第1章・14幕 またも神隠し
今回の登場人物
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◎灰谷家
・灰谷 墨子 (はいたにすみこ)
蛭子里の生まれで、朝友と喜朗とは幼馴染。母子家庭だったが、半年前の冬に母と姉が行方不明となり、灰谷家へと嫁ぐ。非力だが賢く、里でも若く美人との噂。
・灰谷 美継 (はいたによしつぐ)
朝友と墨子の息子。純粋無垢で、母・墨子を慕う健気な少年。真っ白い甚兵衛が特徴的。
ーーー
・三条 勝巳 (さんじょうかつみ)
本編・三条勝太郎の実父。妻と勝太郎を捨てた後、何故か蛭子里へと流れ着く。里では近代的な男前、と評判だが、裏の顔は好色と貪欲の悪人。
・吉田 健右衛門 (よしだけんうえもん)
蛭子里の官人の1人。現状、一番経験が豊富な故、官人所役・神奈備支部からの信用も厚い。表向きは、その役職から紳士的で礼節を知る男として里でも名声があるが…
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【前回までのあらすじ】
蛭子里に住む墨子は、山菜採りに北の森へと向かった、旦那・朝友と幼馴染・喜朗に合流する為、北の森へ、息子・美継と向かう。
森で、朝友と合流するも、喜朗の姿は見えない。
時間を掛けても喜朗の姿は見えなかった。神主・神籬すら見つからず、一旦帰宅をする。
明くる日、黄田組が統治の名目で重税を徴収しに来ると、朝友は、灰谷家の分を出す。
黄田組は、次に向かう先は水戸部家。雅代が襲われそうになるところを助けるが、妙に恋心を抱かれる。
朝友は、喜朗・捜索の前に、時常と交わる雅代を見る。その際に、雅代の幸せの為にも、喜朗・捜索をしようと心に決めるが、時常は雅代を失うことに堪え切れず、喜朗・殺害を企てる。
朝友より早く、神社へと赴き、喜朗を探す時常に、不気味な息遣いの何者かが迫る。
翌日、時常が帰らない事に、不安を抱く凛。
里の皆、墨子と朝友、勝巳らを交えて話していると、黄田組の重税に苦しむ秀忠が現れる。今直ぐにでも黄田組と神籬に、話をつけたいと憤る秀忠に、健右衛門が、官人として黄田組へ向かう。
秀忠は、勝巳に焚き付けられるように皆の反対を他所に、神社へと向かっていってしまう。
秀忠は、神社へと着くと、社務所の和室まで入るも、入り口に気配を感じると、その後、行方不明となる。
その頃、健右衛門は、黄田組へと赴き、重税の件で交渉に来ていた。
新堂は、神社への偵察を引き受けると、健右衛門は里へ黄田組の税に対し、便宜を図ると約束する。
健右衛門は目的を果たし、里へと帰っていった。
新堂は神社へと部下と共に向かうと、蛭子里で偵察任務をしていた羽芝霞に遭遇。霞は奇襲を受け、辛くも離脱する。新堂らは、当初の目標、神籬と町田の生存確認へと神社へ向かう。
誰も見つからない新堂は、夜警をすると決め、その夜を迎える。
笹川は外の音を気にして、玄関に行くと、それは後藤が夜風に当たっていただけだった。
しかし、その奥で、不気味な息遣いの者が、二人を見つめていた。
3日後、交代で見張りをすることになると、後藤が残り、新堂は里へ、笹川は集会所へと戻る。
里に着くと新堂は健右衛門に、何事もないが誰も居ない報告を済ませ、集会所へと帰っていく。
健右衛門は、吉崎凛を寝取る為にも、吉崎時常殺害を目論む・・・
「3日も泊まり込みで探索しましたが、人っ子一人見つからず。ある意味で、本当に神隠しではあります。」
「ほう?死体の1つでも予期していましたが、そうですか。」
新堂の報告に健右衛門は、どこか落胆する。
「とりあえず、黄田組としての使命は全うしたので、一度帰還します。念のため、交代で神社に泊まり込むので、吉田さんも一度、お時間を作り、神社へ立ち寄ってみてくださいよ。では、これにて。」
新堂が番所を出て行く。
