第1章・13幕 報告
今回の登場人物
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◎黄田組
・新堂 玲 (しんどうれい)
黄田組の一員。神奈備の貧民の出自。蓮太らと同じ歳でありながら、寺院に行かず、黄田組の使いから活躍し、大胡田の弟分として活動。寺院には行かずとも、書物など独学で知識を学び、知性的でもある。漆黒の装束で、ワイルドな風貌ながらイケメンで、ハスキーボイス。
・笹川新之助 (ささかわしんのすけ)
黄田組員。用心深いが故、臆病な性格だが、腕の立つ武闘派。
◎里の住人
・吉田 健右衛門 (よしだけんうえもん)
蛭子里の官人の1人。現状、一番経験が豊富な故、官人所役・神奈備支部からの信用も厚い。表向きは、その役職から紳士的で礼節を知る男として里でも名声があるが…
・吉崎 凛 (よしざきりん)
時常の嫁で、吉崎家の令嬢。育ちの良さを醸し出す桜色の着物と、簪で長い髪を結う。豊満な胸元と、口元のホクロが印象的。
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【前回までのあらすじ】
蛭子里に住む墨子は、山菜採りに北の森へと向かった、旦那・朝友と幼馴染・喜朗に合流する為、北の森へ、息子・美継と向かう。
森で、朝友と合流するも、喜朗の姿は見えない。
時間を掛けても喜朗の姿は見えなかった。神主・神籬すら見つからず、一旦帰宅をする。
明くる日、黄田組が統治の名目で重税を徴収しに来ると、朝友は、灰谷家の分を出す。
黄田組は、次に向かう先は水戸部家。雅代が襲われそうになるところを助けるが、妙に恋心を抱かれる。
朝友は、喜朗・捜索の前に、時常と交わる雅代を見る。その際に、雅代の幸せの為にも、喜朗・捜索をしようと心に決めるが、時常は雅代を失うことに堪え切れず、喜朗・殺害を企てる。
朝友より早く、神社へと赴き、喜朗を探す時常に、不気味な息遣いの何者かが迫る。
翌日、時常が帰らない事に、不安を抱く凛。
里の皆、墨子と朝友、勝巳らを交えて話していると、黄田組の重税に苦しむ秀忠が現れる。今直ぐにでも黄田組と神籬に、話をつけたいと憤る秀忠に、健右衛門が、官人として黄田組へ向かう。
秀忠は、勝巳に焚き付けられるように皆の反対を他所に、神社へと向かっていってしまう。
秀忠は、神社へと着くと、社務所の和室まで入るも、入り口に気配を感じると、その後、行方不明となる。
その頃、健右衛門は、黄田組へと赴き、重税の件で交渉に来ていた。
新堂は、神社への偵察を引き受けると、健右衛門は里へ黄田組の税に対し、便宜を図ると約束する。
健右衛門は目的を果たし、里へと帰っていった。
新堂は神社へと部下と共に向かうと、蛭子里で偵察任務をしていた羽芝霞に遭遇。霞は奇襲を受け、辛くも離脱する。新堂らは、当初の目標、神籬と町田の生存確認へと神社へ向かう。
誰も見つからない新堂は、夜警をすると決め、その夜を迎える。
笹川は外の音を気にして、玄関に行くと、それは後藤が夜風に当たっていただけだった。
しかし、その奥で、不気味な息遣いの者が、二人を見つめていた・・・
笹川は玄関のドアを開けようと手を伸ばす。
ーガラッ!
