を操ることができる人だったんですね。墨子が無事で良かったです。
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