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神隠し ~蛭子神社の怪異~  作者: 船橋新太郎
序章・和都歴450年 6月 ~若者二人編~
1/11

序章・1幕 蛭子神社(前編)

この物語は、2つの恐怖と2人の主人公が軸となるー。


神隠しなのか、人が消える事件…

妖怪の仕業か、人が惨殺される事件…


本編『ケダモノたちよ』では、長らく謎とされていた置田村の北地区・神奈備の副統括・神籬蓮庵。

いつからか、その行方は不明となり、本編でも蓮太らが僅かな情報を得るのみ。

そんな神籬の行方も明らかになるストーリー。


置田村の北地区・神奈備の中でも北に位置する蛭子神社。その裏に生い茂る森にひっそりと暮らす小さな集落『蛭子里』。

幾つかの家屋の内の1つ、灰谷家。

そこ嫁いだ妻、灰谷墨子。彼女を中心に、この話は展開していく。

若く、容姿端麗な墨子は、旦那・朝友との間に男児・美継を儲け、義父・儀兵衛と共に、長閑に暮らしていた。

しかし、冬に唯一の肉親である、母と姉が蛭子神社で失踪した。

月日も流れていく内、捜査も進展しないまま、事件は風化していく。


そして今、墨子の幼馴染・水戸部喜朗、その妻・雅代、最近中心部より移住してきた三条勝巳など、個性的な住人を交え、この里に起こる不思議な怪奇事件をあなたは目撃する…


ーーー


そんな彼らの生活より1ヶ月前、ある2人がこの『蛭子神社』を訪れていた。

序章は、その2人の物語。

そして、それは失踪事件とは別に、惨殺事件の最初の被害者でもあった…

◎和都歴450年 6月20日 14時

置田村・神奈備・白石組集会所 北の森


2人の男女が歩いている。

2人は本置田で、博打や詐欺、悪行で金を蓄え、閑散とする村の奥地へと向かっていた。

「こんな奥地まで来て、そもそも人住んでるの?」

「…ああ。何でも古い神社の裏手には、隠れ里があるらしい…」

「それなら…いいけど…無駄足はごめー

ーンン…!?」

男は女に口づけをする。

「俺を信じろ。この金で、置田蓮次のように支配者になってやるさ。」

「…アンタ…」

2人は金の流通の少ない、その里を狙っていた。経済というものの利便性を教える一方で、金で人を買い、労働力にしようと画策していたのだ。

「さあ、行くぞ。俺たちの里に、な。」

八田 信二郎(はったしんじろう)。赤島会・黄田組の末端の1人。詐欺で得た元手に、博打である程度の金を貯めた。経済流通の無い里を買い占め、奴隷化を企む。


2人はしばらく森を歩く。


ーガサ…


「きゃあ!何?」


…リスが逃げていく。


「リスくらいで大きな声を出すなよ…」

信二郎が嗜める。

「だっ…だって熊かと思って…」

座古 都子(ざこみやこ)。貧民の出自で、信じていた許嫁に捨てられ、仕方なく美貌を武器に売春をして暮らす。そんな状況で信二郎に買われ、そのまま恋人となる。ハスキーボイスが特徴。


「行くぞ!夕暮れ前には着かないと、それこそ熊でも出そうだ。」

「あ、待ってよ~!」


鬱蒼とする森に、静かに不気味な風が吹く。

そして、2人を茂みから見つめる瞳があった…



◎和都歴450年 6月20日 17時

置田村・神奈備・蛭子神社


信二郎と都子は、何とか夕暮れ前に蛭子神社へと辿り着く。

蛭子神社は小高い丘の上にあり、東を向いて鳥居が立つ。

南側から西にかけては崖になっており、入口はその東1つのみである。

北側には、里があるが、知らない者からはまず見えない。

西に向かって、鳥居を抜けると、随神門をくぐり、神池を跨ぐ神橋を渡り、右手に社務所、左手に手水舎がある。

さらに奥の右手に授与所、左手に神木と神楽殿があり、中央奥に本殿がある。


「意外と…大きいんだな…」

信二郎がまず鳥居をくぐり、辺りが薄暗くなる神社に、少し不気味さを感じながらも、振り返る。

「都子、来いよ。着いたぞ。蛭子神社だ。」

「う、うん。」

都子も少し不気味さを感じながらも、鳥居をくぐり、信二郎の腕を掴む。

「何だか気味が悪いわ…」

「離れるな。行くぞ。」

2人は随神門まで歩く。


[スー…]

周囲の空気全てを吸い込むようなバキューム…

[ファ~…]

体内の隅々にある大気を絞り出すかのようなエクスヘイル…

[スー…ファ~…スー…ファ~…]

随神門を抜ける2人を、不気味な息遣いの何者かが見つめる…


2人はそのまま、神橋を渡る。

すると、右手の森の茂みから里の灯りが見える。

「あ、あれだ。あれが里じゃないか?」

「やっと着いた~」


ーピカッ!ザァァ…


「うわ、雷雨だ!」

突然の雷雨に辺りが見えなくなるくらい雨が降り出すと、信二郎は都子の手を引き、走る。

「スゴい雨量だ!一旦あそこへ…!」

2人は社務所に走り込む。

「ハァハァ…大丈夫か、都子?」

「ハァハァ…うん、ビショビショよ…」

2人は社務所に辿り着くも、巫女も誰の姿もない。

「雨も止まなそうだし、今夜はここで休ませてもらうか…お~い、誰かいるか!?」

信二郎は声をあげる。

「誰も居ないのかしら?」

不思議がる都子。

「時間も時間だしな…中へ行くか。」

信二郎は都子を後ろに据えて、受付隣の扉を開けて、社務所の中へと入っていく…


ーピカッ…ゴロゴロ…


「きゃあ!」

雷鳴に驚愕する都子。

雷雲が社務所の中をも薄暗くし、稲光をより一層不気味さを醸し出す…

「…行くぞ?」

信二郎は都子の手を握り、恐る恐る廊下を進む。


廊下は左手に和室と、右手にトイレがあり、突き当たりに台所があるようだ。

「和室で、少し休もう…」


ーガラ…


和室にも誰もいない…

「この神社、廃墟なのかしら?」

都子は不安を口にする。

「いや、にしてはまだ綺麗だ…とりあえず、ランプに灯りを…」

部屋を明るくすると、居心地の良さそうな部屋であることがわかる。

「私、台所でお茶でも淹れてくる。」

「ああ、頼むよ。」

都子は、奥の台所へ向かう。


ーザァァ…


外は変わらず豪雨が降り注ぎ、社務所は、その雨音でひしめいていた。

[スー…ファ~…スー…ファ~…]

そんな社務所を、ずぶ濡れの中、見つめる人影があった…

次回2026/7/25(土) 18:00~

「序章・2幕 蛭子神社(後編)」を投稿予定です。


正式投稿は8月からの投稿致しますので、御期待下さい。

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― 新着の感想 ―
ハラハラ、ある意味ドキドキの展開になっていて、続きが楽しみです。
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