序章・2幕 蛭子神社(後編)
今回の登場人物
■ ▢ ■ ▢
・八田 信二郎 (はったしんじろう)
赤島会・黄田組の末端の1人。詐欺で得た元手に、博打である程度の金を貯めた。里を買い占め、奴隷化を企む。
・座古 都子 (ざこみやこ)
貧民の出自で、信じていた許嫁に捨てられ、仕方なく美貌を武器に売春をして暮らす。そんな状況で信二郎に買われ、そのまま恋人となる。ハスキーボイスが特徴。
■ ▢ ■ ▢
【前回までのあらすじ】
悪行を経て得た金で、経済流通の乏しいとされる里『蛭子里』を目指す男女二人。八田 信二郎と座古 都子は、その金で里を買い占め、奴隷化を企んでいた。
日も暮れるという中、何とか蛯子神社まで辿り着くと、突然の激しい雷雨に見舞われる。
蛯子神社の社務所に入り、雨宿りを決める二人。
そんな雷雨の中の社務所を、外から覗く、不気味な息遣いをするモノがいた。
信二郎は、和室で休憩をすると、都子は、台所へお茶を淹れに行くが・・・
◎和都歴450年 6月20日 18時10分
置田村・神奈備・蛭子神社・社務所・廊下
辺りはすっかり暗くなり、雨音だけが不気味に夢ではなく現実だと感じさせる。
都子は、暗い廊下を手探りで何とか台所に着く。
ーガチャ…
「…真っ暗だわ…」
目が馴れてきても台所は、漆黒の闇に支配されていて、何も見えない…
ーピカッ!
「いやっ!」
ーゴロゴロ…
都子は、稲光に恐怖するも、その瞬間、正面に蝋燭が見えた。
急ぎ、蝋燭に灯りを点す。
「ふぅ…これでお茶くらいは淹れられるかしら…」
お茶の湯を沸かす都子。
◎和室 18時10分
都子が茶を淹れに和室を出ていくと、信二郎は、蝋燭を見つけてきて、灯りを点す。
水筒に入れてあった、僅かな酒を飲み干す。
「…あぁ…ンン…っと。」
信二郎は、ストレッチをしてリラックスすると、押入れを漁る。
「何もねぇな…布団くらい敷くか…」
雑に布団を敷いて、座り込む信二郎。
(…やっと里に着いたとはいえ、この大雨の中、里に移動するのもな…この神社は誰もいないみたいだし、今晩は寝床とさせてもらうか…)
ーピカッ!
ーゴロゴロ…
(黄田の組長の言う通りなら、里には金は流通していない。金の利便性を教えて、安く支配するなら今だ。俺の里を作り、赤島会に張る組織にしてみせる…!)
信二郎の頬に、雨で濡れた髪から水滴が流れると、今後の野望を滾らせた。
ーガラ…
「お茶、淹れたよ…」
都子がちゃぶ台に湯のみを置く。
「…」
「どしたの?真剣な顔して?」
都子は、濡れた髪を耳にかき揚げ、上着を脱ぐ。
「うわぁ…ヤバ…ビショビショよ…」
「…都子?」
「ん?」
ーピカッ!
外は漆黒の夜に降る豪雨と闇に支配されている。
そんな中、社務所の和室には、ほんのり蝋燭の灯りが点されている。
2つの影が抱き合うと、1つの影が押し倒される。
[スー…ファ~…スー…ファ~…]
そんな社務所の灯りを見つめながら、その人影は社務所へと近づく。
社務所の灯りが、人影の服装を照らし出す。
色までは分からないが、花魁が着るような、打掛を着こなす。
そして、この場にそぐわない不気味さを醸し出していた。
ーピカッ!
「アァン…ア…アンタァッ…!」
「み…都…子…!」
信二郎と都子は、雨音しかしない夜の社務所で、愛を確かめ合っていた。
目標達成まであと僅かという歓喜と、言葉に出来ない不安と恐怖が、より一層、情事を激しくする。
四つん這いにされる都子は、揺れるあまり、着物が徐々に開けていく。
「都子…もうすぐだ…幸せになれるぞ、俺達は…!今夜は激しくなりそうだ…!」
「う、うん…もっと…もっと…アンタァッ…!」
信二郎が、都子の開けた着物を脱がせると、露になる大きな乳房を鷲掴みにする。
ーピカッ!
[スー…ファ~…スー…ファ~…]
社務所の扉を開け、廊下を進む打掛を着る人影。
ーピカッ!
「…み…都子…そろそろ…」
カラダを激しく動かす信二郎。
「あぁん…ア、アンタ、いいよ、アンタァッ…!」
その動きに呼応して、髪とカラダが激しく揺れる都子は、大きなハスキーボイスで喘ぐー
ーガラッ…
「…!?」
「い…いやぁっ!!…な…何…!?」
[スー…ファ~…スー…ファ~…]
打掛を着る人影が、不気味な息遣いをして見つめる。
それは人外なるモノだと誰もが感じる容貌。
暗くて正体が見えないが、背が高く、眼光が赤く光る。
そして明らかな殺意を纏う。
「都子…逃げろ…!!」
ーピカッ!…ゴロゴロ…
ー・・・
ードサ…
血塗れの信二郎が白目で倒れる。
「…い…いやぁぁ!!!」
漆黒の社務所に、ほんのり明るい窓から、2人の影のうちの1人が宙吊りにされる。
「…く…くる…し…や…やめ…べ…ヴェ…ジェ…dj...#@...」
都子は足をバタバタさせながら床から徐々に離れていく。
そして、声が掠れていく。
ービシャ…
都子の吊るされた足は静止し、その床に何か液状のモノが垂れていく…
ードサ…
都子が中吊りから落とされ、床に倒れる。
[スー…ファ~…スー…ファ~…]
この物語には、2つの恐怖が付きまとう。
1つは、人が消えていく、神隠し。
もう1つは…猛獣か、妖怪か。
神社に近づく者は…惨殺される。
信二郎と都子。
この2人が、惨殺事件の初の被害者だった。
この時は、まだ大きな事件として扱われなかったが。
この物語は、この日から1ヶ月後の出来事である。
神隠し ~蛭子神社の怪異~
1ヶ月後ー
信二郎と都子が目指し、命を奪われた蛭子神社と蛭子里が舞台となる。
その里に住む女性・灰谷墨子。
彼女のストーリーが始まる。
そして更に1年10ヶ月後の里には、本編『ケダモノたちよ』の主人公、そして英雄となる、置田蓮太がこの里を訪れることになる。
里の怪異を暴き、その呪縛を解くことが出来るのか…
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神隠し ~蛭子神社の怪異~ 第1章へ続くー
次回2025/8/4(火) 18:00~
「第1章・1幕 蛭子里」を投稿予定です。
※8月はお盆休み・強化月間です。
期間中は毎週(火)(金) 及び祝日18:00に投稿致しますので、御期待下さい。




