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神隠し ~蛭子神社の怪異~  作者: 船橋新太郎
第1章・和都歴450年 7~8月 ~灰谷 墨子編~
15/23

第1章・13幕 報告

今回の登場人物


■ ▢ ■ ▢


◎黄田組


・新堂 玲 (しんどうれい)

黄田組の一員。神奈備の貧民の出自。蓮太らと同じ歳でありながら、寺院に行かず、黄田組の使いから活躍し、大胡田の弟分として活動。寺院には行かずとも、書物など独学で知識を学び、知性的でもある。漆黒の装束で、ワイルドな風貌ながらイケメンで、ハスキーボイス。


・笹川新之助 (ささかわしんのすけ)

黄田組員。用心深いが故、臆病な性格だが、腕の立つ武闘派。



◎里の住人


・吉田 健右衛門 (よしだけんうえもん)

蛭子里の官人の1人。現状、一番経験が豊富な故、官人所役・神奈備支部からの信用も厚い。表向きは、その役職から紳士的で礼節を知る男として里でも名声があるが…


・吉崎 凛 (よしざきりん)

時常の嫁で、吉崎家の令嬢。育ちの良さを醸し出す桜色の着物と、簪で長い髪を結う。豊満な胸元と、口元のホクロが印象的。


■ ▢ ■ ▢




【前回までのあらすじ】


蛭子里に住む墨子は、山菜採りに北の森へと向かった、旦那・朝友と幼馴染・喜朗に合流する為、北の森へ、息子・美継と向かう。

森で、朝友と合流するも、喜朗の姿は見えない。

時間を掛けても喜朗の姿は見えなかった。神主・神籬すら見つからず、一旦帰宅をする。


明くる日、黄田組が統治の名目で重税を徴収しに来ると、朝友は、灰谷家の分を出す。

黄田組は、次に向かう先は水戸部家。雅代が襲われそうになるところを助けるが、妙に恋心を抱かれる。

朝友は、喜朗・捜索の前に、時常と交わる雅代を見る。その際に、雅代の幸せの為にも、喜朗・捜索をしようと心に決めるが、時常は雅代を失うことに堪え切れず、喜朗・殺害を企てる。

朝友より早く、神社へと赴き、喜朗を探す時常に、不気味な息遣いの何者かが迫る。

翌日、時常が帰らない事に、不安を抱く凛。

里の皆、墨子と朝友、勝巳らを交えて話していると、黄田組の重税に苦しむ秀忠が現れる。今直ぐにでも黄田組と神籬に、話をつけたいと憤る秀忠に、健右衛門が、官人として黄田組へ向かう。

秀忠は、勝巳に焚き付けられるように皆の反対を他所に、神社へと向かっていってしまう。

秀忠は、神社へと着くと、社務所の和室まで入るも、入り口に気配を感じると、その後、行方不明となる。

その頃、健右衛門は、黄田組へと赴き、重税の件で交渉に来ていた。

新堂は、神社への偵察を引き受けると、健右衛門は里へ黄田組の税に対し、便宜を図ると約束する。

健右衛門は目的を果たし、里へと帰っていった。


新堂は神社へと部下と共に向かうと、蛭子里で偵察任務をしていた羽芝霞に遭遇。霞は奇襲を受け、辛くも離脱する。新堂らは、当初の目標、神籬と町田の生存確認へと神社へ向かう。

誰も見つからない新堂は、夜警をすると決め、その夜を迎える。

笹川は外の音を気にして、玄関に行くと、それは後藤が夜風に当たっていただけだった。

しかし、その奥で、不気味な息遣いの者が、二人を見つめていた・・・



笹川は玄関のドアを開けようと手を伸ばす。


ーガラッ!


