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神隠し ~蛭子神社の怪異~  作者: 船橋新太郎
第1章・和都歴450年 7~8月 ~灰谷 墨子編~
17/23

第1章・15幕 健右衛門の本性

今回の登場人物


■ ▢ ■ ▢


・灰谷 墨子 (はいたにすみこ)

蛭子里の生まれで、朝友と喜朗とは幼馴染。母子家庭だったが、半年前の冬に母と姉が行方不明となり、灰谷家へと嫁ぐ。非力だが賢く、里でも若く美人との噂。


・吉田 健右衛門 (よしだけんうえもん)

蛭子里の官人の1人。現状、一番経験が豊富な故、官人所役・神奈備支部からの信用も厚い。表向きは、その役職から紳士的で礼節を知る男として里でも名声があるが、実は権力により、弱者や女性を食い物にしてきたケダモノ。


■ ▢ ■ ▢




【前回までのあらすじ】


蛭子里に住む墨子は、山菜採りに北の森へと向かった、旦那・朝友と幼馴染・喜朗に合流する為、北の森へ、息子・美継と向かう。

森で、朝友と合流するも、喜朗の姿は見えない。

時間を掛けても喜朗の姿は見えなかった。神主・神籬すら見つからず、一旦帰宅をする。


明くる日、黄田組が統治の名目で重税を徴収しに来ると、朝友は、灰谷家の分を出す。

黄田組は、次に向かう先は水戸部家。雅代が襲われそうになるところを助けるが、妙に恋心を抱かれる。

朝友は、喜朗・捜索の前に、時常と交わる雅代を見る。その際に、雅代の幸せの為にも、喜朗・捜索をしようと心に決めるが、時常は雅代を失うことに堪え切れず、喜朗・殺害を企てる。

朝友より早く、神社へと赴き、喜朗を探す時常に、不気味な息遣いの何者かが迫る。

翌日、時常が帰らない事に、不安を抱く凛。

里の皆、墨子と朝友、勝巳らを交えて話していると、黄田組の重税に苦しむ秀忠が現れる。今直ぐにでも黄田組と神籬に、話をつけたいと憤る秀忠に、健右衛門が、官人として黄田組へ向かう。

秀忠は、勝巳に焚き付けられるように皆の反対を他所に、神社へと向かっていってしまう。

秀忠は、神社へと着くと、社務所の和室まで入るも、入り口に気配を感じると、その後、行方不明となる。

その頃、健右衛門は、黄田組へと赴き、重税の件で交渉に来ていた。

新堂は、神社への偵察を引き受けると、健右衛門は里へ黄田組の税に対し、便宜を図ると約束する。

健右衛門は目的を果たし、里へと帰っていった。


新堂は神社へと部下と共に向かうと、蛭子里で偵察任務をしていた羽芝霞に遭遇。霞は奇襲を受け、辛くも離脱する。新堂らは、当初の目標、神籬と町田の生存確認へと神社へ向かう。

誰も見つからない新堂は、夜警をすると決め、その夜を迎える。

笹川は外の音を気にして、玄関に行くと、それは後藤が夜風に当たっていただけだった。

しかし、その奥で、不気味な息遣いの者が、二人を見つめていた。


3日後、交代で見張りをすることになると、後藤が残り、新堂は里へ、笹川は集会所へと戻る。

里に着くと新堂は健右衛門に、何事もないが誰も居ない報告を済ませ、集会所へと帰っていく。

健右衛門は、吉崎凛を寝取る為にも、吉崎時常殺害を目論む。


一方、墨子は、朝友が帰らない事に危惧し、神社を見に行くことに。家を出たところに、健右衛門と鉢合わせ、一緒に神社へ行くこととなる。しかし、神社に着くも、居るはずの黄田組は煙のように消えていた・・・



「誰か居ました?」

墨子の質問に、首を横に降る健右衛門。

「どうします?またも神隠しに…?私は朝友のことを…」

墨子の話が耳に入らず、考え事をする健右衛門。

(どういう事だ?墨子さんの言う通り、またも神隠しに…既に10近い者がこの神社で消えている…それは確かだろう…その調査を黄田組に任せたものの、3日間は何も起こらず、そのまま常駐させた者が消えたのか?それとも逃げたのか?何にしても黄田組に真意を聞く他無いー)

「ーいてますか?健右衛門さん?」

「あ、ああ。」

「雨が酷くなる前に、私、少し周りを見てきます。」

(とりあえず、墨子さんと2人きりになっているという事実は変わらない…)

「僕も共にいこう。」

(この際、機を見てヤルか。こういう役得を幾度も味わったが、墨子さんが回ってくるとは…)