(本当に神隠しなのか?僕としては、時常さえ死んでいれば、他はどうでもいいが…それも兼ねて、やはり見に行くしかないか…)
健右衛門は、疚しい悩みで溢れ返ると、茶を一気に飲み干した。
◎和都歴450年 7月17日
置田村・神奈備・蛭子里・灰谷家 13時
昨日、朝友は凛との約束通り、雨が上がると山菜採りを兼ねて、神社へと時常の捜索に向かった。
しかし、山菜取採りの最中に泥濘に足を取られ、斜面から転落してしまう。
足を挫いて、一晩斜面から程ない小さな祠で、そっと休養を取っていた。
墨子は、帰らない朝友に危惧を憂うと、それなりの準備をし、朝友捜索へと向かう。
「お母、ホントに行くの?」
美継が心配する。
「直ぐ戻るから。お父がきっと待ってる。美継はここでイイ子で待っててね。」
墨子の話を聞くと、寂しそうに頷いてみせる。
その姿を最後に見て、墨子は家を出て、北の森へ続く里の道を一人歩き始める。
「さて…と。待ってて、朝友…!」
「墨子さん?」
背後から健右衛門の声がした。
「健右衛門さん?」
「そんな武装して何処へ?まさか…」
墨子の荷物の多さに、健右衛門はまさかと予想する。
「はい、昨日から旦那も帰ってこない…行くしか…」
「…墨子さん…君って人は…」
(神社には黄田の部下がいる…加えて…墨子さんと2人きり、というのは悪くない…)
健右衛門は、墨子の体つきを改めて見ながら、邪なる策謀をする。
「いや、危険だ。僕も同行するよ。」
「本当ですか?心強いです。」
そう言って墨子が先人を切る後ろで、健右衛門はケダモノの様に微笑む。
そんな2人が里を出ていく後ろ姿を、勝巳が家の影から見つめていた。
◎森の道 13時半
「雨が降りそうですね…」
「そうだね。早く向かおう。」
「はい。」
墨子が一度立ち止まると、急かす健右衛門。
(あれ?あんな森の中に古い井戸があったんだ…?)
墨子は古い井戸を見つけるも、先を急いだ。
◎蛭子神社 14時
ーポツ…ポツ…
2人が森の道から鳥居が見えてくる頃、小雨が降り始める。
「そうだ、墨子さん。僕の力で黄田組の者をここの社務所に常駐させている。」
「本当ですか?それは頼もしいですね!」
健右衛門の言葉に、少し安堵する墨子。
「里の者のため、交渉には苦労しました…早速役立てましょう。」
2人は鳥居から社務所まで歩いていくと、社務所の扉は開いたままになっていた。
2人は顔を見合わせる。
「ここは僕が。墨子さんは外で見張りを。何かあれば声をあげますから。」
「は、はい。気をつけて…」
健右衛門は、黄田組の者らがいる事で、良い格好をする。
中へと入り、和室までくる。
ーガラ…
「おや…?」
誰もいない。
(出掛けたのか?布団もまだ温かい…食べ物なども残してある…)
健右衛門が不思議に思うと、一旦、玄関まで戻る。
「誰か居ました?」
墨子の質問に、首を横に降る健右衛門。
「どうします?またも神隠しに…?私は朝友のことを…」
墨子の話が耳に入らず、考え事をする健右衛門。
(どういう事だ?墨子さんの言う通り、またも神隠しに…既に10近い者がこの神社で消えている…それは確かだろう…その調査を黄田組に任せたものの、3日間は何も起こらず、そのまま常駐させた者が消えたのか?それとも逃げたのか?何にしても黄田組に真意を聞く他無いー)
「ーいてますか?健右衛門さん?」
「あ、ああ。」
「雨が酷くなる前に、私、少し周りを見てきます。」
(とりあえず、墨子さんと2人きりになっているという事実は変わらない…)
「僕も共にいこう。」
(この際、機を見てヤルか。こういう役得を幾度も味わったが、墨子さんが回ってくるとは…)
健右衛門が再びケダモノの様に微笑む。
次回2026/10/9(金) 18:00~
「第1章・15幕 健右衛門の本性」を投稿予定です。
※10月はケダモノたちよ・2周年記念・強化月間です。
期間中は毎週(金) 及び祝日18:00に投稿致しますので、御期待下さい。