笹川が開ける前に扉が開く。

「ひっ!」

笹川はその瞬間、目を閉じる。


「笹川?どした?」

後藤が声をかける。

「…ご…後藤か…良かった…」

笹川は胸を撫で下ろす。

「変なヤツだな。」

「何してた?」

「見張りを兼ねて、外の空気を吸いに。」

「びっくりさせるなよ…!」

そう言って二人は和室へと戻る。


ーザァァァ…


[スー…ファ~…スー…ファ~…]

雨音にかき消される不気味な息遣い。

神池の方の茂みに、煌びやかな打掛が、二人のやり取りを覗いていた…

◎和都歴450年 7月17日

置田村・神奈備・蛭子神社 10時


神社の社務所に寝泊まりして3日が過ぎる。

「いい加減、もう帰るか。」

新堂が切り出す。

「神籬や町田さんについては、どう報告するんです?」

笹川が尋ねる。

「…まあ、3日居て何も起きない。安全性は担保できたし、3人で居ることもない。交代でもいいだろう。」

「なるほど。」

新堂の提案に、後藤も頷く。

「俺は里に寄ってから集会所へ戻る。二人で先行を決めてくれ。」

「了解。」

新堂はそう指示すると、神社を後に、里へと向かう。


「俺が残るよ。笹川は帰って食料調達を頼む。」

後藤がそういうと、笹川は頷き、神社を出ていく。


「さて、もう一眠りするか。」

後藤は布団の上で横になる。




ーガラッ…


「何だ?忘れ物ー」


ー!?



◎和都歴450年 7月17日

置田村・神奈備・蛭子里・吉崎家 11時


「やはり、奥さんのカラダは素晴らしい。良い休暇を取れましたよ。」

健右衛門は老化と怠慢からの貧相な裸に着物を着ながら、綺麗な裸で布団に佇む凛に話し掛ける。

「…旦那は、まだ見つからないのですか?」

凛が不安そうに話す。

「…ふぅ…」

また旦那の話かとばかりに、バカにしたような溜め息をつく健右衛門。

「まあ、今、依頼して調べて貰っています。近々見つかるでしょう。」

「…良かった。」

凛はどこかホッとする。


「…奥さん?」

健右衛門は、布団へとやってくるなり、凛の顎に触れる。

「旦那さんが無事かまでは保証できませんよ?」

「…そんな…」

「…僕も神様ではないんだ。そこでは保証できませんよ。まあ、その時は、最悪は僕がいる。只でさえ裕福な身だ。安全は官人の僕といた方が…奥さんも確実でしょう?」

「…でも。」

凛は俯く。

「…悪い結果の時は、僕を頼って下さい。悪いようにはしないから。」

健右衛門が口づけをしようとすると、凛は反らす。

「…ふぅ...。では、帰りますよ。」

健右衛門は吉崎家を出る。

(ったく…)

苦虫を噛み潰したような顔で吉崎家から出てくる。


「吉田…さん?やはりここか。」

新堂が現れる。

「おや、あなたは…」

「新堂です、黄田組の。ちょっと良いですか?」

新堂は爽やかに声をかける。



◎番所 12時


健右衛門がお茶を淹れてちゃぶ台に置くと、新堂の対面に座る。

「なぜ、僕が吉崎家(あそこ)だと判ったんです?」

「巡回のルートを聞きまして、時間的にあの辺りだろうと…」

「あ、なるほど…で、御用件は?」

新堂の答えに、どこか安堵する健右衛門は、切り替えて質問する。

「調査の報告ですよ。3日も泊まり込みで探索しましたが、人っ子一人見つからず。ある意味で、本当に神隠しではあります。」

「ほう?死体の1つでも予期していましたが、そうですか。」

新堂の報告に健右衛門は、どこか落胆する。

「とりあえず、黄田組としての使命は全うしたので、一度帰還します。念のため、交代で神社に泊まり込むので、吉田さんも一度、お時間を作り、神社へ立ち寄ってみてくださいよ。では、これにて。」

新堂が番所を出て行く。


(本当に神隠しなのか?僕としては、時常さえ死んでいれば、他はどうでもいいが…それも兼ねて、やはり見に行くしかないか…)

健右衛門は、疚(やま)しい悩みで溢れ返ると、茶を一気に飲み干した。

次回2026/10/2(金) 18:00~

「 第1章・14幕 またも神隠し」を投稿予定です。

   

※10月はケダモノたちよ・2周年記念・強化月間です。

期間中は毎週(金) 及び祝日18:00に投稿致しますので、御期待下さい。

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― 新着の感想 ―
人数が多いと神隠しに合わない仕組みなのでしょうか?1人になったら危険そうです。吉田もケダモノでしたね。
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