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神隠し ~蛭子神社の怪異~  作者: 船橋新太郎
第1章・和都歴450年 7~8月 ~灰谷 墨子編~
16/23

第1章・14幕 またも神隠し

今回の登場人物


■ ▢ ■ ▢


◎灰谷家


・灰谷 墨子 (はいたにすみこ)

蛭子里の生まれで、朝友と喜朗とは幼馴染。母子家庭だったが、半年前の冬に母と姉が行方不明となり、灰谷家へと嫁ぐ。非力だが賢く、里でも若く美人との噂。


・灰谷 美継 (はいたによしつぐ)

朝友と墨子の息子。純粋無垢で、母・墨子を慕う健気な少年。真っ白い甚兵衛が特徴的。


ーーー


・三条 勝巳 (さんじょうかつみ)

本編・三条勝太郎の実父。妻と勝太郎を捨てた後、何故か蛭子里へと流れ着く。里では近代的な男前、と評判だが、裏の顔は好色と貪欲の悪人。


・吉田 健右衛門 (よしだけんうえもん)

蛭子里の官人の1人。現状、一番経験が豊富な故、官人所役・神奈備支部からの信用も厚い。表向きは、その役職から紳士的で礼節を知る男として里でも名声があるが…


■ ▢ ■ ▢




【前回までのあらすじ】


蛭子里に住む墨子は、山菜採りに北の森へと向かった、旦那・朝友と幼馴染・喜朗に合流する為、北の森へ、息子・美継と向かう。

森で、朝友と合流するも、喜朗の姿は見えない。

時間を掛けても喜朗の姿は見えなかった。神主・神籬すら見つからず、一旦帰宅をする。


明くる日、黄田組が統治の名目で重税を徴収しに来ると、朝友は、灰谷家の分を出す。

黄田組は、次に向かう先は水戸部家。雅代が襲われそうになるところを助けるが、妙に恋心を抱かれる。

朝友は、喜朗・捜索の前に、時常と交わる雅代を見る。その際に、雅代の幸せの為にも、喜朗・捜索をしようと心に決めるが、時常は雅代を失うことに堪え切れず、喜朗・殺害を企てる。

朝友より早く、神社へと赴き、喜朗を探す時常に、不気味な息遣いの何者かが迫る。

翌日、時常が帰らない事に、不安を抱く凛。

里の皆、墨子と朝友、勝巳らを交えて話していると、黄田組の重税に苦しむ秀忠が現れる。今直ぐにでも黄田組と神籬に、話をつけたいと憤る秀忠に、健右衛門が、官人として黄田組へ向かう。

秀忠は、勝巳に焚き付けられるように皆の反対を他所に、神社へと向かっていってしまう。

秀忠は、神社へと着くと、社務所の和室まで入るも、入り口に気配を感じると、その後、行方不明となる。

その頃、健右衛門は、黄田組へと赴き、重税の件で交渉に来ていた。

新堂は、神社への偵察を引き受けると、健右衛門は里へ黄田組の税に対し、便宜を図ると約束する。

健右衛門は目的を果たし、里へと帰っていった。


新堂は神社へと部下と共に向かうと、蛭子里で偵察任務をしていた羽芝霞に遭遇。霞は奇襲を受け、辛くも離脱する。新堂らは、当初の目標、神籬と町田の生存確認へと神社へ向かう。

誰も見つからない新堂は、夜警をすると決め、その夜を迎える。

笹川は外の音を気にして、玄関に行くと、それは後藤が夜風に当たっていただけだった。

しかし、その奥で、不気味な息遣いの者が、二人を見つめていた。


3日後、交代で見張りをすることになると、後藤が残り、新堂は里へ、笹川は集会所へと戻る。

里に着くと新堂は健右衛門に、何事もないが誰も居ない報告を済ませ、集会所へと帰っていく。

健右衛門は、吉崎凛を寝取る為にも、吉崎時常殺害を目論む・・・



「3日も泊まり込みで探索しましたが、人っ子一人見つからず。ある意味で、本当に神隠しではあります。」

「ほう?死体の1つでも予期していましたが、そうですか。」

新堂の報告に健右衛門は、どこか落胆する。

「とりあえず、黄田組としての使命は全うしたので、一度帰還します。念のため、交代で神社に泊まり込むので、吉田さんも一度、お時間を作り、神社へ立ち寄ってみてくださいよ。では、これにて。」