笹川が開ける前に扉が開く。
「ひっ!」
笹川はその瞬間、目を閉じる。
「笹川?どした?」
後藤が声をかける。
「…ご…後藤か…良かった…」
笹川は胸を撫で下ろす。
「変なヤツだな。」
「何してた?」
「見張りを兼ねて、外の空気を吸いに。」
「びっくりさせるなよ…!」
そう言って二人は和室へと戻る。
ーザァァァ…
[スー…ファ~…スー…ファ~…]
雨音にかき消される不気味な息遣い。
神池の方の茂みに、煌びやかな打掛が、二人のやり取りを覗いていた…
◎和都歴450年 7月17日
置田村・神奈備・蛭子神社 10時
神社の社務所に寝泊まりして3日が過ぎる。
「いい加減、もう帰るか。」
新堂が切り出す。
「神籬や町田さんについては、どう報告するんです?」
笹川が尋ねる。
「…まあ、3日居て何も起きない。安全性は担保できたし、3人で居ることもない。交代でもいいだろう。」
「なるほど。」
新堂の提案に、後藤も頷く。
「俺は里に寄ってから集会所へ戻る。二人で先行を決めてくれ。」
「了解。」
新堂はそう指示すると、神社を後に、里へと向かう。
「俺が残るよ。笹川は帰って食料調達を頼む。」
後藤がそういうと、笹川は頷き、神社を出ていく。
「さて、もう一眠りするか。」
後藤は布団の上で横になる。
ーガラッ…
「何だ?忘れ物ー」
ー!?
◎和都歴450年 7月17日
置田村・神奈備・蛭子里・吉崎家 11時
「やはり、奥さんのカラダは素晴らしい。良い休暇を取れましたよ。」
健右衛門は老化と怠慢からの貧相な裸に着物を着ながら、綺麗な裸で布団に佇む凛に話し掛ける。
「…旦那は、まだ見つからないのですか?」
凛が不安そうに話す。
「…ふぅ…」
また旦那の話かとばかりに、バカにしたような溜め息をつく健右衛門。
「まあ、今、依頼して調べて貰っています。近々見つかるでしょう。」
「…良かった。」
凛はどこかホッとする。
「…奥さん?」
健右衛門は、布団へとやってくるなり、凛の顎に触れる。
「旦那さんが無事かまでは保証できませんよ?」
「…そんな…」
「…僕も神様ではないんだ。そこでは保証できませんよ。まあ、その時は、最悪は僕がいる。只でさえ裕福な身だ。安全は官人の僕といた方が…奥さんも確実でしょう?」
「…でも。」
凛は俯く。
「…悪い結果の時は、僕を頼って下さい。悪いようにはしないから。」
健右衛門が口づけをしようとすると、凛は反らす。
「…ふぅ...。では、帰りますよ。」
健右衛門は吉崎家を出る。
(ったく…)
苦虫を噛み潰したような顔で吉崎家から出てくる。
「吉田…さん?やはりここか。」
新堂が現れる。
「おや、あなたは…」
「新堂です、黄田組の。ちょっと良いですか?」
新堂は爽やかに声をかける。
◎番所 12時
健右衛門がお茶を淹れてちゃぶ台に置くと、新堂の対面に座る。
「なぜ、僕が吉崎家だと判ったんです?」
「巡回のルートを聞きまして、時間的にあの辺りだろうと…」
「あ、なるほど…で、御用件は?」
新堂の答えに、どこか安堵する健右衛門は、切り替えて質問する。
「調査の報告ですよ。3日も泊まり込みで探索しましたが、人っ子一人見つからず。ある意味で、本当に神隠しではあります。」
「ほう?死体の1つでも予期していましたが、そうですか。」
新堂の報告に健右衛門は、どこか落胆する。
「とりあえず、黄田組としての使命は全うしたので、一度帰還します。念のため、交代で神社に泊まり込むので、吉田さんも一度、お時間を作り、神社へ立ち寄ってみてくださいよ。では、これにて。」
新堂が番所を出て行く。
(本当に神隠しなのか?僕としては、時常さえ死んでいれば、他はどうでもいいが…それも兼ねて、やはり見に行くしかないか…)
健右衛門は、疚しい悩みで溢れ返ると、茶を一気に飲み干した。
次回2026/10/2(金) 18:00~
「 第1章・14幕 またも神隠し」を投稿予定です。
※10月はケダモノたちよ・2周年記念・強化月間です。
期間中は毎週(金) 及び祝日18:00に投稿致しますので、御期待下さい。