健右衛門が再びケダモノの様に微笑む。

◎和都歴450年 7月17日

置田村・神奈備・蛭子神社 15時


墨子と健右衛門が、本堂とその裏を見回していると、雨はいきなり激しくなる。


ーザァァァ…


「スゴい雨…一旦、社務所へ戻りましょう。」

「それがいい!」

墨子がそう提案すると、健右衛門も了解し、社務所へと走り込む。


「スゴい雨…」

墨子は羽織を取って絞ると、雨水が滝のように落ちる。

墨子は、熊に遭遇することも考え、小袖に肌着、下も肌着1枚に短いスカートの様な腰巻きのみで、羽織を取ると胸元から太股の露出が多い状態だった。

その姿に、健右衛門が好機と感じないわけもない。

「す…」

「…え?どうしー」

「墨子さんー」


ーガタッ!


いきなり近寄る健右衛門を掴み、押し退ける墨子。

「ちょっ…どうしたんですか健右衛門さん?止めて下さい!」

「ハハハ…止めて下さいって…その服装は誘ってるんだろ?さすが里イチとも噂されるカラダだ。他の女性とは何かが違う…」

完全に狂喜の表情の健右衛門に、危うさを感じる墨子。

「他の女性?」

「ああ、そうだ。里の女性の殆どは、それとなく頂いたよ。後は墨子さん、き、君だけだ!」

墨子は、危機を察して、持ってきた包丁を大振りする。

「来ないで!」

墨子が応戦する。

「止めなさい。君も僕の女性の1人になれば、苦しむことはない。でなければ、楽しんだ後…」

「…いや…」

「殺さなくては!」

墨子はもう一振すると、健右衛門の左腕を刃が掠(かす)る。

「…ハ…ハァァ~!?」

健右衛門は左腕の血を右手で拭き取り、まじまじと見る。

「痛いな…?墨子~!」

健右衛門が刀を抜く。

「いやぁぁ!」

墨子は、社務所を飛び出し、大雨の中を走る。


ー誰か…誰か助けて…!


あまりの恐怖に心で叫ぶ墨子。

「待て~墨子~!」


本堂の前を横切り、


ーどこか、どこかに隠れないと…!


「待て~!」


墨子は、神楽殿に辿り着く。

舞台に上がり、戸を開けて中へと入ると、降りる階段が二手に別れていた。

右を選び、降りた先、正面には控え室が3部屋ある。


ーガラッ!


一番右の控え室へと入り、鍵をすると、奥の物置スペースへと隠れる。


健右衛門も神楽殿に辿り着くと、舞台奥の戸が開いているのを見るや、ニヤリと笑う。


濡れた足跡を追い、右手の階段を降りる。


「墨子~…墨子ちゃん…?」


隠れる墨子は、降りながら叫ぶ健右衛門の声が響き渡り、恐怖する。


(神様…朝友…誰か…誰か…!!)

早口で呟く墨子は、恐怖で視界は狭くなる。


ーガラッ!


「ー!」

ビクッとする墨子。


⦅墨子~…墨子ちゃ~ん…⦆


隣の部屋だろうか?声が響いてくる。


⦅どこかな~暗い方が…愉しむには…いいよね…?⦆


部屋を出たのか、声が近づく。


⦅何だか、スーハースーハーって音がするよ?息遣い荒くなってるね?墨子ちゃん?⦆


ーガラッ!


「ー!」

ビクッとするも、この部屋ではないようだ。少し遠のいた事から、一番左に行ったのだろうか。

(どうしよう…次こそバレちゃう…何か、何か考えないと、このままー)

⦅アレ~?そこに居るのは墨子ちゃんかなぁ?スーハースーハー、興奮してきたんだねェェ?⦆

健右衛門のいやらしい叫び声だ。

「え?私?いや、スーハー?私はここにー」


⦅ダメだよ~僕の愛を受け入れる気になってくれ…ん?んん?な、何だ?お前、墨子じゃない?⦆


ードタ!


健右衛門の慌てる叫び声と、転んだであろう音が聞こえる。


(…何?…誰?…何が起こってるの!?)

墨子は新たな恐怖に錯乱する。

次回2026/10/12(月) 18:00~

「第1章・16幕 狂える花魁」を投稿予定です。


※10月はケダモノたちよ・2周年記念・強化月間です。

期間中は毎週(金) 及び祝日18:00に投稿致しますので、御期待下さい。

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― 新着の感想 ―
墨子は逃げ切れたのですか?健右衛門、怪しい息遣いの者にやられたんですかね。
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