新堂が番所を出て行く。


(本当に神隠しなのか?僕としては、時常さえ死んでいれば、他はどうでもいいが…それも兼ねて、やはり見に行くしかないか…)

健右衛門は、疚(やま)しい悩みで溢れ返ると、茶を一気に飲み干した。

◎和都歴450年 7月17日

置田村・神奈備・蛭子里・灰谷家 13時


昨日、朝友は凛との約束通り、雨が上がると山菜採りを兼ねて、神社へと時常の捜索に向かった。

しかし、山菜取採りの最中に泥濘に足を取られ、斜面から転落してしまう。

足を挫いて、一晩斜面から程ない小さな祠で、そっと休養を取っていた。


墨子は、帰らない朝友に危惧を憂うと、それなりの準備をし、朝友捜索へと向かう。

「お母、ホントに行くの?」

美継が心配する。

「直ぐ戻るから。お父がきっと待ってる。美継はここでイイ子で待っててね。」

墨子の話を聞くと、寂しそうに頷いてみせる。

その姿を最後に見て、墨子は家を出て、北の森へ続く里の道を一人歩き始める。


「さて…と。待ってて、朝友…!」


「墨子さん?」

背後から健右衛門の声がした。

「健右衛門さん?」

「そんな武装して何処へ?まさか…」

墨子の荷物の多さに、健右衛門はまさかと予想する。

「はい、昨日から旦那も帰ってこない…行くしか…」

「…墨子さん…君って人は…」

(神社には黄田の部下がいる…加えて…墨子さんと2人きり、というのは悪くない…)

健右衛門は、墨子の体つきを改めて見ながら、邪なる策謀をする。

「いや、危険だ。僕も同行するよ。」

「本当ですか?心強いです。」

そう言って墨子が先人を切る後ろで、健右衛門はケダモノの様に微笑む。


そんな2人が里を出ていく後ろ姿を、勝巳が家の影から見つめていた。


◎森の道 13時半


「雨が降りそうですね…」

「そうだね。早く向かおう。」

「はい。」

墨子が一度立ち止まると、急かす健右衛門。

(あれ?あんな森の中に古い井戸があったんだ…?)

墨子は古い井戸を見つけるも、先を急いだ。


◎蛭子神社 14時


ーポツ…ポツ…


2人が森の道から鳥居が見えてくる頃、小雨が降り始める。

「そうだ、墨子さん。僕の力で黄田組の者をここの社務所に常駐させている。」

「本当ですか?それは頼もしいですね!」

健右衛門の言葉に、少し安堵する墨子。

「里の者のため、交渉には苦労しました…早速役立てましょう。」

2人は鳥居から社務所まで歩いていくと、社務所の扉は開いたままになっていた。

2人は顔を見合わせる。

「ここは僕が。墨子さんは外で見張りを。何かあれば声をあげますから。」

「は、はい。気をつけて…」

健右衛門は、黄田組の者らがいる事で、良い格好をする。

中へと入り、和室までくる。


ーガラ…


「おや…?」

誰もいない。

(出掛けたのか?布団もまだ温かい…食べ物なども残してある…)

健右衛門が不思議に思うと、一旦、玄関まで戻る。


「誰か居ました?」

墨子の質問に、首を横に降る健右衛門。

「どうします?またも神隠しに…?私は朝友のことを…」

墨子の話が耳に入らず、考え事をする健右衛門。

(どういう事だ?墨子さんの言う通り、またも神隠しに…既に10近い者がこの神社で消えている…それは確かだろう…その調査を黄田組に任せたものの、3日間は何も起こらず、そのまま常駐させた者が消えたのか?それとも逃げたのか?何にしても黄田組に真意を聞く他無いー)

「ーいてますか?健右衛門さん?」

「あ、ああ。」

「雨が酷くなる前に、私、少し周りを見てきます。」

(とりあえず、墨子さんと2人きりになっているという事実は変わらない…)

「僕も共にいこう。」

(この際、機を見てヤルか。こういう役得を幾度も味わったが、墨子さんが回ってくるとは…)

健右衛門が再びケダモノの様に微笑む。

次回2026/10/9(金) 18:00~

「第1章・15幕 健右衛門の本性」を投稿予定です。

   

※10月はケダモノたちよ・2周年記念・強化月間です。

期間中は毎週(金) 及び祝日18:00に投稿致しますので、御期待下さい。

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― 新着の感想 ―
墨子、危険ですね。早く逃げなくては、、。朝友が見つかればいいのですが。
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